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カテゴリ:書き物的なモノ
昨日くらいから、小泉首相の国連安保常任理事国入りの報道が盛んになっている。
だが、日本が常任理事国入りをして、何ができるのか? そもそも、何が目的で理事国入りを目指しているのか? 国連のアナン事務総長は、「世界の至る所で法の支配が危機に直面している」と冒頭演説した。小泉首相が常任理事国入りの演説をしたのと同じ総会だ。アナン事務総長は、戦後の混乱が続くイラクなどを例に挙げながら、罪のない人々の生命が奪われている惨状について警告したらしい。 アナン事務総長は、常任理事国枠の拡大を含めた国連改革に前向きな姿勢らしい。日本の常任理事国入りは、あくまでもその中の一要素として捉えていると思う。ドイツ、インド、ブラジルなどと同列の存在として。 もちろん日本単独でも国連経費の20%、ドイツと合わせれば30%を負担しているらしいので、発言権はもっと認められて良いかも知れないし、旧敵国条項の削除などに関しても常任理事国入りは有用かも知れない。 しかしながら、単純に日本の常任理事国入りに賛成する人々に問いたい。 果たして日本が既に常任理事国入りしていたとして、米英のイラク開戦を止めたであろうか?反対という立場を取ったであろうか? 答えは、否である。 そんな国が常任理事国入りしたとして、現在の米英の暴走に手綱をかけられるだろうか?現実的には、アナン事務総長でさえそんな幻想は抱いていないと思う。 国連改革という意味においては、総会の決議にもっと重みを持たせるべきだというカナダの意見の方が、私にも現実的に思える。 例えば、総会や安全保障理事会の決議に対して理事国が拒否権を発動しても、総会で2/3以上の賛同が得られればその拒否権の発動を却下できるとか、そこまでいかなくとも再審議を求められるとか。 常任理事国が1から10に増えようが、準常任理事国というものが用意されようが、現在の「常任理事国が1国でも拒否権を発動すれば安全保障理事会の決議は採択されない」というシステムの限界は越えられない。 更に言えば、今回のイラク戦争開戦の様に、米(英)は国連決議無しでも独自に開戦し、国連は彼らの行動を阻止又は遅延させる有効な手段を何も持たなかった。 米英以外でも、ロシアは自国の安全の為には他国にあるテロ施設を先制攻撃する事を厭わないと声明を出している。中国も台湾有事などの際には、国連決議など何も必要とせず行動するだろう。 そんな世界の現状において、お題目的に「国際平和及び安全の維持の責任は安全保障理事会に」負わされているのだ。(国連憲章第24条) 国連加盟国から負わされたその責任に於いて、安全保障理事会の国々は軍事行動を含む行為を採る事ができるというよりは"実際に取る事を求められている"のだ。だからこそアメリカも、日本が常任理事国入りを目指すのであれば、同時に憲法の改正をも行うように求めてきているのだ。 小泉首相は、軍事行動でなくとも世界の平和に貢献できるとしている。 だが、どうやって? イラクでの自衛隊の活動は、少なくともイラクの治安改善という意味では、全く役に立っていないし、そもそも彼らは治安維持という名目でイラクに赴いてさえいない。 例えば、現在のイラクにパトカーを贈ったからといって治安は改善されるだろうか?される可能性は0ではないかも知れないが、焼け石に水とはまさにこの事だろう。 「イラクにパトカーを贈ったから治安回復に貢献しました!」と声高に唱える政治家がいるとすればただの阿呆だ。現在必要な事はテロが起こっている原因そのものを除去することであって、パトカーを贈る事ではない。 本気で治安維持に貢献するなら、自衛隊を数万人送って、一地域毎に「武器・爆弾狩り」を行うくらいでないと役に立たない。イラクはまだ普通の警察官の出る幕では無いのだ。もっとも、徹底的な「武器・爆弾狩り」を行ったところで、他のどこかから調達されるだけの事だろうが。 例えばスーダン。難民にテントを送る事を決めたらしいが、問題はその難民キャンプそのものが政府軍とそれに支援されている民兵によって包囲・攻撃されている事である。そうでない黒人系住民も住む場所を追われて国外や国内の難民キャンプへと追われている事である。そんな現実を無視しておいて、「テントを送って難民達に人道的支援を行いました」とは片腹痛い。 私が思う日本の常任理事国入りの目的は、日本海領域の天然資源の中国(や韓国)との折衝において、理事国の中国と(少なくとも国連の場では)対等の立場に立っておきたいという願望があるのではないかと思う。 高齢化や人口の減少など、実質的な国力という意味ではおそらく低下の一途を日本が今後数十年において辿るとするなら、経済大国である現在がその理事国という地位を獲得する最期のチャンスと政治家が思っても不思議ではない。 又、対北朝鮮の拉致問題や有事の際にも、理事国になっていた方が有利かも知れないと思う政治家達がいるかも知れない。 六カ国協議が途切れ途切れにしろ唯一の国際的な協議の場な現状において、常任理事国になったからといって、国連を無視する北朝鮮が今更日本に対して拉致問題の調査を本気で進めるかどうかさえ怪しいものだ。 結論として私は思う。 日本が例え常任理事国入りしたとしても、世界のパワーバランスは何も変わらない。テロの嵐も収まらない。 イラクの治安が改善される訳でも、スーダンの危機が回避される訳でも、北朝鮮がいきなり拉致問題を解決するように態度を変える訳でも、中国が日本海の資源問題で強硬姿勢を変える訳でも、無い。ロシアとの北方領土の問題も何も変わらないだろう。 ただし、なし崩し的に国連の軍事行動に追随する事で、自衛隊員に死者は出始めるだろうが、常任理事国になれたとして、変わるのはそのくらいの事だろう。 日本を常任理事国入りさせた首相として名前を残したい。 小泉首相の本当の動機はそこにしかないと私は思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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