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ある日ぼくがいた場所

ジョン・トーレ監督

2000-10-27

World Series NYYankees-NYMets
Game 5


2対2の同点で9回表2アウトまで進んだ試合は、
無走者の状態から
ヤンキースが2点を勝ち越した。

バックホームの送球が滑り込んだ走者の足に当たって
1塁側ベンチに転がり込むという不運もあった。

かつてヤンキースに所属していたメッツのラルダー投手は力投の末、
勝ち投手の権利を無くしてベンチへ下がった。
通算成績を1勝3敗とされて後が無くなっていたMetsのファンも、
彼らのエースを拍手で迎え入れた。

ベンチで目をうるませまい、うつむくまいとするラルダー投手に、
バレンタイン監督が正面から向き合い、腰を落として、
彼を見上げるようにして言葉をかけていた。

そして9回裏2アウト、
ランナー3塁という局面まで試合は進み、
4番のピアザに打席が回る。

ヤンキースの監督の表情は相変わらず無表情。
ベンチの奥に座ったまま。
いつも不機嫌なように見えるのだが、
メジャーリーグ3連覇目前でも普段と全く変わらない。

そしてピアザの打球はセンターを越えるかに見えたが、追いつかれる。
捕球したセンターは、膝をつき、うつむいて神に感謝の祈りをささげる。

マウンド上で喜びを爆発させるヤンキース選手達に向かって
無数のフラッシュが閃く。

静かにベンチに戻るピアザのヘルメットには、
その閃光が瞬いていた。

カメラがヤンキース選手達の喜びを映し出すが、
どこを探しても監督の姿はない。
他のコーチ達はグラウンド上で選手達と抱擁を交わしていたのだが。

しばらくしてマウンド上からカメラが切り替わり、
ベンチ前で誰かに肩車されているジョン・トーリ監督が映し出された。

誰かに腕を持ち上げられるようにして、
弱々しくスタンドに向かって腕を振っていたが、
その指が目の下をこすった。

雄たけびや、
満面の笑顔ではなく、
ただあふれてきてしまう喜びの涙を、
あふれる度に静かにこすり取っていた。


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