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カテゴリ:コミック感想
この作者さんの出世作となった作品…といえるかな? かわいらしい女の子を描く作家さんですが、同時に良い意味で気色悪い人間関係を描くのが上手な方でもありますね。 この話は孤独な少女と孤独な青年が出会って恋をする、というお話ではあるんですが、根底に…言いようのない気味の悪さがあるんです。 全体的にほのぼのしたタッチで描かれますし、笑うの要素もあるし、純情な恋物語には違いなく、ホラー色とかはまったくないんですが。 とにかくわたし個人的にですが、この作中のメインキャラが誰一人として「好き」といえないんですよ。 ただ嫌いではないし、話自体はすごく好きなんですよ。 ふしぎな感覚です。 ヒロインの蝶子さんは天然ふんわり系女子で見た目にもかわいらしいし、不快感なんてまったくありません。 お相手となる作家の京という青年は、無口で威圧的な…とこれまた嫌いではないキャラではない。 歳の差自体もきになりませんしね。 ただこれ一話で終わってても問題なかったし、逆に物足りなく感じるだろうな、と相反する感情を揺さぶってくるんですよ。 ヒロイン蝶子は幼いころに両親を亡くして孤独のトラウマを抱えてしまった… 読んだ当初は「えー…」と思った。気の毒ではあるけどそれをいつまでも引きずってんのはどーかと… でもこれ、蝶子がめっちゃ両親に溺愛されていたからゆえなんだなとわかった。 溺愛される系女子なんですよ、かなり広義的に。 つまり満たされていたし、満たされているのが当たり前すぎたゆえの悲劇、というか。 なので恋をする相手の京とも、ある種の共依存な関係なんですよ。 そりゃ気味悪く感じてもしかたないかなって。 依存しあう関係性をポエティックな漫画にしたって感じかな。 全体的にとってもポエトリーな作風ではあるので、それがこの二人の異常性によくあっている。 なので詩集を読むのが好きな人にはささるかも。 そしてこの作品は良い意味で異常性を楽しむ話なので、わたしにもささったんですよね。 4巻で終わってよかった。 創作ものきキャラへの好感が大事だとわたしは考えているんですが、すべてがそうである必要はないんだなと、この作品は教えてくれましたわ。 サブキャラに至るまで、これといって好み速烈!なキャラがいなかったんですわ… まあ、せいぜい京のにーちゃんくらいかな… とはいえ、キャラに魅力がないというのとはまた違います。 それぞれ個性的で、ちゃんと生きたキャラになってます。 たぶんこの異常性のある人間関係、人間模様の描き方がいまの天堂につながってるんじゃないかなと思います。そちらは途中で断念してしまいましたが、引き込まれる漫画には違いないです。 ホラーっぽいんですよね、ポエミーなところと相まって、とにかく気味が悪い…(誉め言葉ですよこれ ポエミーといえばこの作品、花の名前を基本的に漢字で表記してルビをふってるんです。 そこらもふくめて、とってもポエティックといいますか。 そしてわたしはたぶん、京の書いた小説、受け付けないだろうなって。 太宰治っぽいのかしらね? 芥川っぽい爽快感はなさそうっていうか。いやしりませんけども。 一文も出てきませんからねーまあそれでいいとは思います。 雰囲気漫画ではあるので、そこは妄想で…でいいと思うんですよ。 好みは別れそうな作品ですが、ちゃんとハッピーエンドになる少女漫画なので、その点は安心して読めるかと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2025.05.24 20:30:04
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