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2003/03/12(水)01:22

俳句の楽しみ方

私は、どこからから聞こえてきた音楽が,誰の何という名前の曲かわかるまでの感動が好き。人はブラームスの何と種が知れるとわかったような気になって安心してしまう。本質は、だれの曲だったか思い出せないもどかしい時の感動にあるような気がする。したがって、人の句を、生い立ちを調べ立てたり横にしたりするのは、理解が深まることはあるが一般には解ったような気がする分だけ感動が消える。もともと原体験が違うのだから、どんな名句でも共感するとは限らない。できるだけ名も知らぬ人の句として直截的にそれに感動する。そして感動したらどこまでその本質を理解したか、自分の言葉で創作力を競いあって楽しむ。能村登四郎さんの結社「沖」には、素敵なお弟子さんがたくさんおられた。その中の一人鈴木鷹夫氏の句集は自分流の俳句の作り方をきちんと守っておられる方だった。句集を読んでいて好きな句がたくさんあった。どうしたら、このようにうまく表現できるかを一生懸命考えてみた。この時だけは、俳句を縦にしたり横にしたりして分析してみた。私なりの分析結果を、紹介してみます。みなさんも、これに習って俳句を作ってみると、いい句が浮かぶでしょう。基本的には,多くを語らないこと。読者が情景に思いめぐらす余地を開けておくこと。そうすると、自ずと余情がふくらむ名句となるでしょう。 右側は、それにヒントを得て、実作を試みた僕の習作やコメントです。           1) 食べ物と, 場との組み合わせで情景を限定する。               東京に鴨の来る日の塩煎餅   → 句ができるまでの静けさ紅梅茶        沖に雨烟れる鰺の叩きかな         川桟敷鮎ひとりづつ配られる        葛切りをほめたる街の夕日かな       塩昆布ワープロを打つ背に毛布        白桃の冷ゆるを待ちて方丈記         あんこう鍋はこび畳のなりにけり         雨かくも細くて杣の貝割菜         どぶろくや炉に七人の膝頭         鮎三匹皿によりそう細月夜                2) すれちがった人, いあわせた人に場を語らせる                  だんまりの客ゐてつひに雨月かな   → 落胆        山の地図に三人額よせて秋      → 心のはずみ        踊り子のほてりが過ぎぬ杉の闇    → 艶         風連れて竹生へ渡るみ水仙売         夕蝉の老人けむるごとくかな         牡丹見る人それぞれの日暮れかな                 3) 音を見逃さない。                  遍路杖倒れてひびく稲の花         昼酒の利きや湖北に竹伐る音         厠もるだれかのくさめ杉の花         風呂吹きの残りがさめて鳰の声         伊賀線がひびきてとおる寒雀                 4) 色, 光, 烟を活かす                  大津絵の朱の美しき寒暮なり         藁灰の芯のくれない北近江         水無月の戸の隙間より弥陀明かり         凍鶴へ何処よりくる薄烟                 5) 所作で何かを語らせる。自然体の生活感覚                 寒灯の下の落雁まだ食はず   → 寒さ         冬ゆうやけ頬杖をもうはづさねば → 長い時間の経過        杖の顎のせてみ雀の恋見おり   → 退屈さ, 老い        仰ぐ時人は瞬く杉若葉      → 空のまぶしさ        花桐や朝刊の香を脇ばさみ    → 爽快さ         夏惜しむ目を惜しめよと遠峰雲                 6) 発生した小事に別のものを語らせる                  受付を濡らして秋の山の雨         琴爪のしまいわすれてある寒さ         落石の車道にひとつ閑古鳥         鈍行のなかなかたたぬ花の駅                7) 想像         鴨の羽拾へば天に羽搏つ音                 8) 簡潔な表現                  追伸に漬梅のこと叔母のこと         枯葎日も簡潔をきわめけり         老梅の一途の白のけぶるかな         欝の日は欝をたのしむかいつむり     どうですか。自分でも俳句を作ってみたくなりませんか。

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