いわゆる「ループもの」、生きかえってやり直し系の話。このタイプの話は実は苦手なんですが、このコミックはけっこう楽しめました。
殺されたヒロインのリリーシアは、目覚めると10歳になっていて、それから「事件」を回避するように行動していくっていう、おそらくループものとしては定番の流れかと思います。
描かれ方がとても丁寧なこともあって、ヒロインのリリーシア(リア)に共感もしやすいです。
絵はといえばとても丁寧ではあるんですが、好みは別れるかもしれません。
そして少女漫画家さんあるあるの、中年が描けないってのもありますね。老人は描けるんですが、中高年がまったく描けない感じですね。あとは残念なことに、バトルシーンも上手くはありません。剣技の大会があるんですが…うん……ダメだこりゃですね…ほかにも剣を使って戦うシーンもあるんですが、迫力もないし、何がどうなって、どんな風に倒したとかさっぱり描けていません。擬音でごまかしちゃったりね
とはいえ、人体デッサン自体はかけているので、まあこればかりは仕方ないと諦めました。
あとは、キャラデザに癖がありますね、とくに女子です。髪型が独特。
というか、キャラの描き分けができないので髪型で区別つけるしかないんですよ。
男も女も登場人物多いんですが、見た目の違いがほとんどないというか…キャラデザに個性がないんですよ、髪型以外。
なので、「王子」が何人か出てくるんですが、名札つけておいてくれないとっていうレベルですよ。
ハロルドだけはトーン髪なんでわかりやすいですが。
それと、「タイトル」に関してもちょっと不満かな。
「幸せになりたい」はいいんですが、「傷跡王子妃」って読みにくいし、パッと見たときに男か女かわかりにくいんですよ。
「傷跡」「王子」「妃」と三分割できる名刺なんですが、ヒロインは「傷跡」と「妃」の部分なんですよ。
傷痕令嬢だとかぶるだろうから採らなかったのかもしれませんが、めっちゃ読みにくいし、わかりにくいです。
そして妃だったのは「過去」なんですよ。
死んで過去に戻った時はただの「令嬢」で、王子の妃候補にあがりそうにはなったけど、そこは回避した、という流れが「本筋」です。
なんでこれがよくないかっていうと、冒頭のリアはもう死ぬ気満々だったんですよ。たまたま殺されただけ、というくらい絶望していて、「幸せになりたい」なんてすでに放棄した願いだった。「幸せになりたい」と願ったのは「本筋」のリアです。
こういうタイトル付けって難しいですよね。
これは「ちょっと気になる」程度なので、まあいいかな…
内容は、すんなり読めましたし、なかなかに面白かったです。
というのも、「生きなおし」をしているのはヒロインだけではない、というところなんですよ。
父親と兄も、「過去」の記憶を持っていて、その悲劇的な過去を回避するために動いている。
これはなかなかいい設定だなと感じました。
一方向からではなく、多方向からの活動っていうのは、つまり「裏」にある何かしらが大きいということも示唆しているからです。
リアが悲劇的な末路をたどることになった何かしらの原因を、様々な角度から探っていく、というのは面白い。
そして、ヒーロー、つまりリアの婚約者となったイーサンもそれに協力することになる。
本筋ではリアの婚約者になったけれど、過去のイーサンは幼いころに両親もろとも死んでしまう運命だつた。そのことも、イーサンはリアの父親から知らされるんですよ。
このイーサンの死にも、なにかしら謎がある。
このイーサンは、「暴漢」に襲われて瀕死の状態だったところをリアの家に助けられ、それでリアとも出会い、やがて恋に落ちて告白、という流れに。イーサンの顔には、かつてリアが負っていたのと同じような「傷痕」がある、というのもこの物語の肝になります。
リアは最初、イーサンは自分の身代わりのように顔に傷を負ったのだろうかと疑ってしまう。
ここらの葛藤はすごく納得できるんですよ。
かなり無茶な「思い込み」かもしれませんが、過去のリアは顔の醜い傷を周りから嫌悪されてきたので、かなりのトラウマになってしまっている。
その「傷痕」を、リアはイーサンとの出会いで受けいれ、克服するんですよ。
この心の傷を癒していく過程は必要だったと思います。
「過去」の自分を一番厭っていたのはリア自身だった、ということに向き合っていくことになるからです。
自分自身と向き合えたからこそ、家族に愛されていた事実も受け入れられるようになります。
リアが過去を変えたいと願ったのは、第一に大好きな母親と侍女のためでしたが、やがて、父親もそこに含むようになります。
もちろん婚約者のイーサンとの仲もむつまじく、このあたりは読んでいてほっこりポイントでしょう。
ちなみにわたしも傷痕好きなので…性癖…やはりこの「傷痕」を誇りに思ってると言ってくれたイーサン、ええやつやん…ってなりましたしね。
ヒーローがちゃんとかっこいいです。
過去でクズ王子だったハロルドも、なにやら訳ありな様子なんですよ。
というか、わりとわかりやすく「陰謀」ありです、と描かれていて、その陰謀が明かされていくのが楽しいともいえます。
複雑に入り組んだミステリ、といった感じはなくて、むしろ良い意味で分かりやすい「陰謀」ではあるので、読み進めていくと「やはりねぇ」となる。そこに不快感はないんですよ。
ヒロインのリアの周りにも、いい子たちが集まってきて、女友達もできたりします。
こうした、人間関係の構築をがんばろう、と前向きになったリアが健気で可愛いですし、ブレのない視点がいいです。
「見た目は子供、中身はオトナ」という状態で始まりますが、そこにも違和感はありませんでした。
この違和感のなさをうまく作ってくれたのが、じつは「父親」なんですよ。
リアの父親も過去の記憶があるのだけれど、どんどんぼやけて、忘れていってしまう、と言っていた。
つまりこれって、現時点での「父親」と人格が融合していっている、ということでもあるんだろうと。
でなきゃ精神年齢、もっと上だよね、となってしまうからね。
リアの場合はあの日記帳に書くことで記憶を保っているのもあるかもしれませんが、過去の記憶が強烈すぎて忘れられないってのもあるはずです。
それでも15くらいになったころにはだいぶん人格融合していってる気はします。
過去の記憶のおかげでダンスもうまくこなせる。ハロルドのダンスの癖も覚えている…とはなりますが、ある意味ではその程度の記憶にとどまっています。
ループものをうまくまとめた話なんじゃないかな、と感じました。
ヒロインの健気さもさることながら、まわりにも過去の記憶持ちがいて、悲劇回避の道を必死に模索している、といった流れがやはりよかったですねー
「黒幕」の存在がちゃんとあって、緊迫した雰囲気を随所に入れてくれているので、先の展開がちゃんと気になるようになっています。
冒頭でも書きましたが、「絵」がちょっと独特といえますので、そこが受け入れられれば楽しめるコミックだと思います。