|
カテゴリ:コミック感想
「アリス」繋がりってわけでもないですが。 古き良き少女漫画といった絵と内容…なんですが、古い言葉でいう「メロドラマ」みたいな内容といったほうがいいかもしれません。 この作者さんはのちにハーレクインのコミカライズをたくさん手掛けており、わたしも何冊かはお気に入りのものがあります。 もともとご令嬢もの系が合う作者さんなんですよね。 昨今の令嬢もの系漫画家さんはちょっと見習ってほしいくらいに、髪やドレスがちゃんと「ゴージャス」なんですよ。 昨今の令嬢ものに足りないのは、ヒロインの「ゴージャスさ」だと思う。 髪型ひとつとっても、なんというか…いまの溺愛もの令嬢ものは地味というか、見栄えがしないんですよ。 この原ちえこさんの絵がめっちゃうまいとか美麗とかっていうんではなく、ピンポイントで「美麗」な部分をおさえている。 髪の毛の表現がまさにそれで、あの「波打つような髪」は、現実だとちょっとどうかとおもわれる表現かもしれないけれど、非常にたっぷりとして美しく、「映える」んですよ。 これが非常に効果的。 このあたりは見習ってほしいなぁと、いつも思ってしまいます。 それはさておき、「風のソナタ」ですが、初めて読んだのはなにぶん子供だったので、すごく「意外」な話に感じたんですよ。 ヒロインの「アリス」はロンドンの資産家の娘で、素敵な婚約者もいて、ピアニストになるのが夢、といういわゆる「令嬢」なんですが、家が破産して、結果的に家も売らなくてはならなくなり、田舎へと逃げるようにひっこし…あげく婚約も解消されて、アリスは失意の底に。 病気がちな祖母と幼い弟の面倒を長女であるアリスがみなければならなくなり、妹もまだ若くて、たよりにならない。妹・プリシーは派手で遊び好きな、ちょっとわがままな子。姉のアリスをじつはうらやましくねたんでいたりもした… ハーレクインか! って内容なんですよね。 転居した田舎の村でアリスは画家志望の男の子としりあって仲良くなり、恋中にもなるんですが、妹が略奪します。 こう書くと妹のプリシーが「悪役」みたいですが、ちがうんですよねー プリシーね、けっこう健気なんですよ。 強引ではあるんですが、恋する乙女の暴走って点で、いい妹キャラです。 アリスは結局画家志望のローリーと一緒になれなかったのは、アリスが「家族」を抱えているからで、このあたりも「長女」ならでは、といった感じがある。 恋にひたむきに走っていける「次女」とは事情が違いすぎるんだ ピアニストになる夢もほぼ潰えてしまい、ひたすら家族のために働いて、で、好きな男の子が一緒に街へ出よう、と言われたって、それって家族を捨てていくってことになるでしょ? そりゃ行かねーわってなる。 ローリーはまだ若くてその点に頭がいかなかったんだよね。…これだから男は、ってちょっと思ってしまった。 その後アリスはピアニストのギルバートで出会って、はじめは反発しながらもやがて惹かれていき…っていう、まあ少女漫画なんだしそうなるよねって話なんだよ。 この話は存外短くて文庫本だと3巻で終わります。 なので怒涛の展開ではあるんですよ。 これ現在だったらどんだけでも長く、だらだらと描ける内容なんですよ。 ご都合的展開ももちろんありますが、それも短く話が終わるので仕方ないというか。 凝縮してます巻がある。 いま、姉or妹が意地悪してヒロインを虐げる系もめっちゃ多いんですが、この話もそれをやろうと思えば、できたんです。 次女のプリシーは社交的でおしゃれで、男子からの人気もある。 一方で長女のアリスは、地味な見た目でこそないけどピアノが一番って子で、異性にちやほやってのは望んでない。 安易に「プリシー」を意地悪女にしてしまうってテもあったんでしょうが、家族ですし、それはできなかったんでしょうね、作家さん的にも時代のノリ的にも。 いやまー、よくよく考えると、アリスは初期に婚約者がいて、次に画家志望、最終的にピアニスト…三人の男性に好意を向けられてるんですけどもね… だからプリシーの気持ちってちょっとわかるんですよ。 たぶん、出来のいい姉と比べられて、悔しかったんじゃないかな。 画家志望のローリーのことも、本気で恋してしまったのに、アプローチしても「アリス」のことばかり。 プリシーの恋が実ってよかったね…最終話でもしみじみ思いましたよ。 今風な話では決してないんですが、令嬢ものを好まれる方にはぜひ読んでほしいコミックです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2025.06.24 20:00:04
コメント(0) | コメントを書く
[コミック感想] カテゴリの最新記事
|