2013/09/21(土)13:51
藤裏葉 -1-
[源氏物語] ブログ村キーワード 明石の姫君入内の準備中にも、
宰相の中将はもの思いがちでぼんやりしていらっしゃいます。『考えてみれば我ながら執念深いな。こんなに姫君を思っているのだから、関守だってお許しになるはずなのに。内大臣殿も心の中では折れていらっしゃるようだから、
その時が来るまで待つ事にしよう』と我慢なさるのも苦しくて、思い乱れていらっしゃるのです。女君の方でも父・内大臣殿がそれとなくお話しになった中務宮の姫君とのご縁談を、『もしもそれが本当なら、私を諦めたことになるわ』と悲しいのです。長い間離ればなれでいながらも
不思議に心が通じ合う両思いのお二方でいらっしゃるのでした。内大臣殿もかつてはあんなに強がっていらしたものの、今ではすっかり困り果てて、『中務の宮が婿にとお決めになったならば、
また新たな婿選びに頭を悩ますことになろう。それでは相手が気の毒だし、こちらも人嗤われになってみっともない事になろう。今更隠したところで、二人の関係はすでに世に知られているではないか。この際こちらが折れて、中将を婿に迎えるしか方法はなかろう』と、決心なさいました。態度には表さないのですが、内大臣と宰相の中将は
心中恨み合っていらっしゃる仲ですので、『いきなり申し出るのもいかがなものか。今までの恨みを解くために、
わざわざ座を設けるのは馬鹿らしい。何とか良い機会がないものか』と考慮なさるうち、三月二十日は内大臣殿の母・大宮の御忌日ですので、
極楽寺に墓参りなさいます。