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映像四郎の百人斬り

映像四郎の百人斬り

「復活」

 地下鉄A子ちゃんは、復活していた。



 地下鉄A子ちゃんが、

 正月に行ってた海外旅行のお土産をくれるというので、

 先日、ちょこっと、「顔あわせ」したら、

 最初のころの「いけいけA子ちゃん」に変わっていた。

 どうやら、最近、よたよたしていた、地下鉄A子ちゃんは、

 「素」だったらしい。

 基本的に、地下鉄A子ちゃんは、

 切符のいい「仕切り屋」タイプなのだ。

 最近、やることが、できたので、それに合わせて、

 お薬で「テンション」を調節しているそうだ。

 「爆弾」は、内臓されたままだが、

 「爆発」するまで、走るそうだ。

 途中で、力尽きることは、わかっているが、

 その方が、納得できるらしい。

 ビールの大ジョッキを、お互いにガンガン開けていると、

 地下鉄A子ちゃんが、極度に「無邪気な笑顔」を湛えだした。

 次に、用事があったので、

 さっくり、お開きしようと、

 お互い言っていたのに、

 地下鉄A子ちゃんは、見る間に、

 いつもの、地下鉄A子ちゃんに戻り始めた。

 「無邪気系」から「涙系」、これが、いつもの順路だ。

 口調が、大人から、小学生に移行している。

 妙に、楽しそうだ。

 つまり、スタート地点。

 そして、徐々に「タナトス=死への欲望」に捉われ始める。

 結局、極度の修羅場状態には、陥らなかったが、

 小学生のような無邪気な微笑を浮かべて、

 「しぬもん、しぬもん、しんじゃうもん」

 などと、ハナ歌まじりに、明るく、つぶやかれると、

 どうしようもなく、後ろ髪を引かれてしまうのだが、

 用事があったので、駅に向かった。

 とにかく、電車に乗せようと、画策してみても、

 「へいきだもーん」と、

 困ったちゃんぶりを発揮してくれる。

 地下鉄A子ちゃんは、毎回、

 人格の「トーン」が、微妙に違う気がする。

 さまざまなグラデーションが、存在するのだ。

 しかも、「大人系」と「子供系」の間には、

 断絶があって、基本的に、記憶が流通していない。

 さっき、飲み始めた時に、

 「大人系」の地下鉄A子ちゃんに、

 遺言で、CDくれると、前に、言ってたことを確認したが、

 そんな記憶は、一切存在していなかった。

 「きゃー」

 という感じで、ひとりはしゃぎモードの地下鉄A子ちゃんを

 雑踏の中に残していくのは、気がひけたが、

 仕方ないので、そこで、バイバイした。

 振り向くと、幼稚園児のように、

 ずっと、バイバイ手を振っている。

 やけに、楽しそうだ。

 今日は、やけに歓待してくれるなぁ、と思いつつ、

 今日だけは、「爆発」しませんように、と祈りつつ、

 地下鉄A子ちゃんは、視界から、遠ざかっていった。




 本日、あいかわらず、ハイパワーであることが、知らされた。

 地下鉄A子ちゃんは、やはり、そう簡単には、死なないのだ。




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