臨床の現場より

2007/11/03(土)22:32

官僚の思考をたどる

医療行政(31)

 前回にひきつづき、厚労省の発表から彼らのやりたいことを探ってみました。 診療報酬改定:軽度のやけど処置など加算せず 厚労省方針 毎日新聞 2007年10月31日 終末期の治療法、意思確認に診療報酬・厚労省方針 日本経済新聞 2007年10月27日 医療機関、連携すれば報酬 脳卒中の治療期間短縮へ 東京新聞 2007年10月31日 75歳以上の再診料下げ 08年度診療報酬改定で 東京新聞 2007年11月2日 診療報酬改定:病院勤務医の負担軽減策を提示 厚労省 毎日新聞 2007年11月2日 夜間延長で診療報酬加算 厚労省が方針 中日新聞 2007年11月3日 昔から、厚労省の唯一かつ絶対的(と彼らが思い込んでいる)武器である「診療報酬」をいじくることによって、なんとかお上の思う方向に医療現場をうごかそうという手法は全く変化していません。2008年度の改定で厚労省が目指していることは、 「軽い怪我の患者や慢性の病気を抱えた老人は開業医で診てもらっているが、開業医は稼ぎすぎ。よってここからお金を取り上げよう。開業医は5時で終わらずもっと夜遅くまで働け。そしたらちょっとだけ稼がしてやる。搾り取りやすい病院から締め付けたのは名案だったがやりすぎて潰れかけているから、少し餌を与えるぞ。勤務医は大変だってのはちゃんと考えているからな。安易に開業に走るんじゃないぞ。でも終末期とか、卒中とか、医療費がかかるところにはある程度横槍入れておくか。」 といったところでしょうか。  インターネットが発達した今、省庁の発表を時系列で追いかけるのはたやすいことです。そうして官僚の思考経路を予想することができます。上に述べたニュースに、一般の国民が安心するような発表はひとつもありませんね。厚労省の方針には、国民の健康を守り不安を解消するという理念は全く無いことがお分かりになるでしょうか。  抜本的な改革は官僚には不可能です。今の制度のまま、イギリスのように完全に崩壊へ向かうのか、と不安に思うこのごろでした。    

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