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カテゴリ:診療
head&neckの病院は去年からカルテが完全電子化です。
実際使ってみると、便利な面と、不便な面が半々といったところです。一番大きなメリットは、なんと言ってもカルテを探す手間がないことです。端末があり、患者さんのIDさえわかれば、院内どこからでも診療情報が見れます。たとえば、外来でカルテが出されるのを待っている必要がないし、病棟のカンファレンスなどでも全員で参照できるので重宝します。いわゆるカルテ出しの待ち時間というものはほとんど存在しなくなりますから、効率は非常に向上します。入力や、使い方も所詮は道具ですから、慣れればどうということはありません。 一方、デメリットは、診療情報の検索に時間がかかることです。たとえるなら、皆さんがパソコンで何かのHPやPDFの書類を見るときに、どうしても画面が1つしかないのでスクロールやリンクの操作が必要ですね。本ならば、大体この辺という見出しをつけてその場所を開くでしょう。実際、モノを読むときは、直感的に本のほうが見やすいはずです。この直感の差が電子カルテと紙カルテの差です。感覚としては、電子カルテの過去履歴を見ることは、紙の巻物の書類を見ている感じに似ています。参照しにくいことこの上なし、結果として、あまり過去の記載を見なくなってゆく傾向になります。紙のカルテは多次元で、電子カルテは2次元の情報です。 そのほか、処置の入力だの、書類の入力だのは決まった形式があり、いわゆる曖昧さは許されません。良くも悪くもファジーな部分は激減します。よく言われる事務仕事が医師に回ってくることの弊害もありますが、これは電子カルテそのものの問題ではなく、職場の運用の問題でしょう。 残念な事としては、肉筆の字が見れなくなったことです。日本人の書く字は、実はすごく特徴があって、紙カルテは字を見ただけで、「あ、○×先生の字だ」とわかります。昔自分が書いたカルテや、未熟な絵をみると恥ずかしい反面懐かしいし、部長やOBの先生の古いカルテを見て思わず顔を思い浮かべたりすることがあり、head&neckはそんなひと時が結構好きだったのです。電子カルテではそうはいかないですね。あと、自分自身、漢字をどんどん忘れてゆくのが悲しいかな。 確かに便利な電子カルテですが、何か大事なものも一緒に捨てている気がしてならないのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.07.05 20:15:16
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