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水彩画紀行 スペイン巡礼路 ポルトガル 上海、蘇州   カスピ海沿岸からアンデスの国々まで

巡礼路で出会った人々

スペイン巡礼路800kmは、1000年の歴史を持つ古道。

20km毎に無料かこころざしで泊まれる宿が完備。

道には黄色い矢印があり、地図なしでたどれる。

この巡礼路の楽しみは、日々何が起こるか予測できないこと。

さまざまな出会いがあり、ハプニングがあった。

これが観光地のひとり行脚では味わえない歓びだった。


スペインを旅すると、昼の午後は小さな村だと全く人影が絶える。

スペインの地方には、花にあふれた宝石のように美しい小さな村がある。

昼飯を食べようとわき道にそれて立ち寄ることもしばしば。

しかし、人影は全くない。

店はすべて閉まっている。

シェスタという食後の午睡の時間。

しかし、この食後の午睡の心地よさを味わって以来、

食後すぐに働く国にいるのがほんとうに苦痛になってしまった。

食後3時ごろまでの午睡の心地よさには副産物がある。

スペインの夏の夕暮れは9時ごろまで明るい。

長い美しい夕暮れをすっきりとした至福の気分で味わえる。

三々五々家のそばの腰掛けに座っていて

みな夕暮れの乾いた涼風に吹かれている。

何もしなくてもいい。

これこそ無為の中の幸福感。

幼い子供が無心に嬉々として笑う、あの感覚。

地平線まで続く麦畑の道なら大きなオリーブの木陰でみな憩っている。


谷あいの巡礼宿なら、渓流に足を浸して憩っている。


切り株に座って瞑想にふけっている美しいスペイン娘もいる。


ある時は、葡萄棚の下に集まって憩う大家族がいた。

たくさんの笑顔に呼びとめられた。

東洋の異国からはるばる来た巡礼者が珍しかったか、

招かれて座り込んだ。

葡萄棚の下で

片言だけど、身振り手振りで会話がはずむ。

「お茶を飲む?」と言われて、つい

「ワインがいい」と答えた。

誰かが倉から秘蔵のハウスワインをもってきてくれた。

とても、うまい!

こうなると、お返しをしなくてはならない。

お礼に家族全員の絵を描きおわる頃には・・・・・・・。

2本目が空になり、すっかり酩酊状態。

次の巡礼路の宿で会おうと言う巡礼者仲間との約束などもう忘却の彼方。

今日の目的地は、どこだったっけ?

と、もう開き直っていた。

巡礼路にはいくつか名物の美味しい町がある。

なぜか内陸の巡礼路にタコが名物の町があった。

知らずに町を散策していたら、顔見知りの巡礼者がみな集まっていた。

大声で呼ばれて、まあここに座れと席をあけて

麦酒やタコを馳走してくれる。

大鍋でゆがいた大きなタコの足をはさみで切って木の大皿に山盛り。

岩塩とオリーブオイルをかけて食べるだけ。

これがいくら食べても、とめどなく美味しかった。

お返しに大皿山盛り1000円を何度も追加注文するが

すぐに空になってしまった。

笑顔の似合ういい仲間と美味しい料理と酒。

巡礼路ではしばしばこんな至福の午後があった。


最後にたどり着いたフィニステレと言う西の果ての町は

浜辺での鰯の塩焼きが名物。

やはり日焼けした巡礼者たちに声を掛けられた。

「いわしをたべないか?」

ちょうど、一枚港の絵が出来た時だったのでどっかり座り込んだ。

スペインの地元の若者もテーブルをくっつけて話に加わる。

スペインの大学生は日本のようにすぐに大企業には入れない。

年取った経験者に比べてまだ未熟だと評価されて職がなかなかない。

企業に優秀な人材を教育して次の時代につなぐという観念がない。

そんな国柄の違いを語っては、いわしをほうばった。

黄昏が深まる頃にはすっかり麦酒の酔いに染まっていた。


スペイン巡礼路の旅の最大の良さは、

ガイドブックに記載されてない出来事が待っていること。

日々何が起こるか予測できないこと。

絵は、その西の果ての町の夕暮れの港「フィニステレ」

船


   




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