96冊目「燃えよ剣」
燃えよ剣 [ 司馬 遼太郎 ]価格:1,650円(税込、送料無料) (2025/7/13時点)しばりょーの有名作品ですが、これを読んだのはかなり後になってからでした。「新選組」があまり好きではなかったってのが理由にありましたね。べつに嫌いというほどではありませんでしたが、なんとなく…なんで人気あるのかがわからなかったんですよ。司馬遼太郎のこの小説がひろく伝わり…さまざまな漫画やアニメ、ゲームなどに影響を与えた…ということも子供の頃はしりませんでしたが、それでも「新選組」はなんかみょうに…「好き」と言えなかった。そしてこの小説を読んでもやはり、その印象はかわりません。ただし、めっっっっちゃ面白いですし、土方が人気出るのはわかりすぎるくらいわかりました。こりゃもう人気でない方がムリでしょっていうくらい、すごく人間的で魅力的なんですよ。ずるいくらいですよ。歴史ものライトノベルといわれるくらいには、かなり読みやすい作品です。歴史的な解釈をいれつつ進む話ですが、それもとてもわかりやすくて「しばりょう構文」もあるくらいですよる。にしたって、土方がイケメンすぎる…いや、冷徹ではあるし、傍にこんな人いたらいやですし、ましてや上司だったら最悪ではあるんですが。史実としては、どうかはわかりませんよね。これはあくまで司馬遼太郎の小説の中の土方です。実在した土方がこんな人物だったらいいなぁと夢見させてくれるほどには人間味があっていいんですよ。和歌を趣味で作ってるんだけど壊滅的なダサさとかね…ここがほんともう好きで。照れくさそうに沖田に読ませるんですが、沖田も口にはださないけど「だっせぇ」って思ってたっていうあたりの描写がほんとに可愛い。なんこれずるい…女性ファンが卒倒するレベルで可愛いです。そして女性関係においてもそうで、最後の最後に、思い人と再会することになるんですが、ここがまたロマンス小説もびっくりなくらい、ロマンスなんですよ。わぁ最後にこうきちゃうんかって驚きましたよ。さすがにうまいですよね。多少なり、しばりょーの幻想は入ってるかもしれませんが、しばりょーの描く女性ってなんだかとてもいいんですよ、魅力的で。しとやかな女性も活発な女性も。嫌みがないというか。さじ加減かな?前にも消化した「戦国の女たち」からしてそうなんですが、男性作家の描く女性像の臭みがあまり感じられないんですよ。実在した女性たちをモデルにしているからヘタなことかけないってのもあるかもしれませんが、「わかるー」と言いたくなる女性たちなんですよ、みんな。たとえば北政所と対立してたと書かれがちな淀君ですら、悪女にはかかれないというか。燃えよ剣にかんしては女性の出番は少ないです。たぶんそれが人気の要因でもあるかなとは思います。作者しばりょーが新選組を好きだったかはわかりませんが、かっこよく書いてあるなぁと感心したものですよ。わたしが新選組をどーもよーわからんな、…と思っていたところを埋めてくれるような感じというか。幕府の犬だのなんだの言われているけれど、実態はもっと複雑だったんだなぁ、とかね。良くも悪くも田舎の剣豪たちのあつまりで「政治には向かない」んですよね。これは土方自身が一番わかっていた、という描写にはすごく合点がいった。組織を動かすのはうまかったかもですが、「国」を見る観点はすごく浅かったと思う。国の範囲が狭かったというか。それでも時代的には必要だったのかもですね。燃えよ剣とは別に、新選組内部でのちょっとしたミステリー風仕上げの短編があるんですが、それを読むとまた土方のイメージは変わります。「壬生狂言の夜」という短編ですねうわー…策士やなー…腹、くっろ!!と思いましたもん。そして多分この点が新選組をどーも好きになれない理由なんだなと。がちの組織で、隊の規則やぶったらっていうのがもう怖すぎる。問答無用すぎるやろっていう。時代的に仕方ないし、新選組は決して悪ではないんですけどね。世間知がなく、あれは道化だ、と言われてしまっても仕方ない側面はあったのかなぁと思う。ただ、それだけではないと思うし、時代が生んだ集団ではあったろうなぁと。近藤さんに関しては気の毒だったなと思ってしまうわ時代が大きく変わるときでしたものね。メディアミックスされたものはまったく見ていないのですが、ドラマ化したくなるのはわかる気がするんですよ。それだけ魅力のある話ですから。でも、新選組の人気の理由となった「燃えよ剣」この小説は、小説で楽しんでほしいってのはあるかもです。歴史小説ですがとってもラノベちっくなので読みやすいですしね。しばりょー初めにもいいかもしれません。わたしとしては短編からしばりょー初めしてほしい気もしますが。ここから維新前後の小説を読み始めるのもいいかもですね。登場人物がおおすぎてげんなりするかと思いますが「燃えよ剣」はそういうげんなりさはほぼ感じずに済みますからね。注意があるとすれば、しばりょーの小説っておもしろすぎて、歴史上の人物がとても身近に感じられ、それがつい「事実」だと誤認してしまうことでしょう。いちおうこれは「娯楽小説」です。実在の人物や歴史的事件をもとにしてはいるけれど、想像で書かれた部分も多い。しばりょーの書くものが歴史的な「正解」ってわけではないです。とはいえ、日本史の勉強にはなりますよ。あらたに研究が進んでじつはこうだった、という発見があり、歴史は都度都度修正されていきます。しばりょーは多くの…ほんとうに膨大な量の資料や実際さまざまな場所に赴いて取材しているので、地に足の着いた「リアル」はあります。だから安心して読める、のですよね。どんな物語でも、取材力ってのは大きいなと感じますね。物語に血が通っている感覚ってのは、読むとわかります。好みはあるかと思いますが、ぜひにとすすめたい小説です。