|
テーマ:好きなクラシック(2326)
カテゴリ:オペラ・音楽
突然ですが、皆さん、『ジョコンダ』というオペラをご存知ですか?えっ、知らない。あなたは、人生の何%かの損をしています。コンマ何%でしょうが・・・。 では、バレエ曲、あるいは管弦楽曲で有名な『時の踊り』という曲はご存知ですか?曲名を知らなくても一度耳にすれば、誰でも知っているような有名な曲ですが、、実はこの『時の踊り』は『ジョコンダ』の中に登場するバレエ曲なのです。 さて、私はこの『ジョコンダ』というオペラが大好き!というか、あらゆるオペラの中で一番好き!!そんな私の、このオペラに対する思いはこんな感じっ このオペラとの出会いや、このオペラのあらすじなどはフリーページの方に書き込みましたので、そちらをご覧頂きたいのですが、とにかく、美しい曲、素晴らしい歌の数々。胸をえぐるようなメロディが、聞くものを感動の渦へと引き込んでゆく、そんな作品です。 ただこの作品、主役を張れるようなソリストを6人用意しなければならないし、バレエもあるなど規模が大きく、難しい作品なため本場でもなかなか舞台に乗らないことから、いまいち有名な作品に比べると認知度が低いものとなっているんですね。これまでにもCDはある程度は出ていました。(難しいだけに立派に歌える歌手を揃えて録音も臨まれるので、演奏はどれも水準の高いものです。)しかし、映像となるとなかなかなく、これまで私の知るところではウィーン国立歌劇場のライブ録画のものだけ。この映像も非常に舞台は写実的で豪華。歌手もE・マルトン、P・ドミンゴと万全。水準の高いものでした。(このライブも、実はウィーンでは何十年ぶりかの『ジョコンダ』公演だったのだそうです。)やっぱり、バレエもあるし、余り有名でない作品は映像と共に見聞きしたいものですよね・・。 それが出たんです!『ジョコンダ』のDVD!!!これは大事件ですっ。(私にとって) 今日は出張。その出張先での休み時間中に近くのCDショップへ。一応曲がりなりにもクラシック専門のブースが設置されていて、品揃えもその辺のCDショップに比べても多いほうです。 で、DVD売り場へ。しばらく、ショップめぐりをしていなかった私はまるで浦島太郎にでもなったかのよう!こんなに魅力的なオペラのDVDが数多くリリースされていたなんて!!噂の高音テノールフローレス主演での『セヴィリアの理髪師』や、先日のボローニャ歌劇場来日でもやったのと同じ演出による『連隊の娘』、噂の美声と美貌のソプラノネトレプコと美声と情熱のテノール、ヴィリャゾンのコンビ(ヴィリャゾンはいまや大人気のテナーですが、顔は、、美男子とは言いません・・。だって、あまりにMr.ビーンにそっくりで・・・。)の『愛の妙薬』、さらには昔テレビなどで放送はあったものの商品化ベースに乗らなかったものまで多くの映像がDVD化!!うひょ~んっ!魅力的すぎっ! と、目に飛び込んできたのが「La Gioconda」!! うひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょ~ これは買わねばなるまい!買わなきゃ一生損をする、一生、悔いて終わる・・。でも、お金が無い・・。至急、かみさんへ。 いやぁ、持つべきものは理解ある愛すべき妻私が、どんなにか『ジョコンダ』バカかというのを良くわかってくれているだけあって、「買っておいで」 もう、私、仕事が終わったら真っ先にCDショップへ何も迷わず『La Gioconda』を手に取り急いで帰宅!早速、視聴!!しかし、160分あるディスクなので美味しいとこ取りで見聞きしました。(といっても20分くらいしか飛ばしていないので、ほぼ全部鑑賞しました) このディスクは2005年のヴェローナ野外劇場でのライブ録画。ヴェローナ野外劇場でのオペラ上演は夏の風物詩の音楽祭として有名。野外の巨大なステージを生かして『アイーダ』などスケールの大きなものを取り上げるのが一般的。(日本でも過去『アイーダ』『トゥーランドット』で来日。代々木体育館で公演していました)『ジョコンダ』も決してスケールの小さな作品ではないので、ヴェローナの舞台になじまないわけではないのですが、これまで、やありヴェローナでも上演された回数はあまり多くはないようです。 まず、特筆すべきはDVDの出来。録音、録画とも、まあ新しい技術を使っているわけだから汚い事は無いと思うのですが、非常にクリアで歌手達の分厚い声を十二分に捉えた録音も満足の行くものです。また、これまで、野外という事で膨張気味に聞こえていたオケの音もしっかりと深く厚みのある音で録音されており、聞き応え充分。指揮はドナート・レンツェッティ。なかなか正統派の指揮で、歌に寄り添った指揮で非常に聞きやすかったです。オケを主張させるところはしっかりさせていたし、オペラ指揮者として申し分は無かった気がします。 歌手陣はやはり、本場イタリアの野外の劇場という事で、特別立派な声の持ち主を集めたのでしょうが、いやはや、最近では珍しい。ビックリするほど厚い声を持った歌い手を集めていました。 タイトルロールのアンドレア・グルーバーは、先日のサントリーホールオペラ『トゥーランドット』でもタイトルロールを歌い、近年のドラマティックソプラノを代表する歌手です。この手のソプラノにありがちな巨体でもなく、その巨体の為に叫び声に近いような発声をするでもなく、非常に力強い歌唱で聞かせてくれます。周りの歌手がほとんどイタリア系のようでしたので、時折異質な感じを受けなくは無いですが、この役を見事に歌い自分のものにしていました。恋人エンツォ役はマルコ・ベルティ。この人、イタリアではすごい人気なのでしょうか、有名なアリア『陸と海』を歌った後のブラヴォーの嵐。他の歌手も同等の水準で歌っていたにもかかわらず、彼に対する拍手が一番多い。歌いだしの頃は声の選の細い歌い手だと思っていましたが、幕が進むにつれ尻上がりに良くなり安定した歌い口。エンツォの恋人だったラウラにはイルディコ・コムロージ。この人はまた深く安定した声のメゾで、美人でもあり見聞きして心地よい人でした。彼女とグルーバーの女性同士の喧嘩(?)の二重唱の激しさは聞き応えあります。表現がまだ物足りないので、きっとこれからの歌手なのでしょう。彼女の夫の異端審問官アルヴィーゼは日本ではおなじみ、カルロ・コロンバーラ。この人は明るくも深い、典型的なイタリアのバス歌手と言った感じで、安定した非常に美しい歌を聞かせてくれます。姿も丹精。悪役バルナバはアルベルト・マストロマリーノ。この人も昨年のフェニーチェ座で来日。声はとにかく大きく体躯もそれに比例しているので、存在感はありそうでしたが、役の掘り下げや歌唱がかなり粗く、全出演者の中ではいまいち印象に欠けてしまった感じ。同じ声種だから厳しいわけじゃないんですが、結構要な役だけに、難しいのでしょう。ジョコンダの母はエリザベッタ・フィオリッロ。この人は2年前の新国立での『カヴァレリアルスティカーナ』でサントゥッツァを歌った人。高音が要求されていた『カヴァレリア』ではときどき、その高音が音を上に外れて、糸の切れたタコのようにどこに行ってしまうか心配でしたが、『ジョコンダ』では持ち前の低音を生かした深深しい声で魅了されました。 演出も日本ではおなじみ、ピエール・ルイジ・ピッツィ。大舞台を簡素に、しかし効果的に生かした舞台でした。全体的にモノトーンで少し暗く冷たい印象を強調していたのが興味深かったです。圧巻は2幕フィナーレ。敵の軍がエンツォの船を焼きうつ場面では、船の帆に火が放たれ、舞台全体が灼熱の炎に燃えたかのようにヴァッと赤くなるシーン。ものすごい迫力。帆にも本物の火が使われています。特殊な効果をしているのでしょう。もちろん、全て燃え上がってしまうわけでなく、火はキチンと処理されているのですが、やっぱり本物は受ける印象が違います。日本の舞台ではこんな使い方、許可してもらえないでしょうね・・。 長いオペラなので、実際に舞台にかけるとカットも多いのですが、この舞台では従来上演されるときに許されている範囲のカットにとどめられ(まぁ、決して少なくは無いですが)、この曲のよさが充分に満喫できるものでした。特に私の大好きな終幕のジョコンダと、エンツォ&ラウラの三重唱。別れを告げるジョコンダと彼女に感謝する2人の3重唱はあまりの美しさとジョコンダの心のうちにひたひたと感情移入してしまい、涙なしには見聞きできませんでした・・。 ただひとつ、映像の処理はちょっとどうかと思いました。やたらとアップをしたりとにかくカメラアングルを工夫しようとしているのはわかるのですが、動かしすぎ、安定した気持ちで鑑賞できないのがなんとも残念でした・・。 しかし、この『ジョコンダ』という素晴らしいオペラを知るには絶好のソフトが出た事は本当に喜ばしい事です。ただ私が買ったのは輸入盤。日本語字幕盤が出たら、絶対皆さんにはおススメいたします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[オペラ・音楽] カテゴリの最新記事
|