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ある日ぼくがいた場所

重し

2004年7月5日 20時2分
会社から帰宅中にそれは起こった


電車が東西線茅場町駅に停車した時
一つ先の門前仲町駅で人身事故
いわゆる
飛び込み自殺があった

しばらく車内で待ってみたものの
動き出す様子が無く
日比谷線で秋葉原に向かい
御茶ノ水までJRで戻ってから
総武線快速に乗り換えて西船橋駅まで行き
そこから逆方向で西葛西に回る事に決めた

その乗り換えた日比谷線の車両の中で
一枚の吊り広告の宣伝文句に目がいった
「泣ける映画・小説特集!」
と書いてあった

電車は動き出し
私はまた考えた

人身事故が発生したと聞いても
その人は即死だったというアナウンスがホームに流れても
周りにいた人で泣くどころか
悲しげな顔をした人は一人たりともいなかった

その車両に留まっていた間
行き交った300人以上の人達の内
泣いた人は
0人
0%
0/100ではなく
0/200とか0/300
私が直接見た中だけでも


おそらく
今夜の自殺で帰宅時間を狂わされた人の中で
彼だか彼女だか知らないが
死んだ奴の為に泣いた人は
ゼロではないかと思う
それが
1000人であったとしても
10000人であったとしても

例外があるとすれば
その場に居合わせてしまった人達の中の
極一部ではないかと思う


哀れ
何という命の軽さよ

一人が
ほんの数百メートルか
数キロ先で
たった今死んだばかりだというのに
泣く人の数は
限りなくゼロ

みんな誰かに電話したり
メールを打ったり
振替輸送の経路を確かめるのに大忙し
自ら死んだ奴の為に
泣いてる暇なんて持ち合わせて無い
自分自身を含めて

秋葉原駅で降りた後
私は予定を変えて
駅の出口すぐそばにあったスパゲティ屋に入って
これを書いている
スパゲティの味は可も不可も無く
セットのサラダの味の方が印象に残っている


人の命は地球よりも重いと唱える人よ
ほんの少し離れた場所で
たった今一人の命が失われたと聞いても
誰も涙を流さなかった理由を教えて下さい

手首を切ったり自殺未遂を繰り返して自慢している人達よ
そのまま勝手に死んで下さい
少なくとも私はあなた方の為に涙しません

電車に飛び込もうと考えている人よ
どうぞ他の場所で
他人に迷惑がかからない方法で逝って下さい


命は
尊いかも知れない
ただし
それは
命を尊いと考え
大切にする人々の間でだけ
尊いのである

自分の生死を弄ぶ人達へ
勝手にどんどん死んでいって下さい
私は止めませんし
あなたの死に涙もしません
とりあえず人に迷惑がかからないようにだけ
注意して下さい

 
さて
私は帰ります
おそらく御茶ノ水から西船橋
西葛西へと大回りして

そういえば
つい最近も似たような経路で帰った事があった
その時は
ビニール袋が架線にかかったからだった

そして
なるほど
と得心がいった

人の命とは
風に舞うコンビニの買い物袋並みに
軽くもなるのだ


だから私は
しっかりと中に
重しを入れておこう

勝手に飛んでいかないように
風にさらわれて
列車のホームに
飛び込んだりしないように


2004/7/5
秋葉原の「たらこ屋」にて
カシスグレープフルーツを飲みながら

2004/9/13 改編


元の状態
2004年7月5日 20時2分 会社から帰宅中にそれは起こった。


 電車が東西線茅場町駅に停車した時、一つ先の門前仲町駅で人身事故、いわゆる飛び込み自殺があった。
 しばらく車内で待ってみたものの、動き出す様子が無く、日比谷線で秋葉原に向かい、御茶ノ水までJRで戻ってから総武線快速に乗り換えて西船橋駅まで行き、そこから逆方向で西葛西に回る事に決めた。
 その乗り換えた日比谷線の車両の中で、一枚の吊り広告の宣伝文句に目がいった。「泣ける映画・小説特集!」のようなものに見えた。
 電車は動き出し、私はまた考えた。

 人身事故が発生したと聞いても、その人は即死だったというアナウンスがホームに流れても、周りにいた人で泣くどころか悲しげな顔をした人は一人たりともいなかった。その車両に留まっていた間行き交った2,300人以上の人達で、泣いた人は 0人。0%。0/100ではなく、0/200とか0/300。私が直接見ただけで、だ。おそらく今夜の自殺で帰宅時間を狂わされた人の中で、彼だか彼女だか知らないが、死んだ奴の為に泣いた人はゼロではないかと思う。それが1000人であったとしても、10000人であったとしても。例外があるとすれば、その場に居合わせてしまった人達の中の極一部ではないかと思う。

 哀れ。
 何という命の軽さよ。
 人一人がほんの数百メートルか数キロ先でたった今死んだばかりだというのに、泣く人の数は限りなくゼロ。
 みんな誰かに電話したり、メールを打ったり、振替輸送の経路を確かめるのに大忙し。自ら死んだ奴の為に泣いてる暇なんて持ち合わせて無い。自分自身を含めて。
 秋葉原駅で降りた後、私は予定を変えて、駅の出口すぐそばにあったスパゲティ屋に入ってこれを書いている。スパゲティの味は可も不可も無く、セットのサラダの味の方が印象に残っている。

 人の命は地球よりも重いと唱える人よ。
 ほんの少し離れた場所で、たった今一人の命が失われたと聞いても、誰も涙を流さなかった理由を教えて下さい。

 手首を切ったり自殺未遂を繰り返して自慢している人達よ。
 そのまま勝手に死んで下さい。少なくとも私はあなた方の為に涙しません。

 電車に飛び込もうと考えている人よ。
 どうぞ他の場所で他人に迷惑がかからない方法で逝って下さい。


 命は尊いかも知れない。ただしそれは命を尊いと考え大切にする人々の間でだけ尊いのである。

 自分の生死を弄ぶ人達へ。
 勝手にどんどん死んでいって下さい。
 私は止めませんし、あなたの死に涙もしません。
 とりあえず人に迷惑がかからないようにだけ注意して下さい。

 
 さて、私は帰ります。おそらく御茶ノ水から西船橋、西葛西へと大回りして。つい最近も似たような経路で帰った事があったが、その時は、ビニール袋が架線にかかったからだった。

 なるほど、と得心がいった。
 人の命とは、風に舞うコンビニの買い物袋並みに軽くもなるのだ。
 だから私はしっかりと中に重しを入れておこう。
 勝手に飛んでいかないように。
 風にさらわれて列車のホームに飛び込んだりしないように。


2004/7/5 秋葉原の「たらこ屋」にて カシスグレープフルーツを飲みながら


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