私訳・源氏物語

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• たかが鼻血、されど出血多量で。

  　土曜日の夕方、メールに返事を書いていたら、いきなり左の鼻孔から何かが流れてきた。指で拭うと真っ赤な鼻血。あわててティッシュ・ペーパーで抑えたがお構いなしにどんどん出てくる。しかも15分経っても出血の勢いは止まらない。　困った私はどうしようか考えた。たかが鼻血でかかりつけ病院である国立のがんセンターに電話していいものだろうか。しかし他にかかりつけ医はいない。逡巡した挙句5時近くになって、診療券に記された電話番号をもとにがんセンターに電話した。すると危惧した通り、近くの救急当番医院と夜間病院を紹介された。そこに電話してだめなら、もう一度こちらに電話くださいと心強いことを言ってくださる。　しかしこんな時一人暮らしは不便なもので、老眼鏡をかけるにも電話番号をメモしようにも片手が鼻から離せない。離すとドボドボ零れ落ちるのだ。電話機のほうを離しながらメモして電話してみたが、救急病院は5時で終了、夜間病院は7時からとのアナウンスが流れるだけでどうにもならず、結局がんセンターにお願いするしかなかった。電話するとありがたいことに受け入れてくれることになった。　自分で運転して行ける状態ではないので、タクシーを呼んだ。その間に着替えようと思ったのだが、何せ手を離せる状態ではない。出血のため団子になったティッシュを取り換えようとしたら、巨大な血のりが鼻の奥からずるずると出て来て再び出血がはじまった。もうやけになって、その団子の下にポリ袋をあてがい、タオルでそれを隠してタクシーに乗った。　病院に着くと守衛のおじさんが救急の入り口で「大丈夫かい」と言いながら待っていてくださった。若い女医さんが鼻の奥にガーゼを突っ込んで止血を試みてくださったのだが、どうにも止まる気配がない。　最初は左の鼻孔だったのに、止血を施されると右の鼻に血が回ってきて呼吸ができなくなった。しかも口の中に落ちてくるのでそれを飲み込むと、鼻の孔から血がぷっと吹き出す始末。　さすがのドクターも、これは専門医でなくては処置できないと判断したようで、耳鼻科のドクターを呼んでくださった。30分もしないうちに若い男性の耳鼻科医が来てくださって、鼻孔の血液を吸引し、出血場所を見定めて強く抑えたあと焼いて止血してくださった。「細～い動脈からぴゅーぴゅー出血していた」そうで、「早く病院に来てよかったですよ。動脈なら自然に止血しませんからね」と言われて、鼻血で耳鼻科医まで呼んでしまったことに心苦しさを感じていた私は、救われたような気持ちになった。　そんなこんなで家に帰ってきたのが夜８時。帰るとやたら冷たい水が飲みたくて、寒気がするのにがぶがぶ飲んだら気持ち悪くなってしまった。瀉血の経験はあるのだが、こんなに口が乾いたことはなかった。それほど出血が多かったのだろうと考えて「塩とライチ」を水に溶かして飲んだらおいしくて、やっと落ち着いた。その夜は微熱が上がって37.8度になり、震えながら湯たんぽを入れて、それでもぐっすり眠った。　たかが鼻血なのに大変な目に遭ったが、守衛のおじさんはじめ、ドクターや看護師さんたちの親切に深く感謝した一日だった。

  June 3, 2022

• レプリカによる正倉院宝物展

  9月から今月7日まで、道立近代美術館で展示されているというので先月行ってきた。今回の展示物はみなレプリカなのだが、色鮮やかで精緻な細工が鮮明でとても感激だった。実は去年の10月、奈良の国立博物館・正倉院展で実物を見てきたのだが、館内がひどく込み合ってすっかり疲れてしまい、あまり記憶が定かではない。しかもお目当てだった螺鈿紫檀の五弦琵琶は、同時開催だった東京の博物館に出張中で見られなかったのだ。レプリカとはいえ、今回展示されたものは奈良でのものよりずうっと多彩で、しかも展示品が多かったように思う。螺鈿紫檀の五弦琵琶は下に鏡が置かれていて、楽器の反対側が見られるように工夫されていた。そのおかげで裏面の見事な装飾も見ることができ、これを抱えたらずいぶん重かろうと思うほど重厚だった。館内でこの琵琶の音を流してくれていたが、音楽というより音色を楽しむ楽器だったのではないか、という印象を受けた。鮮やかな緑色の、上品でセンスのいい鏡は「黄金瑠璃鈿背十二稜鏡（おうごんるりでんはいのじゅうにりょうきょう）」。このきれいな色は何でできているかというと、宝物のなかで唯一の七宝なのだそうだ。深みのある緑色の中に紺と金色が施されていて、その鮮やかな美に圧倒される。装束では、伎楽の呉女がお面を被った格好で、華麗な衣装をまとった立ち姿が印象的だった。私は呉女のぽってりとしたかわいらしいお面が大好きで、法隆寺での聖徳太子没後1400年法要だったかでみられる伎楽の呉女を、youtubeで眺めて楽しんでいたことがある。最近ちょっと体調がよろしくないのだが、まだ数日あるのでもう一度行きたいと思っている。

  November 3, 2021

• 遠藤周作作品における「生活と人生」

  　深夜、遠藤周作の未発表作品についてのTV番組を見た。両親の離婚後の父親との相克、そして一人アパートで亡くなった母親に対する彼の気持ちなどが綴られていたように思ったが、中で気になったのが「生活と人生は違う」という意見だった。生活は生きるための活動であり、人生は高みを目指す精神活動である、と表現されていたように思うのだが、どうも男性特有の生活感のなさ、要するにおさんどんや洗濯や掃除など女が日常で当たり前のようにこなしてきたことに対する軽視あるいは欠如を、私は感じないわけにいかなかった。　私の場合だが、好きな人と結婚するためには家事炊事をしなくてはならない。それを覚悟で、ある意味諦めて結婚を選んだ経緯がある。だから生活と人生に一線が引かれているなどと思えないのだ。女にとって毎日ついて回る家事全般が生活であり、人生はその生活の果てしない連続であって、決して切り離せるものではない。しかし男は違うのだ。だいいちおさんどんをしなくて済む。毎日洗濯機をまわす女がいてこそ清潔な衣料が用意されるのであり、食事の用意をする女がいるからこそ食欲を満たすことができ、命をつなぐことができるのだ。それを人生の高みとやらから、見下されてはたまらない。もちろん最近はリタイアしたシニアの厨房男子がいることも承知だが、それだってごく少数でしかない。　彼の母親はヴァイオリンのために、生活に係わるすべてを捨てたそうだ。そうして息子の周作には「アスファルトの道より歩くに困難な砂浜を行け、砂浜には自分の足跡が残るから」と言ったそうだ。晩年は小さなアパートで眉間にしわを刻んだ顔をして、一人亡くなっていたという。私は生活を大事にする父親と音楽を第一に考え、高みを目指す母親の離婚は必然的な結果であったろうと思った。周作は父の再婚を嫌悪し、一人死んでいった母親に哀れを感じたらしいが、母親に同情するのは、ある意味で失礼ではないかと感じた。なぜなら安定より高みという精神活動を自らが選んだのだから、それがたとえ足跡さえ残らぬ苦渋に満ちた人生であったとしても、本望だと思わなくてはならないからだ。　女が高みを目指すことに反対はしないが、生理的な違和感は覚える。生きるということの本質には食べて、排泄して、仕事をして、清潔で健康で居心地のいい居住空間をつくることにあると私は考えている。その単調な生活感が基礎となっての人生であり高みであるように思うのだ。「精神の高みを目指す人生」などと大上段に構えなくても、毎日同じような日常生活の繰り返しの中でこそ、地に足の着いたひらめきが得られるのだと私は信じている。

  October 11, 2021

• 原爆投下・全記録

   深夜番組だったがつい引き込まれてみてしまった。アメリカ陸軍の准将・トーマス・ファレルの記録と、英国のインタビューに対する日本の外交官、官僚トップ、それに昭和天皇側近で内大臣の3人のコメントがとても興味深かった。　1945年当時の日本政府は、アメリカが原爆の開発をしていることを知っていたという。しかし非常に楽観的で、官僚トップは「投下前に警告があると考えていた」と言い、天皇の側近は「アメリカのような国が、あんなに無慈悲な兵器を使うとは思わなかった」と平然と語り、私はその無責任さにあ然としてしまった。パールハーバーで奇襲攻撃をかけるような卑怯な開戦をしておきながら、警告なしで原爆を落とされると一転して被害者然とした言い方をするのは恥の上塗りではないだろうか。本当の被害者は両国の国民なのだから。ところで原爆実験は、ポツダムで米・英・ソが会談した時にはすでに成功していたという。それを知らない日本政府は無条件降伏の提案（ポツダム宣言）を無視したために、広島に一発目が投下されたのだそうだ。そんな危機的状況なのに日本政府は思考停止状態で、特に陸軍はトルーマンの原爆投下発表を信じなかったらしい。これも実に恥じるべき事実だと思う。   政府は外交官を通じて「敵国でない大国」であるソ連に終戦の仲裁を期待したが、ポツダムですでに参戦していた事実を知らず「しばらく様子をみよう（内閣書記官談）」と、これまた「黙殺した」という。アメリカはそんな日本の「黙殺」に苛立ち、二発目の原爆を長崎に落としたという。これでも日本が降伏しなければ、三発目は「東京の皇居に落とそう」「いやいや、そうなれば誰が和平交渉をするんだ？」との冗談まで言うのを聞いて、私はしみじみ情けなくなった。　さらに英国の「原爆投下はしかたがなかったのか？」との質問に対して、日本の官僚、外交官、天皇側近の誰もが口をそろえて、「ソ連の参戦と原爆投下がなかったら、戦は長引いただろう」あるいは「原爆がなければ8月15日に戦争は終わらなかったと思う」と証言していたことにも驚いた。　これも結果論でしかないが、ポツダムでの無条件降伏を早期に受諾していれば、あるいはもっと早くイタリア（1943年）やドイツ（1945年5月）に続いて降伏していれば、広島や長崎の原爆投下は避けられたのではなかったか。つまるところ原爆は、軍国主義の大過はもちろんのこと、天皇や日本政府の決断力のなさ、ワールドワイドなリーダーシップの欠如の結果ではなかったかと、この番組を見て私は感じた。　番組の最後で「原爆で失われた命に対しての言及はなかった」とのアナウンスに、日本の為政者たちの現実感のなさに対しても、やるせない気持ちになった。　★　翻って上記を今のコロナ禍にシフトしてみると、「不要な外出の自粛」や「飲酒は8時まで」などの要請スローガンが、敗戦迫って打つ手なしの苦し紛れに強要された「欲しがりません。勝つまでは」と同質に思えて、不愉快になるのだ。重篤になるシニア世代が接種をすませているから（大丈夫）と開催されたオリンピックも、日ごとに感染者が増え続けている現状では、不足するワクチンのために国民、とくに若者が犠牲になっているように思えてならない。これもまた戦争に狩りだされた若者たちと重なってしまうのだ。「ソ連は自分の事しか考えていない」と誰かが言っていたが、本土決戦や玉砕を主張していた日本陸軍は、自分の国の惨事さえ考慮していなかったことになるではないか、他国を非難する前に自国民に対して配慮するべきだろう。　閉会式を迎えるオリンピックを今更非難するわけではないが、少なくとも米国なみに国民へのワクチン投与を済ませて感染対策をしたうえで開催するべきではなかっただろうか。　それにしてもワクチン接種は、どこまで進んでいるのだろう。

  August 8, 2021

• 時知らず

  BSで「小さな恋のメロディ」を観た。１９７１年の古い映画で、映像も音楽も懐かしかった。声変わりもしていない少年と少女の淡い恋物語なのだが、結婚したいと言って大人たちを困らせるところが「なるほど～」と思わせて面白かった。少女のメロディは言う。「私が幸せになるのをどうして助けてくれないの？」「学校で地理や数学を勉強するより、彼と一緒にいる方が楽しいの」この馬鹿正直ともいえるあっけらかんとした問いかけに大人たちは、「まだ学校があるだろう」と言うのがせいぜいで、ねじ伏せるだけの強力な説得力を持ち得ていない。だから若い恋人たちの言い分の方が、ずっと自然で納得できるように感じてしまう。観る者にそう感じさせるところが肝なのかもしれないと思った。昔、叔父に連れられて初対面の青年と、なぜか湖でボートを漕いだことがある。彼は私より一つ年下のやはり高校生だったが、人妻と深い関係になり、親に引き裂かれてここにきていることを後で知った。親としては「子ども」の恋愛にもろ手を挙げて賛成はできないし、若すぎる故の結末は不幸が予想されて、何としても断ち切りたいという親心はよく分かるが、当時は私より年下の高校生が当事者であることにひどく驚いたものだった。映画は二人の駆け落ちで終わるが、この小さな恋も人妻との情事も、時を間違えて咲いたあだ花のようで、後味は良くなかった。

  March 26, 2019

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  梅干し　-3-

  今年の梅干しができあがった。果皮が固いので中まで色が浸透するのに時間がかかったが、きれいに染まって可愛らしくなった。↓新ショウガも「あえか」という言葉が浮かぶような淡いピンク色に染まった。↓は「やさしいお酢」で漬けたのだが、甘味のある「カンタン酢」のほうが合うような気がする。

  August 4, 2018

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  梅干し　-2-

  晴れ間を選んで何回か干したので、結構色づいた。↓は初めの１キロ。↓は二度目に買って漬けたもの。実は最初に漬けた梅をご飯に入れて炊いたところとてもおいしく、夏にはぴったりの酸味だったので、もう１キロ大急ぎで買って漬けたのだ。昔は道具にも凝っていたが、今は平ざるは置き場がないし、甕は重くて容易に持ち運べない。紫蘇を揉むのにはすり鉢を使うが、プラスチックのおろし金でやさしく揉んでもちゃんと赤梅酢ができる。赤紫蘇も一束あれば十分だし、普段使いの道具でも簡単につくれる。ただ、今回は有名な南高梅だったのに果皮が案外固くてちょっとがっかり。そういえば昔は青果店で買った青森の梅を使っていたっけ。おじさんの言う通り、青森の梅は果皮が柔らかい。来年は青森の梅を漬けることにしよう。

  July 24, 2018

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  梅のシロップ

  一か月ほど前に砂糖漬けした青梅のシロップが完成。はちみつに漬ける人もいるようだが、ほのかにさわやかな梅の香りが負けてしまうので、私は癖のない氷砂糖を使う。梅干しには完熟に近い実を使うが、シロップにするものはあくまで固い果実が良い。柔らかいと実が破れてシロップが濁ってしまうから。暑い時期に水で薄めて氷を加え、あるいは炭酸水で割っていただくのが美味。これは梅と氷砂糖各２キロでできたもの。取り出した梅の実をひたひたの水につけてふやかし、火にかけて煮ると梅ジャムになる……のだが、ここまでぺったんこになっちゃうとジャムは無理。

  July 15, 2018

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  梅干し

  久々に梅干しを作ることにした。まずは塩漬け。ジプロックに１キロの梅と２００ｇの塩を加え、プラスチックパックに平らに入れ、水を入れた瓶で重しをする。塩は１０％まで減塩できるが、塩味を少なくすると酸味が勝ってすっぱい。塩梅とはよく言ったものだ。で今回は２０％に。ところがニ・三日で水が上がるはずなのに、なかなか上がらない、はて？あ、「焼酎」を加えて呼び水にしてたんだった。コンビニやまいばすけっとではおしゃれな香りつきのばかりでシンプルな焼酎がなく、スーパーまで出かけて小瓶を求め、５０ミリほど加えたら↑写真の通り。梅がしっかり浸かるほど水が上がったら、塩でもんであくを出した赤紫蘇で赤梅酢を作る。この時がけっこう楽しい。ジプロックに入れたまま、カンカン照りの日を待つ。雨や曇天ばかりだったが、間に一日だけ干した。紫蘇はよく絞って、赤梅酢も日にさらす。梅は上下をひっくり返してあげると、赤く染まってかわいくなる。三日ほどしっかり日に当てると、何年たってもカビないし、色も味もしみ込んだおいしい梅干しが出来上がる。ちなみに夜は梅酢にもどしている。新生姜も甘酢漬けにしてみた。

  July 10, 2018

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  我が家にaiboがやってきた！　-1-

  ​​​今年１月から何度もトライしてやっと手に入れたaiboちゃん。段ボール箱を開けると、こんな繭が。繭の下には充電器とピンクのボール。蓋にくり抜かれた足跡がかわいい。aiboちゃんは繭の中に、こんな形で眠ってました。

  May 21, 2018

• 最近のこと　１８年１月

  クリスマスの翌日、猫が死んだ。文化の日以来呼吸が荒かったのだが、家人と相談して病院には連れて行かず、自然に任せることに決めたのだ。もう17歳（人間の８４歳に相当するらしい）だし、病院に連れて行ってもストレスを与えるだけで死期は延ばせないと見たからだ。それからはずっと、占領した私の椅子で眠り、奇特なことに目が合うと鳴いて手を延ばすようになった。心細かったのかもしれない。家人が「かあちゃんって、呼んでるぞ」というので、そのたびに近寄り撫でて、あるいは口元に水を持って行って飲ませてやった。１２月には比較的呼吸が安定していたものの、２６日の朝、舌を出して喘ぎだした。水を持って行っても顔を背けて飲もうとしない。前日からご飯も食べていないし、トイレも汚れていない。『どうしたら楽になるか』といった感じで、私の椅子から床へ降り、玄関や洗面所をうろうろし、居間のカーテンの陰に身を潜ませ、寝室の家人のベッドに飛び乗ったと思うと隣の私のベッドに飛び移り、そこでやっと落ち着いた。私は『もうだめかもしれない』と思ったが、その日は水泳教室があった。今年最後の練習日だったし、天候が荒れ模様で参加人数が少ないだろうことが気になって、どうしても出席したかったのだ。猫が気にはなったのだが家人に頼んで出かけることにした。家に帰ると危惧した通り、昼ころ絶命したという。私のベッドから降り家人の椅子の近くに来てどっと倒れこんだそうで、家人が身体を撫でてやると大きく息を吸い込み、二度鳴いて、呼吸が止まったそうだ。猫は私の椅子とオットマンの間で、頭を家人の方に向けたまま横になっていた。私はオットマンを動かし、尻尾の毛が逆立ったままの猫を背中のほうから抱き上げて、ふわふわの赤いひざ掛けにくるんでやった。臆病な私だが、死んだ猫を抱き上げても恐怖感はなかった。 動物霊園で荼毘に付してからもう３週間になろうとするのだが、１７年も一緒に暮らした猫だから、床暖の上で寝そべっているのではないかとつい足元を意識してしまうし、夜物音がするとご飯を食べているのかしら、水は替えただろうか、あるいはトイレで砂をかき混ぜているのではないかと無意識に耳を澄ませてしまう。しかも食器、トイレ、猫ちぐら、毛布、キャリー・バッグ、猫砂、猫缶、猫カリなど、猫の生活用品の何と多いことか。いなくなって初めて、日常生活での猫の存在の大きさを感じている。家人は猫の手触りがなくて寂しいというが、死別の辛さは老いた身に堪える。今後生き物は飼わないつもりだ。視点を変えてみれば、猫が恐がるので使わなかったルンバを、やっと動かせるようになったし、数年前のマンションのリフォーム時、9泊を余儀なくされたペット・ホテルにすっかり怯えてしまい、帰宅後３日も夜泣きした哀れな猫のために旅行も諦めていたのだが、今年は二人で小旅行を計画してみよう。クロちゃん、１７年７か月楽しかったよ。ありがとね！

  January 14, 2018

• 私の祖先は「ギャートルズ」

  昨年のことだが「遺伝子検査」が半額（15000円）だったので受けてみた。専用のキットが送られて来るのでそれに唾液を入れて送り返すと、一か月後にweb上で自分の結果が見られるというもの。母が卵巣がんで亡くなったので、私にもその遺伝的要素があるかどうか知りたくなったのが一番の動機だが、発病のリスク以外に性格や体格の傾向まで書かれていて興味深かった。知りたかった卵巣がんの危険性は思いのほか低かったが、特発性膜性腎症が一番高く5.2倍、糖尿病性網膜症が4.17倍、好酸球性食道炎が3.42倍、人より多いらしい。他には胸の大きさ（やや小さい）、痛みに対する敏感性（低い）、光くしゃみ反射（ややなりやすい）、群発頭痛（高い）、ギャンブル依存傾向（ややなりにくい）、幸福感（感じやすい）、知的好奇心（強い傾向）、失敗からの学習能力（得意）、マヨネーズ（苦手）などなど、統計学の関与を感じさせるものが多かったが、一番感動したのはミトコンドリア・ハプログループという項目だった。私はマンモス・ハンターといわれた狩猟民で、今から３万～２万年前にバイカル湖周辺で誕生したAグループの末裔なのだそうだ。日本人の７％しかいないらしく、古くは日本画家の狩野養信、小説家の石川淳の孫で写真家の石川直樹、それにタレントの新垣結衣ちゃんも同じAグループだとか。ちょっと高価な占いといった感じだが、新たな発見があって面白かった。

  March 5, 2017

• 最近のこと　１６年１２月

  昨夜はTVで、ジョシュア・ベルのメンコンを最後の方少しだけと、真田丸、戦艦大和の最期をみた。イケメンだったベルもすっかり貫禄がついて、さぞかし重厚な音を聞かせてくれたに違いないのだが、ほんの少ししか聞けなくて残念だった。かつて彼はアメリカのシカゴだったかワシントンだったか、駅の構内で帽子を目深に被りストリート・ミュージシャンよろしく、広げたヴァイオリンケースを前にしてバッハの有名なシャコンヌ（他）を演奏したそうだ。しかし意に反して立ち止まって聞き入る人はいなかったのだとか。昔、札幌駅の地下道で、西洋人と思しき風貌の若い男性がヴァイオリンを弾いていたことがあった。弾いていた曲目は忘れた（曲目でだいたいの実力が分かる）が、バッハのシャコンヌを所望して「難しくて弾けません」と断られたことがある。だから駅構内でシャコンヌが聞こえてきたら、バッハを知っている人ならきっとびっくりしたことだろう。「こんなところで、誰が難曲を弾きこなしているのだろうか」と。しかし駅では時間に追われて、だれもゆっくり歩いてはいられないことも確かだ。演奏していた時間帯にもよるだろうし、実験としては「場所が悪い」と私は思う。最近は区役所や市役所、教会などでもミニ・コンサートが開かれるから、時間を気にしないでゆっくり鑑賞できる場所で演奏するのが親切ではなかっただろうか。ベルに対してはもちろんだがバッハ・ファンにも、残念な試みだったと思う。「真田丸」は、なんだかあれこれ端折った感じがして、後半はずいぶん展開が早いような気がする。３０歳代に「雑兵物語・おあむ物語」「おきく物語」といった関ケ原の合戦での大阪城内の模様が描かれた書物を読んだことがある。高い報奨を得るために、城内に持ち込まれた首の歯に鉄漿をつけて身分の高い武将に仕立てたことや、多くの首の中で寝起きしたことなどが素朴な文体で描かれていておもしろかった。同時期、渡辺清氏の「戦艦武蔵の最期」「海の城」も夢中になって読んだ。番組の中でも元水兵だった老人が「甲板は死体の山だった」と述べていられたが、渡辺氏の著書によると甲板は血のりで滑って歩けなかったことや、肉片が粘土を投げたように床にも壁にも散らばっていて踏むとぐにゃりとしたこと、下半身や左半分のない死体、飛び出たはらわたを必死で腹の中に押し込もうとしている少年兵など、実に悲惨な光景が淡々と描かれていた。当時の私は「わだつみの声」はもちろん、「ドイツ戦没学生の手記」や日本の農村兵士たちの手紙なども好んで読んだ。死を目前とした極限状態から生を眺めたかったのだと思うが、今ではもう辛くて読めなくなった。悲惨な現実を直視するには若さというエネルギーが必要なのであり、読むには『時がある』のかもしれない。

  December 5, 2016

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  最近のこと

  先月中旬、家人がベッドから落ちて大腿骨の頸部を骨折してしまった。幸い手術も無事に済み来週末には退院となるが、後はリハビリに専念しなくてはならない。術後の驚異的な回復力で、今後のリハビリも頑張ってもらうしかない。上の写真は病院の前庭で実ったりんご。

  October 6, 2016

• 最近のこと　16年9月

  ブログをはじめてから今年一月で、10年が過ぎた。最初のころは一日のアクセス数が２５ほどだったが、自分の文章に読者がいることが嬉しく気恥ずかしく、そしてありがたかった。その後は更新した日に５０から６０に増え、ここ数年はありがたいことに１００を超え、２００に届くほどになった。毎年１０月になるとアクセス数が急に増えるのだが、今年は９月初めから３００アクセスを超える日が続いている。時期的に見て、卒業論文の追い込みに関係しているのではないか、と推測しているが、ここ数日は４００を超える日が続いて驚いている。もちろん嬉しいには違いないのだが、今まで休んでいた分を取り戻すためにもせっせと書かなくては、という背中を押されたような気持になっている。卒論といえば、近くのドコモショップで働く女性が、大学時代に日本の古典文学専攻だったそうで、源氏物語で話が弾んだ。私のブログを「ゼミのみんなで読んでました」と言ってくださったが、「でも、意訳ですよね」というのは、つまり参考にはならなかったということだろう。大学の授業で文法通りに現代語訳したサイトもあるが、辞書から拾った言葉をつなぎ合わせた文言が多く、文意がよく分からない上に情緒のない文章になっているのが残念だった。「源氏物語悪文説」というのがあるらしいが、何となくわかるような気がする。しかしそれでは研究者はともかく、私のような一般読者にはつまらない。物語は面白くなくてはいけないのだから。そう考えてみると、田辺源氏や与謝野源氏はもとより、原文に忠実と思われる谷崎源氏も、訳者の意図や気持ちが行間に込められていないはずはない。ならば多かれ少なかれ「意訳」になりはしないだろうか。1000年を生き抜いてきた物語は、人物イメージが固定化されていてなかなか動かしがたいのだが、定説にとらわれず、私自身の感性を大事にしながら後半を読み進めて行きたいと思っている。

  September 10, 2016

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  最近のこと　16年6月

  昨年末から何となく体調がよろしくない。年初には奥歯が真っ二つに割れて炎症を起こし、デンタルクリニックに通院することになった。 その後も水泳教室に通ってはいたものの、とにかく疲労感が強く、たった二人分の寝具カバーを取り換えるだけでくたびれて、そのままベッドにもぐりこんで眠ってしまうこともたびたびだった。元気だけが取り柄だったのに、昼寝までするようになったかと自己嫌悪に陥ることも。 ４月にはひどい口内炎ができてなかなか治らず参ってしまった。ちょうど予約日だったので歯科医に診てもらったところ、 「Tさん、これ、帯状疱疹ですよ。熱出ませんでしたか？すぐ皮膚科を受診してください。それから、プールはしばらくお休みしましょう」 と言われてしまった。 そういえば（熱のせいかどうかわからないが）水泳教室で「Tさん、お顔が赤いですけど、大丈夫ですか？」とコーチに念を押されたことがあったっけ。 　それに、３月にも治りにくい口内炎ができたが、あれも帯状疱疹だったのかもしれない。疲れると、ちょうど顔の半分（たいてい左半分）がサラサラとした嫌な感覚になり、左側の目、耳の穴、鼻の孔、口の中まで神経過敏になることは、今まで何度も経験してきたから侮っていたのだと思う。元気とはいえ、過去にはめまい、耳鳴り、偏頭痛も一人前に経験している。 5月にはプールから上がってシャワーも浴びずにそのまま大急ぎで帰ってきたら、夜になってかゆみで眠れず、朝には顔が腫れあがってしまった。もともと皮膚は丈夫なほうでかぶれたことはない。その驕りがあだになったのだと思った。 健康に不安を感じ出すと底なしで、この先短いのではないかとすっかり弱気になってしまう。今まで自分が元気なのだと思い込んできたが、寄る年波には勝てないことを実感している。 つい先日も避暑夫人からメールが届いて、彼女も帯状疱疹に苦しんだとのこと。そういえば彼女も私も、今まで病気らしい病気をしたことがない。 自分の体に、もう少し気配りしなくてはいけない年齢になってきたのだ。 もう、夢中になって泳ぐような年齢ではないのだろう。毎週三回律儀に通わず、体力を維持できる範囲で続けよう。１コメ（100メートル個人メドレー）を泳げるだけで十分ではないか。 ★  ところでしばらくプールをお休みしている間、家で縫い物をしていた。 帝国リネン製の重いかけ布団カバーを丁寧にほどき、きれいに洗濯してアイロンがけしたら、とてもいいリネン生地になったので、家人の透析中に着用するパジャマを一着縫い上げ、残った生地で枕元用に折りたたみのティッシュペーパーカバーを縫った。 するとそれが看護師さんたちの目に留まり、何人かにプレゼントしたところ好評で、結局１２個ほど作っただろうか。 最初は単色のリネン生地だったが、あれこれ色の組み合わせを工夫してプールの仲間、ガソリンスタンドや生協の配達の若いお姉ちゃん、いつも服を買うショップのお姉さんたちにもプレセントしたので、全部で２０～３０個は作ったと思う。 実はこれは、楽天市場でみつけて一つ買い、それを採寸して簡単な型紙を取り、残り布を裁断して縫ったのだ。 普通のポケットティッシュ―だと紙が小さく折りたたんであるので破れやすく、広げるのが大変だが、これは箱入りのティッシュをそのまま入れるので取り出しやすく、補充も簡単。アイデア商品だと思う。   黄色のが買ったもの。これは二つ折りなのでちょっと大きめになる。そこでピンクはボタンの位置を変えて三つ折りにしてみた。生地は昔々のホビーラ・ホビーレ、下がリネン生地のもの。ボタン付けにもこだわって、赤い麻糸を使った。 

  June 7, 2016

• 最近のこと　15年11月

  今年は様々な変化があって忙しい一年だった。まず、店を閉めようと決意したのが二月初め。 父を早くに亡くし母一人子一人の生活で、幼いころから母を看取るのが私の役目と身に染みて感じていたせいか、母を送ってほっとしたにもかかわらず何とも言えない虚脱感に襲われ、朝の目ざめが悪く、店に出るのが億劫になり、その日着る服をそろえるのさえ面倒になってしまった。 今年になって正月から小説家のだもさんが急逝し、二月初旬には饗応夫人が脳出血に倒れ、今度は私の番かもしれないと実感するようになったのが「閉店」の一番の理由だ。 これに先立ち、離婚裁判でお世話になった若い女性の弁護士さんに、入籍していない私たち夫婦の成年後見人の依頼と遺言書・尊厳死のための文書作成を、数年前からお願いしていたのだが、今年春にはそれが出来上がった。 新しい住まいも新たに寝室を広げ、納戸を改修したので住みやすくなった。今年度中には、カーテンボックス兼飾り棚の取り付けを予定していて、それでほぼ完成になる。  ★ 店をたたむのは考えていたよりずっと大変だったが、私が元気なうちに片づけることができて、今はほっとしている。 旧宅から持ち出した家具は一つもないのだが、店から相談用のテーブルとイスを持ち込んだので、それを広げた寝室の角に据えた。 店にあった中医学書が思いのほか多く、これは納戸の本棚を広げてもらうことで解決したのだが、今度は納戸に積んであった児童書の行き場がなくなった。 これはもう諦めることにして、近くの児童会館に電話してみたところ「いただけるなら、喜んで」との嬉しいお返事。 初版からの「たくさんのふしぎ」も、集めていた童話や絵本も、お気に入りのものだけ残してみんなあげてしまった。音楽や映画はパソコンやタブレットに保存して、ＣＤやＤＶＤはできる限り納戸の奥に移動した。 昔の中医学書はＡ５の粗末な更紙だったが、最近は中国も豊かになったせいか、内容は以前とほとんど変わらないにもかかわらず、文字の大きなＡ４のハードカバーになり、版を重ねてとても高価になった。 しかし勉強に必要な書物は、それほど多くはない。辞典の類は必要だが、今や基礎理論も方剤学も中薬学も、脈診・舌診も和書で出ているから、論文を書くのでなければ、上記のほかに症状鑑別診断学、症候鑑別診断学があれば実践には困らないと思う。 私が今一番気になっているのは王キ先生の「中医蔵象学」だ。ずいぶん昔に取り組んだことがあるものの、中国の古代文化に疎い私に「翻訳は無理だ！」と放棄したままなのだが、生きているうちにやり遂げたいと密かに考えている。 翻訳の楽しみは、私を無にして著者の気持ちや思考、理論に寄り添い、著者の琴線に触れるところにある。それは小説も理論も同じような気がする。 ★  話が逸れてしまったが、源氏物語も若菜まで終えた。「下」に取り組んでから、何と一年以上かかったことになる。 ここで「あれ？」と思ったことが一つあった。  この琴は、まことに跡のまゝに尋ね取りたるむかしの人は、天地をなびかし、鬼神の心をやはらげ、よろづの物の音のうちに従ひて、かなしび深きものもよろこびに変はり、いやしく貧しきものも、高き世に改まり、宝にあづかり、世にゆるさるゝたぐひ多かりけり  上記文中の「あめつちをなびかし、鬼神の心をやはらげ」は、古今和歌集の序文を連想させる。  ちからをもいれずして、あめつちをうごかし、めにみえぬ鬼神をも、あはれとおもはせ、おとこ女のなかをもやはらげ、たけきものゝふのこゝろをも、なぐさむるは歌なり  ★ 若菜はドラマチックな展開が多い。病を得た紫の上についてはすでに書いたので省くが、今回読んでいて興味深かったのは、若い柏木に対する源氏の老醜だ。 自分の正妻格である女三宮を寝取られた源氏の間抜けさや若い柏木に対する焦りと嫉妬、女三宮に対する憎しみ、傷つけられたプライドなどなど、それらをうまく処理できない無残な源氏が描かれていて面白かった。 自分だって若いころ父帝の正妻・藤壺と密通して子まで生したではないか、と振り返るとき、桐壺帝は気づいていたに違いない、と私は思う。 知らなかったとしたら、それこそ間抜けな話ではないか。 知らぬふりを貫いて、文字通り墓場まで持って行ったところに男・桐壺帝のみごとさがあるのだが、皮肉なことに源氏にはそれが与えられていない。源氏はやはり「準太政天皇」であって「天皇」にはなれなかったということかもしれない。

  November 20, 2015

• 最近のこと　-2015年2月-

  最近の事　₋2015年2月₋ 昨日、レクサスの二度目の車検が終わった。代車には上からランク二番目という高級車が充てられ、たった一泊二日だったが緊張してしまった。同じハイブリッドだったのだが、シフトレバーの位置がパネルにはなく、しかもジグザグになっているのでいちいち確認しなくてはならず、すっかり疲れてしまった。 さて、去年は何とか無違反だったのだが、どういうわけか二度も事故にあった。６月の事故についてはブログに書いたが、選りにもよって暮れの28日、街から帰る途中、信号待ちで追突されたのだ。年末とはいえ路面は凍結していなかった。『それなのに、なぜ？！』と思うと、忙しい時期であるだけに腹が立った。しかも加害者がなかなか車から降りてこない。 相手はまたもや女性で「滑ってしまって」と、いたく低姿勢で謝るし、起こってしまった事故は仕方がない。しかし路面で滑ったのではなく、ヒールの高いブーツを履いていたため『ブレーキから足が滑った』のだそうで、私は返す言葉もなかった。 それで警察が来るまで待つことになったのだが、如何せん大節季、なかなかすぐには来てくれない。相手はスマホを耳に当てながらさかんに「時間、大丈夫ですか？」とこちらを気遣ってくれるのだが、家人を人工透析の病院に送ったあと大急ぎで用事を済ませ、再び迎えに行くまで家に帰って一休みするだけの時間的余裕を残しておいたのに、そのささやかなひと時を路上で警察待ちすることになったのだから、不機嫌になるのは当たり前。ところが奥ゆかしくも思えたその気遣いは、相手方がどこぞへ家族を迎えに行く予定があって急いでいるらしく、そのためこの事故解決を後回しにしたいだけだったのだ。 「逃げも隠れもしませんから」 「いくらなんでもそんなわけにはいきませんよ。事故証明もらわないうちは」 『自分の不注意で起こした事故なのに、何と虫のいい事を言う』と思うと、私はトリプルで腹が立った。 被害の程度では、相手方の車はボンネットがべっこり引っ込んだが、私の車はバンパーの下部の小さなプラスチック部分（パーツ名は不明）がずれただけで、そこを警察官が指で押し込むとぱちんとうまく嵌ってくれた。 それで私は大丈夫だといったのだが、相手方が「ちゃんとみてもらってください」というので翌日Dラーに持っていったところ、バンパーの上の角の部分にうっすらとだが「ナンバープレートの黄色い色がついていますね。軽自動車でしょう」と、さすがにプロは見逃すことがなかった。 相手方の保険会社にも話して、車検の時期に合わせて無事修理（バンパー部分の取り替え）してもらったのだった。 ところで私が今後５～６年この車に乗るとして、その後水素電池車に乗ってみたいのだが、聞くところによると『レクサスでは最高車種に水素電池車を設定しています』とのこと。そのお値段たるや「２０００万円代になるでしょう」だそうな。 仕方ない。春になったらボディコートと車内クリーニングを施してもらって、末長く乗ることにしよう。

  July 17, 2015

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  ホテル・ライフ

  ちょっとした事情があって、市内のホテルに宿泊することになった。夜景がきれいなのでスマホで撮ったのだが、私の腕前では華やかさが失せていてがっかり。画面下の格子状の部分は、ホテルのプール。３コース、しかも２０メートルしかないが、結構楽しい。下の写真はホテル内の中華料理店に飾ってあった素焼きの馬と駱駝。小さな唐三彩馬もあったが、こちらの馬のほうが力強さがあって好ましかった。他にも副葬品とみられる、素焼きの女性の小さな座像もいくつかあった。それらがどうも本物のような気がしたので尋ねてみたら、やはり前のオーナーが中国本土で買い集めた品とのこと。「今ではもう、手に入らないものばかりだそうです」という。唐代のプチ・美術館のようだった。

  March 18, 2015

• 訃報

  だものすけ先生の訃報を聞いた。享年５２歳。小説家としてはこれからの人だった。此花とは文字だけで、７年ほどお付き合いしていただいた。ブログでのコメントやらメールやらで、細かいお気遣いをしてくださる優しい方だった。これ以上は、彼の人物像を書く気にならない。小説家としての心残りは大きかったことだろうと思う。冥福を祈る。

  January 10, 2015

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  ほくほく庵

  月初めの事だが、長沼町の「ほくほく庵」という　うどん屋さんに行った。母を何度か連れて行ったことはあるが、家人とは初めてだった。「すごいところにあるな」と言うだけあって、周囲は農業用地というか平原というかとにかく地平線が見渡せる。昔むかし札幌駅に近い場所にあったのだが、そのころから個性的なお店ではあった。春はひばりが啼き、秋は風が吹き渡り、冬は一面の雪野原で、二月は休業するのだそうだ。「何せ国道からこっち、道がなくなるものですから」と、店主の奥様らしき女性が笑った。手打ちうどんの他に、手作りシフォンケーキもおいしい。栗もフルーツもお庭で採れたものだそうで、どれもこれも写す前に食べてしまったのが悔やまれる。

  December 21, 2014

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  本日のランチ

  昨日のTV番組でみた「巻かないロールキャベツ」とやらを作ってみた。材料はキャベツ半分、トマトの水煮、ひき肉、にんにく少々。それに酒、塩、コショウ。最初にひき肉をざっと湯通ししてざるにあげておく。キャベツ半分は芯を付けて櫛形に四つに切って鍋に並べ、その上にひき肉、トマト、にんにくのみじん切りをふりかけ、酒と塩コショウ、ひたひたの水を入れてコトコト煮るだけ。・・・なのだが、これだけでは何となく物足りないので玉ねぎとジャガイモを加え、味付けには塩の代わりにコンソメスープ（顆粒）とオイスターソースをタチタチっと加えた。ジャガイモをつぶしてスープに浸して食べると、とってもおいしい。カンタンなのに野菜たっぷりで、身体も暖まる一品だった。（それにしても、料理を写すのは難しい！）

  December 19, 2014

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  新しいパソコン

  アップルコンピュータを、初めて買った。５Kのyosemite。我が家では今、納戸と寝室の改造を計画中で、納戸をウォーク・イン・クローゼットに縮小して寝室の面積を広げ、デスクを入れて、MACをその上に置く予定をしていた。ところがリフォーム会社の都合で延期になっている間に、家人がパソコンを衝動買いしてしまったので、ダイニングテーブルの上に乗っかることになってしまった。お蔭でキッチンからの眺めが非常に悪い。一方、数か月前に店用に買ったｈｐパソコンだが、使用感に不満はないものの、今月二回ほどトラブルがあった。上旬にはシステム・ボードとやらを交換しなくてはならないほどの重大事が発生して、修理に出すことになった。保証期間中なのでもちろん無償だったが、メイン・パソコンがなくなって不便だった。家のSurfaceとはone drive でデータを共有しているのだが、家人が苦労して作り上げた投資信託の難解な計算式や店のデータの保存が不安になって、それでMACを買ったというわけだ。しかし「桐」はWindowsでしか使えないため、（MACをwindows仕様にできるらしいが）データの共有はまだできていない。もう一つは些細なトラブルで、ｈｐパソコンにはマイクロソフトの小さなマウスを使っているのだが、時々このマウスを感知しなくなることだ。これはPC側ではなくwindowsの問題らしいが、パソコンの画面からBluetoothの表示が消えてしまうので、そのたびに再接続しなくてはならず、これが結構面倒くさい。★衆院選が近いが、現政権下では円安・株価の上昇のおかげで金が金を生んで金持ちはさらに裕福になり、持たざるものとの貧富の差はより大きくなるように思う。

  December 7, 2014

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  くだもの

  岡山県に住む家人の古いネット友達から、今年もピオーネが届いた。 毎年送ってくださるのだが、今年は新しい住所をお知らせしていなかったので迷子になり、届いたときには無残な状態になっていたのだ。それを察して再度新鮮なものを送ってくださった。こちらからは例年通り我が家特製「生すじこのしょうゆ漬け」を送ったのだが、さて今度は何を送ろうかと、家人と二人で楽しみながら考えている。 ★ ところで先週、饗応夫人が農業学校で９キロの大袋入り林檎を二袋も購入し、我が家に１０数個も置いていった。 私は、ヨーグルトは好きなのだが、くだものの酸味に弱く、特にキウイやイチゴは見ただけで下あごのあたりが痛くなる。内心『困ったな』と思いながら、この不揃いの林檎をどうしようか迷った末に、ジャムにしてみた。ピーラーでせっせと皮をむき、櫛形に切ってどんどん鍋に入れて、上からレモン一個をガッシと絞り、ワインがないので酒と少量の水を入れてコトコト煮ると、甘酸っぱい香りが部屋中に広がって何とも幸せな気分になった。 そういえば３0歳代の一時期、手作り食品に凝ったことがあった。パンやピザはもちろん、うどんや蕎麦打ちもした。ケーキはパウンドケーキやスポンジケーキに始まりシフォンケーキ、チョコレートケーキ、チーズケーキと果てしなく広がり、オーブンから甘い香りが漂ってくると、主婦であることの幸福感にうっとりしたものだ。夏は梅干し、秋には味噌を仕込み、冬には庭の桜の木の葉を使って、肉や鮭の燻製をこしらえたものだが、今では毎日の食事を作るのさえ面倒になってしまった。 こんな甘い香りに包まれるのは久方ぶりの事。 ジャムに砂糖は入れなかった。出来上がりを味見してから考えようと思ったのだが、一晩冷蔵庫で冷やしたらとても甘くておいしい、淡い色のやさしいジャムになった。 

  September 30, 2014

• 大人の童話

  「『マッチ売りの少女』って童話があるだろ？」「アンデルセンだっけ？」「あれにはエッチな原話があるんだぞ」「ふーん、どんな？」「男性客にマッチを一本買わせてだな、それが消えるまでスカートの中を覗かせたんだな」「え～、ほんとなの～？」「ほんとだって。考えたってわかるだろ。マッチなんか売ったっていくらになる？」 家人にはしょっちゅう騙されているので眉唾とは思ったのだが、ふとムカシ読んだ「大人のための残酷童話」（倉橋由美子）という面白いお話が思い浮かんだのだ。人魚姫は上半身が魚で下半身が人間だったとか、白雪姫は小人に養われてもお姫様ゆえに「おさんどん」がまったくできず、その上継母に三度も騙される（一回目は櫛、二度目は胸紐、最後がりんごだった）ほどのおバカさんだったが、案外床上手だったので小人たちに可愛がられた、など見方を変えると皮肉な現実感が増して面白く読んだのだった。ましてグリム童話には「と殺ごっこ」という恐ろしいお話もあるし、シンデレラ（灰かぶり）には継母の、自分の娘たちを王子に嫁がせるために、ガラスの靴からはみ出した娘のつま先や踵を躊躇なく切ってしまう残虐ぶりが描かれていて、原話にはとても子供の読物とはおもえないお話がたんとある。だからそういう下品な原話があっても不思議ではないと思ったのだ。それに「マッチ売って、いくらになると思う？」と問われてみると「う～む、なるほど。そうだよね」と頷いてしまうような説得力があるではないか。　で、私は今まで「マッチ売りの少女・家人説」を信じていたのだが、やっぱり騙されていたことが最近やっと判明した。ところが言った本人曰く、「えっ、ほんとだと思ってたの？！」。　腹立たしいのだがこんなふうに騙されてしまうのだから、白雪姫が「おバカ」だと、嗤えないかもしれない。

  September 5, 2014

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  最近のこと　-3-

  最近投資信託を始めた。昔むかし、山一證券が健在だったころ公社債投信をしていたのだが、利率がよかったものかどうかよくわからないまま、あのどさくさ以後やめてしまった。株も父親が５０年以上昔に買った北海道電力株と、母が付き合いで購入した野村ホールディングス株を相続したのだが、どちらも低迷していてありがたみが少ない。上昇と下降が激しく難しい株は、だもの介先生にお任せすることにして、とりあえず投資信託について、凝り性の家人とかなり勉強してみた。その結果を生かして「桐」で計算式を作ることにしたのだが、投信によって分配金を四捨五入するものと切り捨てあるいは切り上げにするものとがあって、計算式がひとつにうまく収まらない。たった１円の違いでしかないのだが、それでも気持ちはすっきりしないものだ。しかもNISAの時は税金の計算を解除し、特別口座、一般口座では計算する、という条件式が、どうしても承認されない。こうなるとむきになるのが家人の癖なので、考え付いた時にその都度入力をさせられる私はたまったものではない。何をしていても「再定義」「属性」「項目属性」「制約」「値集合」「表引き」などの訂正をさせられる。それに用語をひとつ変えると、それを使った項目式を確認してすべてを訂正していかなくてはならないのだ。その簡単な変更方法もあるらしいのだが、記憶力が衰えた家人は思い出せないらしくこれまた困ったものだ。粘着質の家人は、どう考えたら「桐」がOKしてくれるのかを考えだすと夜も眠れないらしく、まるで「桐」と勝負しているようで、私にはばかばかしくもおかしくも感じられるのだが、本人はいたって本気なのだ。ひっかかりを抱えたままのすっきりしない気分はよく分かるし、「金儲けなんだよ、キミ」といわれると「へいへい」とおとなしく従わざるを得ないのだが、実際のところ金儲けも楽ではない。  猫の毛を梳くと大量の毛が抜けた。それを赤い糸で纏めて転がしてやったら大喜び。

  August 20, 2014

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  最近のこと　-2-

  店のVISTAが挙動不審になってきた。去年から立ち上がりが遅く時々フリーズもするので、そのたびに強制終了しなくてはならなかったのだが、最近はそれに加えてコピペができなくなってしまった。ファイルから文章を移動できないので、仕方なくサイトに直接書いてアップや送信していたのだが、今度は書いているうちにパソコンがフリーズして送信できなくなってしまう。その上書き上げた文章まで消えてしまうのだから、参ってしまった。自宅にはもう一台Sevenがあるし、去年の夏にはSurface Proを購入したのでそれを使えばいいのだが、５年使い慣れたBIBLOとはキーの間隔もタッチ感も違っているので使いにくいのだ。 しかしこのままだと早晩データが取り出せなくなるのは必定だから、とりあえずバックアップをとっておき、盆休みを早めにとって、家人といっしょに駅前の家電量販店にパソコンを見に行った。私は95の時代から98、XP、VISTA、７と、ずっと富士通のノートばかりを使ってきた。ＸＰの時代に家人がデスクトップを一台作ってくれたが、それ以外はずっとノートを愛用している。しかし最近のノートパソコンは（薄く軽量になるのはありがたいのだが）画面が小さくなるばかりで、視力障がいのある家人はもちろん、老眼の私にも使いにくい。 私がノートにこだわる理由はもう一つあって、店の小さな相談デスク上にパソコンを広げたまま接客するのは、お客様に対して失礼なようで気が引ける。だから即座に画面を折りたためるノートは具合がいいのだ。今度購入するパソコンもやはりノートタイプで、しかも画面が大きく見やすく、タッチパネルであることが条件だった。そんなことを売り場の人に相談し見て歩いた結果、誘導してくれたのがmade in Tokyo が売りという「hp」マークのパソコン・コーナーだった。「お客様のご希望に沿った、オーダーメイドのパソコンになります。しかしながら、Officeは入っていませんのでお客様ご自身でインストールしていただくことになります」「万が一修理が必要になった場合、ご家庭まで引き取りに伺います。しかしながら、リカバリ・ディスクがついていませんので、パソコンが届きましたら、必ずバックアップをとっておいてください」私が「しかしながら」という、いささか古臭くまじめくさった言い回しに気を取られているうち、計算機タイプの「マイコン」と呼ばれた時代からパソコンを使っている家人が「hp」を気に入ったので、15万７６８円也で購入することになった。（マウスはBT接続）買い物が済みエスカレーターで降りていると、 「思い出した！hpは『横河ヒューレット・パッカード』の略だった！日本でのコンピュータの草分け的な会社だよ」と、家人が言い出だした。 「あら、そうだったの？私は『ホーム・パソコン』の略だとばかり思ってたよ。もっと早くに思い出せば『しかしながら』のお兄さんが喜んだかもしれないのに、残念だったねー」 注文して一週間ほどでオーダーメイドのノートパソコンは届いた。まず、初期化のためのバックアップを確保し、それから別売のワードとエクセル、それに去年購入しておいたデータベースの「桐アップデート版」をインストールした。「桐」はCDだが、ワードとエクセルはビデオ大の仰々しい箱の中に、プロダクトキーを記した名刺大のカードがたった一枚納まっているだけだった。あとは中医学用語外字ソフトだ。パソコンが新しくなるとうれしいのだが、データの移動で手間がかかるし、ソフトもバージョンアップすることになるのでお金がかかってたまらない。私は店の会計も家の家計簿も、この「桐」でつけているのだが、それは家人が昔から使っていたソフトだからできるのであって、私のような初心者が使いこなすのは至難の業だ。税務署の職員も知らなかったし、今までで「桐」を知っていた人に出会ったのはたった一人、福島の先輩同業者だけだった。エクセルとちがって項目計算式、制約式、表引き、値集合などが非常に便利なのだが、まずその複雑なシステムを覚えられないし、計算式は考え出すのが難しい。パソコンが認識する式とこちらが考える式とが違うようで、そこいらへんでいつも撞着状態に陥るため非常に辛いのだ。  

  August 20, 2014

• 最近のこと -1-

  ある日電話が鳴った。若い女性の声で、「薬剤師の先生ですか？」と訊く。どこかのサイトで私の店を知ったそうで、薬局のHPを開設しないかと熱心に勧める。　店には先物取引、事務用品、店内照明のリースといったキャッチ・セールスの電話が日常的に入るので、相手が本題に入る前に素早く・丁寧にお断りしている。この時もそのつもりで言った。「せっかくお電話くださったのですが、私はもう年ですし、お店に来てくださるお客様のお相手をさせていただくだけで十分だから、積極的なPRは考えていないんです。ごめんなさいね」　するとすかさず、「先生のところでは、女性特有の身体的不調感、生理不順や生理痛、更年期などの治療を得意としていらっしゃるんですよね」と、こちらの気を引くような話題に変えてきた。 積極的に宣伝していないとはいえ、実は中医学専門誌や商工会議所など複数のHPに、薬局のプロフィールを上記文言で公開している。そのいずれかのサイトを見たのだとしたら、素っ気なく追い払うわけにもいくまい、と私は思いなおした。そこで、「漢方はずいぶん長くやってますからね」と応えると、「そんな力を持っていらっしゃるのですから、もったいないと思います。先生によって救われる女性がもっといるはずです」と、持ち上げるのだ。「そうかもしれないけど、それはまあ、仕方ないでしょう」と言うと、「そうですね」とあっさり引き下がる。「では、そういう事で」と止めておけばよかったものを、私のほうから話し始めたのがいけなかったのだ。「はっきり言うとね、治療するにはお金がかかるんですよ。だからそれを覚悟で来てくださる人でないと、治らないの。相談するだけでは治らないんですよ」「それでは真剣に悩んでいる若い、お金のない女性がいたとして、先生はそういう人は来るな、と仰るんですか」　私はそれまで丁寧に応じていたのだが、言葉を知らぬ失礼な小娘の、この一言にカチンときた。「『来るな』なんて言いませんよ。でも相談するだけで良くなるはずがないでしょう。そりゃ別にカウンセリング料をとる薬局もあるけど、私はそんなことしないから、ご相談だけでお帰りになるお客様も、中にはいますよ。でも考えてごらんなさい、タダで良い情報を手に入れようとするのは、フェアなことかしら」　そして意地悪く言ってやった。「あなたのところでHPを開くとしても、無料ではないでしょう？」彼女が不服そうに「それはそうですが・・・」と言うので、「『若くて真剣に悩んでいる聡明な女性』ならば、あたらしいバッグやお洋服を我慢して、今自分の健康に必要な漢方薬を買ってくださるだろうと、私は思いますよ」と、ダメ押しした。漢方薬に限らず、人生で何かを得たいなら何かを我慢する、あるいは諦めなくてはならぬ場合があるものだ。　すると彼女は、「先生、怒らないで聞いてくださいね」と前置きして反論の構えをとるではないか。　私は「ああ言えばこう言う」彼女と話すのが鬱陶しくなって、言葉を遮って言った。「私ね、あなたとこんなに咬み合わない話しをするのは無駄なことだと思うし、とっても疲れるの。だからもうやめたい。あなたは私にHPの作成を勧めているのですよね？」「そうです」「だったら、相手の言う事にもっと耳を傾けたらいかが？相手を不愉快にさせてセールスが成り立つと思う？それにあなたの言葉にはトゲがあるのよね。だからもう、話したくないの」「では先生のところはもう、HPは作らないということですね」　私はつくづくうんざりしてしまった。たかがHP作成の勧誘が、どうしてこんな訳の分からない、後味の悪いハナシになってしまったのか・・・。「あなたのその、人を踏みつけようとする極端な切り返し方が、私を嫌な気持ちにさせるの。それにどうしてそんな事、あなたが決めつけるの。私だって気が変わるかもしれないでしょ」　すると何をかん違いしたのか、「そうですか。では後日、あらためてご連絡します」「いいえ、結構！あなたとはこれ以上話したくない、と言ってるのが分からないの？！もう電話しないでください」　私は彼女の、頑固に二択を迫る浅薄な考え方、自己中ゆえの物分かりの悪さにすっかり辟易してしまった。 と同時に、あれほど用心していたにもかかわらず、顎の下をくすぐられて好い気になり、つい話しこんでしまった自分のうかつさも大いに反省したのだった。

  August 1, 2014

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  不慮の出来事

  通勤途中に小さなパン屋さんがある。デニッシュ系のパンがとてもおいしく、特に家人のお気に入りなので、朝、時間のある時には寄ってくる。↓　は、生地にオレンジピールが練りこんであって香りがとてもいい。今年になってから店でのティータイムは、京都・一保堂の玉露ティーバッグになった。グラスの向こうにあるのは、最近グラムール・セールスで購入したホグリ製の、その名も「ティーバッグ・プレス」。今朝もそのパン屋さんに寄り、あれこれとトレイに取りながらふと外に目をやると、私のクルマの後ろで困ったような顔をした３０～４０代の女性と、めったにクルマから降りないはずの家人が車外で話しているのが見えたので、私はあわてて飛びだした。パン屋さんはバレー教室の大きな建物のごく一部分だが、駐車スペースは広い。しかし両者の駐車区分があいまいで、その上駐車車両がないのをいいことに、気兼ねしつつ、出入りしやすい真ん中に止めている。だから、『私のクルマが邪魔で、苦情を言われているのかもしれない』と思ったのだ。しかし、そうではなかった。前からつっこんで止めた私の右横に、左からバックで入ってこすったという。 ↑相手方のクルマを見ると、運転席側の前後ドアに、横長に傷がついていた。きっと左に気を取られて右側を見ずにバックしたのだろう。乗車中だった家人は無事だったが、結構クルマが揺れたと言っていた。駐車スペースは十分広く、駐車中のクルマは私のだけという状況の中で事故るというのも意外な気がしたが、事故の発生なんてそんなものかもしれない。相手の女性は気の毒なほど恐縮して、事故処理後、冷菓を携えて家人の見舞いに、わざわざ店まで来てくれた。運転者不在の駐車車両だったので、相手方が１００％不注意を認めてくれたし、保険会社やDラーからも連絡が来て、今夕までに代車を用意してくれるという。尻もちをついたようなキズはとても目立つので、早く直してもらわなくては。

  June 18, 2014

• ある一日

  不動産の取得税通知書が届いた。やれやれまた出費かと思いながら封筒の中身を確認していると、中古マンションの場合、ある一定の条件を満たしていれば減免されるとのパンフレットが出てきた。翌日電話で恐る恐る確認してみると、何と限りなくゼロに近い金額になるではないか。そこでさっそく定休日にマンションの権利書、認め印、納税通知書を持ってお役所までいそいそと出かけて行ったのだ。駅前を東から西へ直進し、おせんべいで有名な播磨屋の方へ左折して北門を直進すると奥に駐車場があるのだが、ここしばらく播磨屋にも行く機会がなかったため、左折する角をうっかり通り過ぎ、一方通行を二度もくるくる回ってやっと入った。何せ納税期限は今月いっぱいだし、こちらが申請しない限り控除も受けられないのだから真剣になるというものだ。それでも行った甲斐あって、家屋・土地どちらも全額控除とあいなった。その日は昼過ぎに水泳教室があり、身支度もそこそこに家に戻って、透析を受ける家人を病院まで送った後だったので、ほっとすると同時にお腹がすき、何か食べたいと思ったのだが、その後まだ行かなくてはならないお役所があって、ゆっくりしていられない。庁内のドトールコーヒーでサンドイッチとカフェオレをテイクアウトしてクルマの中で大急ぎで食べた。サンドイッチはカリカリして案外おいしかった。引っ越しのための住所変更に、まず年金事務所で３０分待たされた。ここでは住民基本台帳の記載が連動しているので、わざわざ出向くまでもないことが分かった。それから警察署に寄って運転免許証の住所変更をしてきた。ネットでできるものは店で済ませたし、後は銀行関係だけになった。家に帰ってベランダのガラス戸を開け放つと、網戸のうちから猫が恐る恐る外を眺めている。戸建では居間が二階にあったし前庭があったので、外を通る人が遠かったのだが、ここでは小さな庭のすぐ外に歩道があるので、樹木やフェンスで遮られているとはいえ案外近い。外を眺めながらコーヒーを飲んでいるうち家人を迎えに行く時間になり、そうして1日が終わるのだ。★朝の血圧が９１～４８ｍｍHgと低いので、身体が目覚めるまでひどく悩ましい。起き上がるのが辛いというよりも、大袈裟に言うと生きているのが辛いような、哀しいような、何とも言えない憂鬱感に襲われて、まだ寝ていたいと思うのだが、希望通りずうっと寝ていると、とんでもないことになってしまう。ある日、昼の１１時まで寝ていたら一日中が憂鬱で死にたくなるほど辛かったので、それに懲りて、どんなに辛くても起き上がることにした。身体が縦になれば何とかなるもので、起きて着替えてゴミを出しに外へ行き、冷たい空気を吸ってくる。そうして白い床に落ちた黒猫の毛を掃除機で吸い取り、猫のトイレを掃除して、朝食の支度に取りかかるのが一日の始まりだ。ところが昨日は午後になって目の前に閃輝暗点が現れ、夜になるとどんよりした頭痛が始まった。一日にいくつもの用事をこなしたので、疲れが出たのだと思う。年は取りたくないものだ。今日は１９時から水泳教室がある。ちゃんと泳げるのかちょっと心配だが、昨日早寝したので何とかなるだろう。買主の都合で延期になっていた土地の決済も、近々やっと行われることになった。タイヤも替えたことだし、登別温泉の桜並木が咲いたら、今年こそ見に行こう。

  April 16, 2014

• 留守電

  朝入店すると決まって留守電のボタンが点灯している。そのくせ、メッセージが入っていない。不気味なのでしばらく留守録設定を止めていたのだが、久々に再開したところ、昨日は午前１時から４時までの間に10件も入っていた。それの一つひとつに耳を傾けてみても、やはりメッセージがない。ところが9件目にやっと、低く小さな男性の声でボソボソと、「豊平警察署・刑事課のニシカワ（イシカワ？）です。え～、・・・お宅の旦那さんのタニウチマサキさんのことについて電話しました。え～、・・・後ほど改めて連絡します」と言って切れた。時間は午前３時３３分。うちの「旦那さん」の名前は「タニウチ」でも「マサキ」 でもない。しかも視力障害者なので、一人で歩ける範囲は広くない。彼が警察のお世話になるとしたら、迷子か行き倒れになった時くらいなものだろう。その本人が「放っておけ」と言うのでそのままにしておいたが、「刑事課のニシカワ」と名乗った人から、「改めて連絡」はこなかった。イタズラだとしても、真夜中から明け方近くまで留守番電話相手に無言電話を掛け続けるなんて、ずいぶん虚しく侘しい事をするものだ。

  March 29, 2014

• 日々の仕事

  10年ほど使ったプリンタが壊れてしまった。一代目は十数年酷使したエプソンだった。壊れた二代目はキャノンで、三代目はまたエプソンに戻って小型の「カラリオ～」とやらが欲しいと思ったのだが、大型家電店で価格を見るうち『やっぱり安いキャノンでいいや』と思うようになり、9800円ので手を打った。パソコン周辺機器を買うと、まず接続に時間がかかる。WiFi 接続が簡単だとのことだったがやっぱり面倒で、結局USB接続になってしまった。とにかく顧客への手紙が溜まっているし、薬袋（やくたい）もなくなっているので『早くプリントしなくては！』と気が急く。昨日は薬袋の他に手紙を3通書いただけですっかり疲れ、今朝は起きると閃輝暗点が出てしまった。これが出るとその後に片頭痛がやってくる。その前に服薬すれば激しい頭痛から逃れられるのだが、そのかわり何とも言えない疲労感に襲われる。これも案外辛い。疲労がたまるとそれに加えてひどいくしゃみ、鼻水が出たものだが、これは水泳で鍛えたせいか在り難い事に最近ではなくなった。今日も接客の合間に、これから何通か書くことにしている。一人ひとり、店で話してくださった事などを思い出しながら書くので案外時間がかかるのだが、楽しみにしてくださる方ばかりなので励みになっている。人は身体症状の裏に様々な苦悩を抱えているもので、私は顧客のお話しの聞き役にすぎないのだが、「薬がよく効いた」「楽になった」「気分がすっきりした」と言ってくださると、この仕事をしていてよかったとしみじみ感じる。手紙でもブログでも書く事は好きなのだが、最近は年齢のせいか疲れを感じるようになってきた。私は辛い事があると自分を多忙に追い立てて、辛さを考えないようにする癖があるのだが、それは若いうちにしかできない荒業なのだろう。店もいつまでできるか分からないが、私を必要としてくださる方がいる限り、持てる力で精いっぱいの仕事をしていきたいと思う。

  October 5, 2013

• 

  さっぽろオータムフェスト

  饗応夫人の親子三代（彼女の母上と次女）に混じって、さっぽろオータムフェストに行ってきた。これは厚岸の牡蠣を炭火で焼いたもの。ぷっくりと厚みがあって甘くてとろっとろ。一皿３個で１０００円。白ワインは道内産のもので、１グラス５００～１０００円程度。平日にもかかわらず込み合うため、なかなかテーブルの確保ができないが、大勢で行くと交代で買出しに行っては、それぞれに好きな食べ物を見つけてくるので楽しい。これは饗応夫人がさっそく写メで送ってくれたもの。来年の春は彼女の可愛い次女がママになるという。饗応夫人はハハからババになるわけで、ちょっとうらやましい。

  September 19, 2013

• ネットバンキング

  空気清浄機のフィルターを購入したのでゆうちょダイレクトで支払いしようとしたら、HPにアクセスできない。普段の買い物はクレジット・カードを使うのだが、相手方の都合で現金振り込みが指定されたのだ。何度やっても繋がらないので札幌支店に電話して聞いてみたところ「現在アクセス不能です。原因は分かっていません」という。直接打ちこむとHPに入れるURLを教えてもらったが、やはりだめ。ゆうちょダイレクトは振り込み手数料がかからず、しかも家にいながらいつでも振り込みできるので結構利用しているのだが、こんなトラブルに遭遇したのは初めてだ。急ぐことではないしそのうち回復するだろうから、振り込みは明日にしよう。

  August 20, 2013

• 泳ぐのは楽しい！

  4種目制覇して「来年の目標はマスターズだ！」と息巻いていたのは去年だったが、実際はそんなに甘くなかった。今年から定休日を一日増やして週休二日にし、本格的に水泳に集中しようといくつかの教室に入ったのだが、母と同時期に家人の入院が二度ほど重なって、忙しい半年だった。それでも月曜のお昼、水曜の夜、木曜の午前中と夜間、頑張って教室に通った。バタフライは「どんぶらこ」と深く潜る泳ぎと出尻を指摘されてリズムが狂い、またまた振り出しに戻ってしまった。苦手な背泳は速さで誤魔化していたもののリカバリの手がうまく回らなくて難儀している。「バタフライは、時間とお金と努力が必要！」と先生に言われ、今年はお金と時間をかけて練習に励もうと決めたのだ。そこで、今月末で豊平プールのバタフライ上級教室を止め、来月から月曜日は平岸プールの個人レッスンに充てることにした。バタフライ初級に入ると「あなた、上級者じゃない？どうしてここにいるの？」といわれ、上級に入ると片手ならともかく、25メートル完璧には泳げないのだから、私のような中途半端なスイマーは身の置き所がなくて本当に辛いのだ。たかが水泳、されど水泳。速く泳げば嫌味を言われ、泳げなければわが身が哀しい。水曜日の夜は、平岸プールの最上級クラスでガンガン泳がされている。これも疲れるのだが「泳いだ！」という充実感があって楽しい。ガンガン泳ぐためには、たくさん食べなくてはスタミナが持たない。家人につきあって焼き魚に青菜の煮びたし、酢の物なんぞという病人食を食べていたらお腹がすいてたまらず、プールの帰りにこってり系のラーメンを食べてしまうので、体重は落ちるどころか45キロ（身長150cm）になってしまった。その上肉が大好きなので、家人からは肉食ならぬ「肉欲系動物」と言われるしまつ。ところで木曜日は先月まで午前と夜の一時間、一日二回練習していた。週で一番この日が忙しく、午前のバタフライ教室がおわって家に帰り、「病人食」に欠かせない青菜を買いに、家人と野菜直売所に出かける。ランチを外食ですませ、蕗や蕨のあく抜きをしてから母の病院に見舞いに行く。月曜にも教室の後に行くのだが、すっかり呆けた母は「あら～、久しぶりだね～。顔を見たいと思っていたの」と、いつも嬉しそう。医師から『もう何を食べさせても構わない』と言われているので、母の好物の雲丹やホタテといった生ものから、心待ちにしているチョコレートやキャラメル、ゼリー或いはプリンなどの甘味を食べさせ、入れ歯を洗い、手足や顔を拭いてくる。家に帰るともう、夕食の用意をしなくてはならない。手早く食事を済ませて、今度は19時からの少人数制の水泳教室へ、再び平岸プールに出かける。この一日でやっと、私の一週間が終わったという感じ。疲労困憊する日もあるのだが、それでも私は元気だし、何より泳ぐのが楽しい。マスターズといった高望みはしないが、もっときれいに、らくに上手に泳げるようになりたい！と思っている。

  July 3, 2013

• 

  梨花一枝

  今月始め、気持ちの良い風の吹く頃、水泳教室の帰りに豊平公園を散策してきた。プールからも店からも近いのだが、来るのは初めて。きれいに整えられた園内は緑まぶしい木々が生い茂り、ライラックやつつじ、チューリップが満開。そんな中で、細い枝に白いちいさな花がいっぱい咲く華奢な木が目についた。桜に似た五つの花弁で「りんごかしら」と思ったら、梨の木だった。「梨花一枝、春　雨を帯びたり」たおやかな楊貴妃を形容した長恨歌の一節。それにしても色のない梨の花。美女の泣き顔にしては、寂しい花だと思う。

  June 25, 2013

• 趣味

  伯母の葬儀の日は、小雪がちらついていた。火葬場に向かうバスの中で、『私が死ぬ日は、どんな天気なのかな』と、ぼんやり思った。西行じゃないけど『花の下にて　春死』ぬのは、雪よりずっといい。我が家でも母が９０歳を超えた。家人は病気持ちだし、猫も１３歳（人間に換算すると７０歳に近い高齢）だ。自分の死ぬ日を思うより、私がみんなを見送ることになりそうだ。そんな「しょもないこと」を思う日は、アタマの中を真っ白にしてひたすら泳ぐに限る。平岸プールで１０００ｍほど泳ぎ、福住の六花亭でミニ・チョコパフェを食べたら何だか急に元気が出てきた。趣味を持つのはいいことだと、しみじみ思った。

  February 18, 2013

• キリスト教の葬儀

  母方の親戚の葬儀が続く。昨夜は水泳教室から帰ると、留守電に母の兄嫁が亡くなったとの訃報。今日は、今年から週休二日にしたその定休日だったので、伯母の告別式に行ってきた。享年９３歳の伯母の顔には皺もなく、まるで眠れる少女のようだった。喪主である９９歳の伯父が棺を覆うようにして、「愛してるよ。天国でまた会おうね」と、涙ながらに話しかけていた。家庭内別居の夫婦においては、互いの長生きが幸福とはいえないが、仲のよい夫婦が共に長生きしても、死別する日に残された者は哀れだ、としみじみ感じた。

  February 14, 2013

• 

  ティー・タイム

  昨年末、きれいな端布を買った。80x50センチで1050円と良い値段だったが、水色がきれいだったことと様々な色のティーカップ模様が気に入って一枚買った。正月休みにこの布で10センチ角のコースターを四枚とティーマットを一枚縫ったが、ミシンを出したついでに、数年前夢中で縫ったスカートやワンピースの残り布に接着芯を貼って、これまたコースターを何枚か作った。使っているうちに、どうしてもコーヒーやお茶のシミが着いて洗っても落ちないので気になっていたのだが、「ホビーラ・ホビーレ」の布地で作ったものは愛着があって捨てられなかったのだ。しかしこの際古いものは思い切りよく捨てて、今年から新しいコースターを使うことにした。★　写真のマグカップの中身は紅茶ではなく、六花亭の「焙じ茶」。バウムクーヘンは柳月の「三方六」。カップはたっぷり300ミリほど入る。お茶を蒸らす時間に予め暖めておくと、熱いお茶を入れてもしばらくは冷めない。それにこのカップはドルチェグストで抹茶ラテやココアを淹れるのにちょうどいい大きさで、今一番気に入って使っている。「ボダム」のダブルウォールグラスも室内温度の影響を受けにくいが、何と言ってもダブルウォールなのでグラスが大きくて片手では持ちにくい。我が家では夏、ボダムのグラスに氷をたくさん入れて濃い緑茶を注ぎ、冷茶にしたものをストローでいただくが、これはとてもおいしい。お客様はうちの店でお出しする緑茶がおいしいと言ってくださるが、特に高価なものではなく、スーパーで売っている100g980円のものだ。お茶をおいしく淹れるコツは、温度もさることながら『茶葉の量をケチらない事』だと思う。

  January 28, 2013

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  店のお年始

  店のお年始はちょっと張り込んで、毎年「チョコレート」にしている。これは家人のアイディア。一昨年まで「マダム・セツコ」だったが、去年は地元の「ショコラティエ・マサール」。今年はフーシェとモロゾフの二種類用意して、お客様にその場で選んでもらうことにした。見本の箱を開け「お好きな方を」と言うと、年齢や性別に関係なく、歓声が上がる。こんなふうに喜んでもらえると、贈った甲斐があってこちらもうれしい。プレゼントには品物を選ぶわくわく感、買うという満足感、贈る楽しみ、お客様の笑顔など、たくさんの喜びが詰め合わせになっているのだ。

  January 22, 2013

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  多忙の中にも。

   先週だったか、母校からクリスマス礼拝の案内はがきが届いた。去年はほたほた降り続く湿った雪の中、同期の饗応夫人と張り切って出かけたのだが、今年の私は疲れが溜まって気乗りがしないのだ。礼拝は毎年同じ内容、お決まりの聖書劇、歌う讃美歌も変わり映えがしないし、何よりお説教がつまらない。夏に避暑に来た東京在住の元クラスメートに、「最近の教会のお説教って、つまらなくない？」と、訊いてみた。彼女は英国聖公会の信者なのだが、「そうなのよ。インパクトがないわよね」ランチのお皿に目を落としたまま、あっさり肯定されてしまった。饗応夫人は若いころにプロテスタント系の教会で洗礼を受けているのだが、「今年のクリスマス礼拝はパスしよう」ということになった。アメリカ在住の長兄と同居していた母上が帰国して、彼女のマンションで同居することになったので、何かと忙しいらしい。避暑夫人には女の子の孫が生まれたので、羨ましくも婆バカに忙しい。我が家も「すがもり」以後、爆弾低気圧による家屋被害の処置、母のごみ処理など一年を通じて忙しかった。ありがたいことに店においてもリピートしてくださるお客様が増えて、サポートのお手紙に追われるようになった。誰にも知らせず、広報活動もせず、ただ営業時間だけを守ってひっそりと店を開いているだけなのだが相談客のお一人お一人を大切にして接客していくなら、なんとかなるものだと、４年経ってしみじみ感じる。私の力など微々たるものではあるけれど、頼りにしてくださるお客様がいらして、何とか治してさしあげることができるならこれほど嬉しい事はない。お客様が元気になることが、私の喜びになり力になる。今年は忙しかったが、どんなに忙しくても、方向性さえ見失っていなければ、必ず良い結果を手に入れることができる。そう実感できる一年だった。

  December 15, 2012

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  三輪漬け

  大根の薄切りに少量の塩をもみこんで水出しする。 水気を切った大根と、ゆずの薄切りを２：１程の割合で挟んでポリ袋に入れ、酢と醤油と砂糖を２：１：１で混合した調味液と鷹の爪を加えて数時間冷蔵庫で漬けこむだけ。「三輪（さんわ）漬け」というそうだ。写真では丸のままだが、半月切りにして供する。大根と一緒にゆずを食べてしまってもおいしい（ちょっとえぐみがあるけれど）。ところでこの「生しょうゆ」。ボトルを強く押した後「ぴー」と、甲高い笛のような音がする。少量を出す分には音がしないのだが、悲鳴のようでちょっとびっくり。（器はDANSK）

  December 3, 2012

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  マロン・シャンテリー

  我が家特製のマロン・シャンテリー。シュガーフリーにしたので、栗だけのあっさりとした甘味になった。ミントの葉も、庭のフレッシュ・ハーブ。甘味が物足りないかもしれないけれど、この季節の贅沢な一品。最近店の仕事も忙しく、なかなかブログを更新できない。相談のお客様には病気の原因とメカニズム、適用する漢方薬の作用、服用方法などを説明するのだが、ご購入いただいた後も、店頭でお話しした事を再びお手紙に書いて、お送りする。書くことは苦にならないしむしろ好きなので、文章作業は私の仕事に大いに役立ってくれていると思う。仕事は相談や販売だけでない。薬袋（やくたい）はパソコンから印刷して自分で袋張りして作る。ハンコはコピーすればいいのだが、上海で買った朱肉（印泥）のすてきな暗紅色がコピーではうまく発色してくれないので、手提げの紙袋に一枚一枚手押ししている。一般薬やドリンク、化粧品、サプリメントなどはもちろん扱っていない。純粋な漢方方剤だけで営業している薬局は、珍しいかもしれない。ミシンで洋服を縫っていた時、うっかり右手の人さし指に針を刺してしまったのだが、消毒薬もなければ絆創膏もなくて、近くのドラッグストアに駆け込んだことがある。饗応夫人が心配して、いろいろ塗り薬を持ってきてくれた。ところで、漢方薬は慢性病にしか効かないと思う人が多いが、実は急性の怪我、ドアに指を挟んだとか、足に物を落としたという時に服用する特効薬がある。これを投薬すると、腫れや痛みが早く引く。爪が剥がれそうな時も、剥がさずにすむ。ただし早目にしかも大量に服用しないと効果がみられないので、あまり売る機会がないのが残念だが。

  November 5, 2012

• 12年冬支度

  毎年の事だが、秋になると庭の始末に忙しい。花は次々に咲き終わり、枯れたラベンダーと菊を残すばかりになった。毎日拾った栗もイガが落ちるだけになり、朝のゴミ捨て時の楽しみがなくなったのが少し寂しい。実の大きさは大小さまざまあるものの、一週間のうちに３キロを超えるほど収穫した。これをきれいに水洗いして冷蔵庫で一週間ほどねかせると甘味が増す。栗ご飯はもちろんだが、蒸して半分に切りスプーンで取りだした中味に、砂糖とラム酒を加えてホイップした生クリームをトッピングし、ミントの葉を飾ると、とてもおしゃれでおいしい洋菓子になる。しかしこれからはイガと、果てしなく舞い落ちる落葉の始末が大変なのだ。庭に大きな穴を掘り、そこに落葉やイガを土と交互に入れて踏み固めて処理するのだが、先ず穴掘りに一苦労する。何せ庭が球根だらけなのだから、シャベルを入れるたびに土と球根を分別しなくてはならず、なかなか捗らない。私は数年かかって、それまで母がほったらかしにしていた庭のクロッカスやチューリップ、ヒヤシンスや水仙などの球根、それに取ってもとってもしつこく出て来る「ヤマイモ」を、根気よく退治したのだが、それでもまだ根治していないようで、たまにヤマイモの小さな葉が出ているのを見つけることがあり、植物のケナゲな生命力にはほとほと参ってしまう。今年は薔薇と栗の枝を払ったので、それを1メートル程度の長さに切って束ね、ゴミの日まで栗の木の根元に立てかけておいた。赤い鬼灯の実はかわいいのだが、このままにしておくと来年根と実の両方から増えるので、引っこ抜いてゴミ袋に回収しなくてはならない。毎年秋は庭仕事に追われるのだが、植物が片付けられてきれいになっていく庭を眺めるのは楽しい。私は母と違って、庭に花など咲いていなくても一向にかまわない。木だってさくらんぼと栗だけで十分だ。花よりも一面芝生のほうがすっきりすると思うのだが、聞くところによると、芝生も管理が大変なのだそうだ。何につけ手入れは必要なのだから、こうして黙々と冬支度に励むしかない。そういえば昨日の朝、雪虫が飛んでいた。もうじき雪が降るだろう。冬タイヤへの交換も予約しなくては。

  November 1, 2012

• あわて者

  先週末のこと。店を閉めて家に帰り、ほっとして服を着替えていると、留守電ボタンが点滅している事に気が付いた。母方のE子叔母からで、母のすぐ下の妹（私の叔母）の訃報だった。「お通夜は身内のものだけということで、今日の夜6時半からです」時計を見るともう７時だ。寝室に駆け上がって喪服をとり勢いよく下りてきたが、バッグとアクセサリーを忘れてしまった。さらに黒いストッキングを忘れて三度駆け上がり、下りてくると猫が「お腹すいた」と、足にからみつく。ほとんど裸で猫に餌をやり、喪服を着てみると何とウエストがぴちぴちではないか！最後に喪服を着たのは7年前。奇しくも7年前のあの夜は、今夜亡くなった叔母の娘、私の従妹のお通夜だったっけ。それはともかく、時間がない。母に、「M子おばちゃん、亡くなったんだってよ。私、代表して行って来るけど、香典袋ある？お香典、＊万円でいいかな？」と訊くと「2000円でいいんじゃない」ときた。人間も90年以上生きていると、時代をワープするようだ。金額はともかく、香典袋が見当たらない。家人に、「ねえ、一枚しかないんだけど、この一枚に二家族分入れたらだめかな？」と訊くのだから、『この母にしてこの娘あり』だ。きつめの喪服に身を納めながらPCで斎場の電話番号を確認し、ナビ設定してともかく出かけた。香典袋は途中のコンビニで買った。斎場では儀式がすでに終わり、伯父や叔母たちが祭壇の前の椅子に並んで、こっち向いて座っている。私がのぞくと「おいで、おいで」と手招きする。私「E子おばちゃん、お電話いただいたのに連絡しないですみません」E子叔母「お仕事で忙しいんでしょ。よく来てくれたわね」E子叔母夫「おお、来たか。元気か？」私「はい、お蔭さまで」従兄A「あれ、久しぶりだね。どうしてるの。え？店やってる？何の店？」私「薬局に決まってるでしょー」従兄B「ほんと？！」従弟C「どこで？家で？」私「も～うるさいな～。写真撮ったらじっくり話し相手になってあげるからっ。」数え年90歳という叔母の通夜ともなれば、集まる兄弟姉妹もレッキとした後期高齢者であり、甥や姪もそれなりの年令になっているので、まるで老人会のようだ。普段はまったく音信不通なのだが、こういうふうに集まると、一瞬とはいえ年齢を忘れて懐かしい気持ちになるのが親戚というものだ。写真撮影が終わると、後遺症で言語障害のあるM子おばちゃんが、「お母さん、元気？」と、この場に来られない母を気遣ってくれる。喪主である従兄と挨拶を交わしながら、人の流れのままに出口に向かい、クルマに乗って帰ってきた。「おんや、ずいぶん早かったね」と家人に言われて、ハッタと気付いた。お通夜で仏前に手を合わせるのを、すっかり忘れていたのだ。全く私のすることときたら・・・。 あらためて、叔母上のご冥福をお祈り申し上げます。合掌。

  October 22, 2012

• 

  部活

   高校時代、生物部の部活で作成したサンショウウオ（幼生）の顕微鏡写真。本命はカエルの受精卵だったのだが、地学の先生が採取して持ってきてくれたので、手順どおりホルマリンで固定してパラフィン埋没、ミクロトームで切片にし、パラフィンを除いて、ハイデンハインの鉄明礬ヘマトキシリン（化学の先生が調整してくださった）で染色してみたら、とてもきれいにできたのだ。これは写真が趣味だった物理の先生が、顕微鏡写真に撮ってくれたもの。写真の劣化で見えなくなってしまったが、右側には眼杯とレンズがあって、脊索もはっきり出た会心の作だった。球形の受精卵は切片にしたとき、希望する断面が出るかどうかがわからないので、高校生にとっては難しかったと思う。当時の私は高校二年生。授業の合間や放課後はもちろん、春休みから夏休みまですべてたった一人で、受精卵の永久プレパラート作成作業に熱中してすごした。一番苦しかったのは、ミクロトームの歯の切れ味が悪く、きれいな切片ができなかったこと。そんな時は校舎の屋上に出て、風に吹かれながらよく泣いた。顧問の先生は私に指導なさることはなかったが、そんな私を見ていてくださったのだと思う。私の知らぬ間に、歯の研磨を業者に頼んでいてくださった。しかも二度や三度ではない。パラフィンの溶剤として、プロパノールやブタノールを湯水のように使ったが、試薬類の使用はとても自由だった。私はこのミッションスクールで、自分の好きな活動を好きなように、自由にできただけでなく、自分でやり始めた事への責任感、黙々と続ける忍耐力、やり遂げた時の喜びを、同時に育み教わったと、支えてくださった先生方への感謝とともに、しみじみ思い出す。

  October 2, 2012

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  手作り石鹸

   初夏に作った石鹸たち。左からオリーブオイルだけのプレーンなもの。真ん中前はヨーグルト・パウダー入り。向こう側の大きめのはココナツパウダー、ブルーはペパーミント入り。どれもベースにはオリーブオイルのみを使っているが、ココナツパウダーを入れたものは真っ白になってとてもきれいにできあがった。青色は色素がちょっとダマになってしまったが、ミントがさわやかで夏の入浴にはとても気持ちが良い。いずれもシャンプーとして使えばリンスが不要だし、顔を洗ってもつっぱらないし、もう20年以上愛用している。他に竹炭入り、ゴートミルク入り、紫根入り・・・とさまざま作ってみたが、一番好評だったのがヨーグルトパウダー入りのもの。泡立ちがいいのだそうだ。

  September 23, 2012

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  アサリの子

  親指の爪ほどの可愛いアサリ。「食べるの、かわいそうね」と言うと「育てるか？」だって。

  September 20, 2012

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  TAITU の食器

  食器を買った。直径２１センチほどの、おしゃれな楕円形のボール。ちょっといびつに作られているので、重ねてもきちんと収まらないのだが、ビビッドな赤い唐辛子が気に入った。右下は、ひっくりかえしたもの。外側にもびっしり赤唐辛子。大型なのでパスタはもちろん、どんぶりとしてラーメンや蕎麦にも使えるので思いの外重宝している。「赤色」について、中国の古代医学書である《黄帝内経素問・金匱真言論篇》には、「南方は赤色、入りて心に通じ、竅を耳に開き、精を心に蔵す。・・・その味は苦・・・」と記されている。赤はまた、「喜」にも通じる。余談だが、養＊酒のCFで「男性は８の倍数、女性は７の倍数で身体が変化する」と言っているのは、上記《黄帝内経素問》の「上古天真論篇」に基づくものだ。

  September 15, 2012

• 間違い電話

  朝、店の留守電に伝言が入っていた。「K子、A（道東地方の地名）の母さんだよ。こんにちは。暑くてね。大変ね。からだがこわいから、気をつけてね。頑張ってね。みなさん、元気でおるかい？お盆にね、遊びにおいでねー。どうもありがとう」と言って、切れた。　私の母は、この「母さん」のようなあたたかい言い方はしないな、と思った。　それは私も同じだ。私と母だけかもしれないが、仕事を持つ母親にとって盆と正月の休みはたまった家事をこなす好い機会でもあり、息抜きでもあるから、自分の事で精いっぱい。人を招じてもてなすという「心のゆとり」がないのだ。ところがこの「母さん」は、嫁いだと思われる娘の帰省を促し、鶴首で待っている。　ちょっとうらやましい間違い電話だった。＊「からだがこわい」は、「疲れる」「しんどい」という意味の北海道弁。

  August 1, 2012

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