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カテゴリ:コミック感想
スポコンものって好きなんですよね。たとえばそれが演劇でもバレエでも、知見を得られる楽しみがあるというか。 わたし自身は運動神経を持ち合わせていない根っからね文系なので…いや頭も悪いので文系というのもおこがましいけれど。 エースをねらえは連載当時、一世を風靡した漫画だったのですよね、アニメにもなっているし。 さすがにリアタイ世代ではないし、この作品を読んだのはかなり年取ってからでした。 今にして思うと、スポーツものなのに巻数が少ないですよね。 わたしは古いタイプのコミックで持っているのですが、20巻ないんですよ。 そしてこの頃って驚くことに、「週刊連載」だったんですよ。少女漫画にもかかわらず。 なので、線が荒いところもあったりします。 それでもこの作者さんは人体を描くのがうまいですよね。 これはこの当時の漫画家さん全体にいえることなのかもしれませんが。 さい内容はご存じのことかと思うのであえて説明するまでもありませんね。 それにしてもこの頃のスポーツの「特訓」は「しごき」なわけで、今だったら絶対問題になってるレベルのことをやってます。 そして精神修行もかなり前面に押し出してきます。 とはいえ、やはりこれはスポーツマンがの王道といえるでしょうね。 むかしの漫画って、メイン以外のことってけっこうざっくり流すんですよ。日常生活をあまり見せないし、時間の進め方もかなり早い。 作中で主人公のひろみは短大生になりますが、その勉強風景にページを割いたりしません。 ただ、いいなぁと思っていたのは、ちゃんと親友の牧がところどころに出てきてくれているところなんですよ。 牧は、テニスからは離れてしまったけれど短大ではまた友人になってて、宝力さんに「女の友情長続きしてるんじゃない」と言われるほど。 こういう、テニスとは関係ないところでも、ひろみにはちゃんと友人がいる、という事実は救いになってるんです。 その日常を描くことはなくても、かかれていないところではちゃんと一人の女の子としての「ひろみ」がいるんだなぁと。 そしてエースをねらえと絶筆して亡くなった宗方コーチなわけですが… 実はこのコーチの設定ってかなり無茶があります。 読んだ時から不思議で仕方なかったんですよね。 でもそういった「こまけーこたーいいんだよ」的な勢いで話は進んで、終わります。 とにかく勢いです。 早めに終わってよかった、という作品でもありますよね。 宗方コーチは複雑な家庭環境で育ちますが、いかにも昭和的です。 おかーさんは愛人なんですよね…宗方コーチの父親は緑川さん(お蘭)の父親で、つまり緑川さんの母親が「正妻」…なんだけど、正妻面ってのはしてません。まあ、宗方ママは早世しちゃいますしね。 まー、ほんで宗方ママはシングルマザーとなり、そのまま実家で病を得て、さくっと亡くなります。 宗方コーチはこれがトラウマになってるわけね。 で、その宗方コーチも体を悪くするわけだけど…このあたりまったくといっていいほど説明がないんですよ。どんな病気だったのかはわからずじまい。悪性の貧血がどうのとは言ってますが、入院もしてるのに「保護者」の立場にあり、身内でもある祖父に一切説明されていないって、ぶっちゃけありえないでしょう。 宗方が口止めしていた、ということも描かれてませんからね。 膝を悪くしたときは祖父の励ましがあったから知らされていたよね? 一人娘をはやくに失って、その孫まで入院となったら、ごくふつうに徹底的に調べさせるのが祖父心では? 親友の桂だけは知っていた、という設定ですが、その桂にしてもなんの病気だったからおしえてくんないんですよー読者に。 まあともあれ「宗方コーチが死ぬ」という設定が必要だっただけなので、その病名やらまわりのあれこれやらは一切排除してるんですよね。 このあたりの徹底感はすごいです。 後にひろみのコーチになる桂は永平寺にこもって修行して、…まあこれも実家が寺だからなんですが、父親が会社の社長という地位にあって、…つまりぼんぼんなんですが、こちらもまた母親の存在はいっさい語られない。無駄はすべて排除してるって感じですね。 宗方よりは桂の方が…見た目的に好みでした。 男子勢は藤堂・尾崎・千葉といて。 尾崎はお蝶様loveなんですよ。たいへんすぎる・・・ 妹がいる設定はたぶん後付けかなと思ってました。 この漫画は無駄を省いているのと、後付け設定がそれなりにあること、後なぜか秘密のはずの事柄が皆に知れ渡っているってことがあるんですよ。 宗方と藤堂のやり取りとか。 誰がしゃべったんだよっていう まあ、そういう感じでざっくりとしてるしツッコミどころはかなり多い。 スポーツものとしてどんなんだろうかっていう「しごき」もあったりしますが、テニス漫画として参考にしたいところはやはりあるんですよ。 柔軟の大切さもそうですが、クラシックバレエと比較して語っているのはさすがだと思いました。 人物デッサンがとても奇麗です。 コマ送りのシーンを描いてるんですが、いまとちがってデジタルじゃないんですよー! けれどたしかにポージング、姿勢がすばらしく美しく書かれているし、その点を作中でも大事なこととして語っています。 クラシックバレエの美しさは「脅威」だと語るんですよ。 ほんとにそれ!っていう相槌うちまくりでしたから! あとはへんな「魔球」なんぞに夢見るな、とも言ってましたね。 ウイニングショットとは別のものです。決め球、というのは選手によってはあるはずですから。 この時代「打点をかえる」ってのはまだあまりメジャーじゃなくて、とはいえ伊達選手がそれをやっていたように記憶しています。伊達選手、好きだったんですよ。 この頃からはコートが芝ってのはあまり主流じゃなくなってきていたんじゃないから? 作中では実在する選手も登場します。これも何気にすごいですよね。 「週刊連載」の強みでもあったかも。 週刊連載ということもあって絵に雑なところもみられはしますが、それでもやはり力強いタッチで描かれて、多少の矛盾なんぞは蹴散らす勢いで読ませてくれます。 現代のスポーツ論には合わないかもしれませんが、テニスブームがあったというひとつの証拠として、この作品は後世に語り継がれていくんでしょうね。 作中でまっとうなキャラともいえる、緑川さんや牧、女子ではこの二人が好きでしたので、ぜひとも幸せになってもらいたい。 ツッコミたい気持ちは抑えて読んでもらいたいコミックです。 今だと…宗方コーチは人気でなさそう お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2025.05.22 22:00:04
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