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ある日ぼくがいた場所

3-1 LV3の始まり


LV3の始まり

 
「もう、近くまで来たんだ」
「だいぶ数は減ったが、予想より遙かに多くの数が生き残れた」
「1億か。すごいね」
「脱落した9億の内、半数以上がすでに飛んでいる」
「成功率は?」
「10万分の1前後になると予測されている」
「そう・・・」
「覚醒のタイミングは、任せる」
「本星の方はどうなったの?」
「すでに消滅した太陽系外に脱出した同胞達が自己凍結した状態で合図
を待っている」
「私次第というわけ?」
「そうだ」
「期限は?」
「既に飛んだ者達は1、2週間以内の者が多い。自己凍結している者達は
数ヶ月から半年程度までは保つだろう」
「初和が産まれるまで大半は保たないか」
「厳しいだろうな」
「まず最低でも4、5億か」
「人類には申し訳無いが、これも定めだろう」
「移住目標設定に変更は?」
「無い」
「じゃ、予定通りに」
「心得た」

 中目零那は、同胞との通話を終えると、和久と良子の元へと瞬間移動
した。
 南国のコテージで幸せそうに寄り添って寝ている二人の側に行き、し
ばしその寝顔に見入った後、二人の額に手をかざし、何かをつぶやいた。
 和久と良子の額に淡い光が溶け込むのを見届けると、中目は二人を皇
居の和久の寝室に転移させ、自らも別の場所へと転移した。

 次に現れた寝室には、零那と同年代の女性が安らかな寝息を立ててい
た。その膨れた下腹部に手をかざすと、やはり淡い光が溶け込んで消え
ていった。

 中目はそんな風に、候補者の間を回って、彼らの移住を受け入れる為
に必要な処置を施していった。

 その翌朝、日本では、行方不明になっていた筈の天皇、和久が伴侶と
共に自室の寝台で発見されて大騒ぎになった。
 侍従達が二人を起こそうとしたが、大声をかけても揺すっても目を覚
ますことはなかった。
 皇室付きの医師達が呼ばれて診察したが、肉体的には全く健康な状態
だった。
 その知らせは大きく報じられたが、同日中に、似たような症状が全国
で数十例、全世界で数百例確認された。
「眠り病」と称された症状に陥った人々の数は、日を追う毎に増えてい
き、わずか1週間の内に数億人が床に伏したまま目覚めない状態になって
いるのが確認された。

 全世界で7、8人に1人は眠りについたまま目覚めない状態になれば、
パニックが起きるのは必至だった。
「眠り病」の第1、第2症例となった日本の天皇とその后を見舞った首相
も、公邸に帰りついてから同じ症状に陥った。
 抽選議員副議長の中目零那はその夜、緊急記者会見を開き、LV3の到来
を告げた。

 世界各国政府も国連もWHOも、相次いで非常事態宣言を布告したが、あ
まり意味は無かった。
 「眠り病」に陥る人の数は増え続け、中目零那のLV3到来宣言から3日
後までには、人類の99.9999%近くの人々が眠りから戻れなくなっていた
から。
 向精神薬や不眠剤などを飲んで何とか回避しようとしていた人々のほ
とんども、眠りに引きずり込まれていった。

 そして日本の国会の全ての選挙議員が眠りから戻らなくなった朝、中
目零那は首相代行として国政を預かる事を宣言し、同時に、恒和天皇と
その后の崩御と、相子内親王の践祚(せんそ)と即位を発表した。

 その頃、日本で動いている人は1000人未満にまで減っていた。


<続く>
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