■Dutch Ovenの使い方
ダッチオーブンは、こと調理だけに関して言えば、これほど楽で手間いらずの器具もない。
熱が素材に均一に、じっくり、しかも強力に伝わる。フタをすれば密閉となる。
素材は自分の水分で自分を調理し、油や水を使うにしても極少量ですむ。
だからダッチオーブンで料理すれば失敗がすくない。しかも、おいしく出来る。
密閉であることを利用して自分の水分で自分を蒸し上げる料理など、本当に何もしなくていい。
ただ適切な火加減で熱を送り続ければいいし、その適切さも、他の調理器具にくらべれば随分アバウトだ。
ダッチオーブンの魅力は手間いらずだけではない。更に重要な長所はどんな料理もこれ一つで出来るということだ。
オーブン、煮る、焼く、蒸す、揚げる、燻す、など本当になんでも出来る。
肉などをオーブンで焼く調理方法をローストという。
ロースト・ビーフ、ロースト・チキンといった、ダッチオーブン代表料理がこのローストだ。
ダッチオーブンのもっとも特徴的な使い方が、オーブンとしての利用方法だ。
だったら家のガスオーブンでも同じじゃないかというのは早計だ。違いは気密性にある。
ダッチオーブンの場合、ちょっとやそっとの蒸気では持ち上がらないくらいの重い鉄のフタをしてしまえば 、
鍋の中は空気の出入りの少ない密閉空間になる。
これは鍋の中の水分を外に放出しにくいということなのだ。
だから単に「焼く」ということだけでなく、スチームで「蒸す」という効果も同時に加わり、
材料から染み出る蒸気状のエキスを閉じ込めて調理する。
そのため、直に焼いたときのように表面が硬くならず、芯までじっくり火が通る。ローストもジューシーに出来上がるわけだ。
一般のオーブンとの最大の違いはここにある。
フタの上に熱源を載せることで、上下からの加熱を可能にしている。
ダッチオーブンは基本的に鍋なので、各家庭にある鍋でできることはなんでも出来る。
一般的な鍋の持つ機能は煮る・茹でるだが、これも同等にこなす。いやそれ以上に働いてくれる。
その理由は、やはり熱を全体に均一にまわすという鋳鉄の厚みにある。
例えば小麦粉のルーを使ったカレーやハヤシを薄手のステンレスの一般的な鍋で作ったとしよう。
どんなに弱火にしようとも、時間をかけて煮込むうちに鍋の底のほうが必ず焦げ付いてくるはずだ。
砂糖を使った魚の煮物などでも同じだ。
ところが、ダッチオーブンは底だけを熱したとしても、それが全体に伝わって側面などからも放熱されるので、
一部だけが焦げ付くようなことがまずない。
これは米を炊いてみるとすぐに理解できるだろう。
豆などを長時間煮込むような料理にも向いている。
逆にそうめんやパスタを茹でるような場合は、それほど大きなメリットはないだろう。
熱の保持力にすぐれているから、普通の鍋に比べて圧倒的に短時間で素材をやわらかくし、味のしみこみも早いのが特徴。
また、水をあまり加えずに作れ、素材の味を生かす。本来の味を濃く感じられるから余計な味付けは不要である。
カレー、ポトフなどの煮込み料理や鍋物などには大変威力を発揮する。
「野菜ってこんな味だったんだ」と再発見できること受けあい。
アルミ製ダッチオーブンなら作りおきも可能。
密閉度、蓄熱性が高いダッチオーブンは蒸し器として使うのにも非常に便利である。
スチームといえば普通は鍋に湯を沸かし、その熱い蒸気で蒸籠の中の食材を調理するものだ。
専用の蒸し器を使うにしても原理は全く同じ。
しかしダッッチオーブンなら水を使うことなく、食材そのものの水分で蒸し揚げることが出来る。
密閉性の高いダッチオーブンは無水鍋としての機能も持つ。
重いフタが水分の放出を防いでくれるのだ。
水を使わずに蒸すというと、なんだか底の方だけ焦げ付いてしまいそうに感じるかもしれない。
しかしこれも、厚い鋳鉄の本体が熱を全体に広げてくれるので基本的に心配ない。
比較してみるとはっきり分かるが、ステンレスで厚みの少ない一般的な無水鍋で同じものを調理するより、焦げ付くことが少ないのだ。
シュウマイなどの点心を初めとして、鶏や魚の蒸し物といった本格料理、茶碗蒸し、蒸しパンのようなおやつまで何でもござれだ。
大事な栄養素もそのまま閉じ込めてくれる。
圧巻はロースト・ポテトや焼き芋、皮付きのまま放り込むだけでホクホクになる。
キッチンダッチオーブンには、調理中の様子が見える耐熱ガラス製のフタもオプションで売っている。
キャンプダッチオーブンであればフタの裏側を使って、様々なものを焼ける。
微妙なカーブを描いて円状になっているフタは面積もあり、12インチサイズのものなら数人分のベーコンエッグを
一度に作ることも可能だ。
キッチンダッチオーブンはフタの裏側に水滴を均等に落とすためのの出っ張りがあるので無理。
丁寧に使い込んできたものでは、目玉焼きくらいなら油を使わずに調理できる。
分厚い鉄だから熱の回りも均等で一箇所だけ焦げるようなこともない。
厚みはあるけれど中まで火を通したいハンバーグなどを焼いてみると、能力の高さも実感できるはずだ。
パンケーキなどは表面の焼き色がきれいにつくので、とてもおいしそうにできあがる。
時間と手間がかかるイメージのある燻製も、ダッチオーブンなら驚くほど手軽で短時間にできてしまう。
専用のスモーカーがなくても、チーズや一夜干しなどの簡単な燻製ならダッチオーブンでも可能。
火にかけて煙が充分にでたら、あとは、そのまま置いていくだけ。
蓄熱性と密閉性が高いダッチオーブンならではの使い方。
文字通り油を使う揚げ物だ。ダッチオーブンはこれも大得意。
純和風に天ぷらなどを揚げても、カラッと上手にでき上がる。
これも、温まるのには時間が掛かるが一度熱を蓄えてしまえば冷めにくいという、厚い鋳鉄の効果だ。
いくら熱した油であっても食材を入れれば一時的に温度が下がるが、ダッチオーブンの場合はその下がる幅が狭いか、
元の温度まで回復するのが早いだろう。
日本の天ぷら専用鍋も例外なく肉厚になっている。
あまりサイズがあると事後の油の処理が大変なので、小さめのキッチンダッチオーブンか、
コンボクッカーあたりで試してみるといいだろう。
強めの火での揚げ物も当然得意だが、真価を実感できるのは低温の揚げ物だ。
是非ためしてほしいのが、フライドチキン。ダッチオーブンでつくると、実に簡単にとびきりおいしいフライドチキンができる。
例えば二分の一の割った鶏を、時間をかけて揚げてみよう。
骨までバリバリと食べられるくらいやわらかなフライドチキンができあがる。
これも一定の温度をキープしやすいからこそできることなのだ。
仕上げにフタをはずして余計な水分を飛ばせば、中はジューシなまま、表面はカリッとクリスピーな仕上がりに。
ふつうの鍋で揚げると、熱の通り具合と衣のやけ具合を両立させるのは難しいが、ダッチオーブンなら簡単に出来る。
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