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カテゴリ:コミック感想
表紙の絵は可愛いんですが…中身はちょっと…けっして上手いと言える絵ではないです。あとキャラの顔のブレもものすごいです。漫画としては微妙な感じですかね… そしてこれはよくある虐げら令嬢ものなんですが、かなり雑な虐待設定です。 ヒロインのカトリーヌは伯爵が侍女を手籠めにしその時にできた娘。この設定自体はいいんですよ、よくあることですしね。 けど、このコミックだけに限ったことではありませんがすべて「虐待ありき」で描いてしまっているせいで、伯爵がどういった性格でどんな人生を送ってきたのか、伯爵夫人もそうですが、この伯爵夫人が気狂いといっていいほど嗜虐性のつよい性格なんですが、なぜそうなったのか。その伯爵夫人の一人娘のシャルルが何をどう思って生きてきたのか。 そういうのがまったくわからないんですよ。 もちろんそういった細かいことはいちいち描く必要はないかもしれませんが、しかし虐待を行ってきたバックグラウンドがないのはおかしいんですよ。 これはヒロインにもいえることです。 ヒロインの母親は伯爵に手籠めにされて、望まぬ妊娠をしてしまったわけだけど、それについてどう受け止めているのがもわからない。 迫害されるのは火を見るより明らかだろうに、なぜ出産まえに逃亡しなかった? というか、妊娠まではいいとして、出産させてくれたんだ?あの伯爵夫人がよく生ませてくれましたよね? 出産ってそんな容易いもんじゃないですよ? あの気狂い伯爵夫人なら、妊娠してる侍女に毒をもるなり、はした金たたきつけて屋敷から追い出しますよ? でも、出産させてくれたんだ? これに関して父親の伯爵が許したとは思えないんですよ。なぜならまったく侍女も娘も放置ですからね。 放置してるんですよ、ならヤッちまうチャンスじゃないですか! だって男児が生まれたらどうするの? カトリーヌの母親は、こき使われていたこともあって、産んでから体調不良になるわけだけど、ほんとなんで手籠めにされた時点…せめて妊娠発覚の時点で逃げなかった?どう考えても命が…とくに腹の子供の命が狙われるの確実にわかってたでしょ? よしんば生むことができても、子供の将来考えたらあんなところに固執してる場合じゃないんですよ。 カトリーヌにしてもそうです。 母親が死んだのに、なんで伯爵家に固執するの? とっとと出ていけばいいんですよ。 だのに執着し続けるんですよ。母親が「生きろ」と言ったから? 虐待されても耐えろとでもいったの?言ってないですよね? 「私はいいから、あなたはここから逃げなさい」 というのならまだわかるんですよ。 つまるところ、虐待されてかわいそうなヒロイン、という設定のためだけの冒頭シーンでしかなくて、そこにはなんの「意味」もないんですよ。 そんなヒロインに共感なんてできないでしょ? 「ここには私の味方なんていないんだ」って身代わり決められた時絶望してるけど、今頃?なんですよ どっからどう見ても、母親が死んだ時点で味方なんていないし、なんなら母親すら味方ではないんですよ。「ここから逃げなさい」の一言もなく、自分の面倒見させてましたからね? つまりこれって、物語が始まったその時点にキャラが生まれているので、バックグラウンドを作者が考えていない、ということなんです。 おそらく後出しでだしてくるかもですが。 それと、別の作品でも書いたことですが、なんで意地悪令嬢は、虐待の方法に「ドレスを作らせる」ってのをやるんだろう? こんなド素人にドレス作らせてそれでパーティーとかそれこそいい身分の令嬢とは思えないんですよ。宝石を持ってこさせるとかね。 「奴隷」のように扱ってるのに、高価なものを簡単に預けちゃうのどうなの? だいたい、プロでもないのにドレス作らせるとか、ばかなの? それともそういう教育を与えてあげていたの?だとしたらなんて意地悪ねーちゃんや…となるし、仮にドレスを縫えるポテンシャルあるなら、つまり「手に職」ついてるんだから、それこそカトリーヌはとっとと家を出りゃいいんですよ。 そもそもね? 死んだ母親の埋葬はしてもらえたの? ここのとこ描きようによっては復讐ものとしても描けるんですよ 汚い死体を置いておけないからと崖から捨てたとかひどい扱いされていたのなら、そこで覚醒して、やつらに目にもの見せるまで、歯を食いしばって生き抜いてやるってなるでしょ? それともちゃんと埋葬してくれたの?…なら、その点に関しては「ありがてえ」となるやん? こういうところが「雑」だというんですよ。 あと、他に使用人いないの? 作中にぜんぜん出てこないんで、もしや伯爵家、ド貧乏? 馭者がひとり、どうも脅迫されてるようでカトリーヌを雪の中に置き去りにしてるんだけど、これも不自然なんですよ。 だって誰も見てないんですよ? 脅されてしかたなくっていうんなら、せめてこっそり防寒具を貸してあげたり、王子の住まいの途中までは連れて行ってあげて、伯爵夫人には途中で置き去りにしました、と嘘つけばいいんですよ。 繰り返しますが「目撃者」はいないんですよ。 なんで申し訳なさそうなこといわせちゃったかな、馭者に。 こんなのは金を払ったゴロツキにでもやらせりゃよかったんですよ。 「あの娘を好きなようにしていい」と言われて、乱暴狼藉されそうになってヒロイン命からがら逃げだした、とかの方がよりドラマチックでしょうに。 とにかくイベントの作り方が雑というか、手抜きなんですよ。 で、氷の王子様にあった時にしても、なんでバレちゃまずいの? 追い出されるのがこわい、というのならわかりますが、まさか家のことを心配してる? ぶっちゃけ、こんなの全部包み隠さず話してしまえばいいんですよ だってそれで不利益を被るのはヒロインではなく、ヒロインの実家ですから。 もちろん追い出されるのは冬のことだから困るだろうけど、こういう時にこそ命乞いをすりゃいいんですよ。 まあ、「かわいそうなヒロイン」はこの時点でできなくなりますが、復讐ものとしてなら先を描けそうですよね? この「虐待され令嬢」って、描き方が難しくて、これってなんの「個性」にもならないんですよ。 卑屈になってびくびくして、なにかっていうと「掃除」し始めるよね? わたしはこの他人の家に来ていきなり掃除をし始めるのに、すごく違和感覚えるんですよ。 しかもかなり立派な家、豪邸ですよね? それを勝手に窓ふきしたりとか…迷惑でしかないんですよ。 人の家のものを勝手に触るってことなんですが、それってものすごく無礼なことと思うんですが、そういう感覚って変なんでしょうか? だって掃除道具ひとつ持っていない状態で、どうして窓ふき壁ふきなんてしてるんです? 自分の汚れたドレスで?かえって汚いですよね? こういうところ、なんも考えてないのがまるわかりで、その点が萎えなんです。 そしてこういう掃除などで相手側を驚かせるのって、悪手なんですよ。 これね、男性向けなろうの「やれやれ俺また何かやっちゃいました系」の亜種なんですよ。 そうは見えないかもしれませんが。 やってることは同じです。「やれやれ」と上から目線になってないだけで、「こんなのいつものことですよ」っていう卑下というマウントです。 わたしはこんなに可愛そうなのにとっても健気でそれをつらいともおもってないんですっていう、ね。 鼻につくんですわ、すんごく。 だからキャラクターの個性として使うには虐待設定って向かなくて、うまく描かないと、被害者面ヒロインうざい、となりかねません。 この話は特にひどくて、やたらと被害者面を押し付けてくるんですよ なのでこのカトリーヌというヒロインの性格が見えてこない。 虐げられていて委縮しているというのはわかりますが、描き方がわるすぎます。 ヒロインのカトリーヌはおそらくろくな教育もされなかったはずなのに、なんで王子は「聡い」と思った?ほんの少しの会話で?見た目の「美しい」という点には納得いくんですが、聡いと感じるコマ、会話なんてまったくなかったですよ? 王子がそう思ったんならそうなんでしょうが、読者にはそれが伝わらないので、それは「なかった」でしかないんですよ。 あとはまあ…仕方ないことではあるんですが、日本語の使い方がちょいちょいおかしいのと、軽い口語が多すぎてね… なろう系少女漫画であるあるなんですが「バレる」ってやたらと使うんですが、「露見してしまう」とかなんとか、他に言葉あるでしょ?かりにも身分の高い人たちの会話や内心で「バレる」ってのが出るのは、異様な違和感があります。 「身バレ」「顔バレ」など、皆が普通に使っている言葉で、その語源がどうのという話ではないんですよ。「今風」の言葉がおかしいというよりは、それって「庶民的」な軽口みたいな感じで、はたして高貴な方がそんな言葉を使いますかね? ヒロインが「賢い」「聡い」というのならなおさら言葉遣いを考えるべきなんですよ。 賢さ、というのは言葉の端々に現れるものですし、そこに高貴さもあらわすことができます。 もちんこれがコメディとかならいいんですが、えげつない虐待シーン入れている以上、ラブコメではないはずなんですよ。 つまり、言葉で世界観を感じさせる必要もあると思うんですよね。 シンデレラ物語自体は伝統的なものですし、いろんなバリエーションもあるものなので、虐げられ令嬢そのものは悪くはないし、わたしもそれほど好きってわけではないですが、気に入ってるコミックもあったりします。 けど、今作に関しては作り方が雑すぎるのが見て取れてしまって。 さすがにこれは、勧められないです。 あたまのおかしいシャルル嬢がどうしてああなったってのはちょっと気になりますけども。 「どうなるか」についてはどうでもいいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2025.10.05 22:00:05
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