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カテゴリ:コミック感想
大好きなんですよ、この作者さんの作品。作品の雰囲気が初期から一貫して変わっていません。 絵はいかにも少女漫画、といった感じなのですが、かなりデッサンもしっかりしてますし、少女漫画としての見せ方も上手いです。 このシリーズは、コミック三冊で、一話読み切り型。高校生から大学生までなんですが、現代と違ってことこまかにはその生活は描写されず、ある意味「切り取り」型なんですよね。 また、一話目ではなぜヒーローにあたる藤臣くんが志野原千津美のこと好きになったのかがじつのところよくわかんないんですよ。でもそこはそれ、短編の勢いってやつですね。 そう、あくまで短編のお話なので、かなり凝縮されています。 物語のヒロインである千津美は両親をはやくに亡くし姉に育てられている、というわりに「えっ」と思わせる家庭事情で育つんですが、さらーっと流されます。性格は、一生懸命なドジっ子、というやつで、まあ、テンプレではあります。 ちんけで取り柄無しのドジっ子として周りから馬鹿にされて落ち込みもしますが、存外図太い性格で(良い意味で)へこたれないんですよ。 たぶんそこがいいんだな、と。読んでて不快な主人公ではありません。かなりのドジでまわりに迷惑かけることもあるんですが、それを「笑い」として描けていますね。 また、この当時の少女漫画って「不良」っぽい男の子が人気だったのか、例にもれず、いわゆる「非行男子」がたくさん出てきます。 藤臣くんはべつに不良ってわけではないんですが、腕っぷしが強くて、わりと暴力にはしりがちなんですよ。 いまならこりゃだめだろっていうね。 高校生だろうがたばこは吸うキャラいるし、なにしろ「番長」なんてものが存在しますからねー。これは現代ではなんのこっちゃな言葉でしょう。 一話目がそうなんですが、昭和すぎてよくわからない「ガリ刷り」という作業がでてきたりします。 これはもうググってくださいとしか。 教師もたばこを教員室ですっぱか吸ってますしねー いやー、今思うとすごい描写だなーっていうの、たくさん出てきます。 この作者さんはほんわかした画風も特徴ですが、ふんわかした「お笑い」をうまく活用してくれるのがいい「味つけ」になっています。 千津美の友人二人が「笑い」の要素をちゃんと担ってくれていて、すっごく好きなんですよ。 というか、さすがというべきかもしれませんが、ちゃんと「友人」が主人公にいるんですよ。 わたしはこういった、ちゃんと友人関係を気づけるヒロイン、ってすごく好きなんですよ。 友達がいるからいい、というのではなく、友人関係を見せることによってキャラの性格は「こうだ」と提示できるからです。 千津美の友人の三浦さんと園部さん、はじめ園部さんは名前もなかなか出てこないんですけど、二人していいキャラだし、藤臣くんのけんか友達?の豪法寺くんと小室さんとうまくいってほしいなぁってにこにこしてしまうんですよねー つまり、周りのキャラがすごくいい。 千津美と藤臣くんをメインに周りが動いて物語を進めていく、という話の流れが多いんですが、そのまわりのキャラに対する解像度もたかいため、すごく共感できますね。 けんかシーンも、少年漫画のようなかっこいいバトルってわけではないんですが、ちゃんと描けてるんですごいんですよ。 ちゃんと全身のデッサンができてる人なので俯瞰して全体が見られるようになってます。いまどこにどうしているのか、という構図が描けている。 昨今のなろう系少女漫画を描く方は、これができてない方が多いです。 一枚絵はうまいのに、というね。 もうふたつ初期シリーズを紹介。 星のハーモニーの文庫にはふたつのカップルの話が入っています。のちに、べつのコミックに掌編が載せられていたりするわけで、あのカップルの初出はどこよ、ってなることがあるかもです。 星のハーモニーは「和田君と穂積さん」カップル こちらは、いまだと物議をかもしそうな男の子なんですよね。 お人よしすぎる穂積さんと、それを叱る和田君、というカップルです。 もう一つは「虹色の雨粒」というタイトルで、こちらは「杉掛くんとまゆ子」のシリーズです。 こちらはわりとまっとうなカップルかもですね? おちゃらけた人気者の杉掛くんと、失恋したばかりのまゆ子とのお話。 このふたつのカップルは、しれっと続編が描かれてほかのコミックに掌編が収録されています。 和田君と穂積さんの掌編はどこに入ってたかな…でもこれは続編あってくれて嬉しかったやつなんですよ。 和田君絶対誤解されるやで…と思っていたので。 優しさからとはいえ、「怒鳴る男」ってのは印象悪いですからねー 補足的な話があってよかったな、と。 「星のハーモニー」はこの作者さんの初のコミックなんですよね。 キャラクターの動かし方というか作り方はさすがというべきで、超絶有名ってわけではない作家さんですが、堅実に作風を守ってこられたので、安定した漫画家活動をしてこられたのではないでしょうか? 「彼方から」で好きになった人もいるかもしれませんし、これはまたいずれ紹介するとして、初期作品もかなりおすすめなので、ぜひ読んでみてくださいな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2025.09.06 22:00:06
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