蒼の道第十話
オレと華恋が二人を連れて向かった先は、少し古くなってきたけれどまだ人気のある映画館(まぁ場所が人通りの多くある商店街の中心にあるからもその理由だけれども)だった。そこに俺達は、綺麗にされている正面玄関から出なく、少し埃っぽい裏口から中に入る。その間での、クルの質問は「あとで答える」で済ませてしまった。ガチャリドアのノブを俺がまわして中に入るとそこには、映画館の事務所に直でつながっていた。「こんにちわーヨシさん、お手伝いに上がりましたー。」そう華恋が声をかけた人は、日沢義人通称ヨシさん。俺達にいろいろ教えてくれる便利な兄さんだ、余計な教えまで説くのはどうかと思うが・・。「おー華恋ちゃんに、蒼道かぁ・・よく来たなぁ。そのおつれは誰だい?」「俺達の同級生、こっちが小野寺禊ちゃんでこれが観嘉瀬・クルミ・クルフェスっていっておれっちの同居人。」「蒼道こんな可愛いこと一緒に住んでるのか?」「姉貴も一緒だからね最初に言っとくけど・・。」「「はじめまして」」二人の声が重なる「オレは日沢義人・・ヨシでいいから。」「ヨシさん、瑠璃と武弘は?」「もうすぐ一仕事終えて戻ってくるから、そのこたち連れて先に親父に挨拶してきな。」「わかった。」そうして事務所を抜けて廊下に出ると、放映室はすぐそこで第一放映室にいることの多いここのオーナーことヨシさんの親父さんがいる、正直のところ名前は聞いたことがないな。「ねぇ二人はよくここに来るの?」その質問をしたのは禊ちゃんだった・・。オレと華恋は顔を見合わせたあと華恋が答えた。「よくっていうか・・ほぼ毎月に一回は・・夏休みとかになると週に2~3度の割合で来るよね柊?。」「そうだな・・まぁ夏休みとか暇だしな。」「へー・・」「それは全部アオ君と華恋のペアで行ってるの?」正直そうだが、なぜクルは悪意をこめてそういうのだろうか・・。「そうだけど・・あっほらもう挨拶に行くよ。」第一放映室の扉を開けると少し蒸し暑く、中にはパイプ椅子に腰掛けて放映機の横に座っている中年だけれども少し筋肉質のおじさんが座っている。「こんちはー親父さんお久しぶりです。お手伝いに来ました。」パイプ椅子に座った主は、ゆっくりこちらを向いて笑みを浮かべながらこういう。「久しぶりだな華恋ちゃんに蒼道君、今日は一日頼むぞ。瑠璃と武弘は第三上映室でごみの片付けとかしてるから、いってやってくれ。」「はーい」俺達が通る場所にはよく見知った顔の従業員が俺達に挨拶してくる。それにいろいろと返しながら、俺達二人は禊ちゃんとクルの二人に質問をされていた。「なぁ華恋・・お前なんも話してないの?」「うん、ただ柊と一緒に映画館に行くって言ったら。急についてきてさ・・」「あながちお前の言ってることも間違ってないけど・・もう少し説明しような・・それにその時点でオレはその話を知らないぞ・・。」「まぁきにしない気にしない・・。」「なーんかつまんないなぁ・・。」「クル・・お前勝手についてきてそんなこと言うやつがいるか・・馬鹿」「馬鹿って言う人が馬鹿なんだよ・・。」「子供っぽいこというなアホ。」「むー」「ほら二人ともついたよ・・。」そこには放映前の上映室でとても静かだった、そこには二人の人影があった。「おーい瑠璃ー、武弘ー」その二人の名前を呼ぶとひょっこり顔を出した二人はこちらに来た。「やっほー蒼道君~、華恋~元気してた?」「二人とも元気そうだなその後ろの二人は誰だ?」黒い髪をポニーテールにまとめているのが日沢瑠璃でつんつん頭のほうが日沢武弘だ(この二人は双子)二人とも白い作業着を着ている。ひとつ補足しておくが、オレが現在クルより日沢瑠璃のほうが好きで、いまだに告白していないのだ・・そのせいでクルには迷惑をかけているようで・・情けないな。「あぁこちらが小野寺禊ちゃんでこっちの金髪のが観嘉瀬・クルミ・クルフェスていってオレんちの同居人。」「なんか両方とも美人だな・・でかした蒼道。」「あぁこの二人は中学のときの友達でここのオーナーの子供で双子だ。いいやつ等だから仲良くしなよ二人とも・・。」「わかったるよアオ君!」そんでガッツポーズを俺の横でする武弘にオレは毎回毎回同じ質問をする。「なぁ俺達の今回の荷物置き場はどこになるんだ?」「今回は前回と同じ従業員と同じロッカールームを使ってくれ」ここに手伝いに来るのはいいのだけれど、毎回ロッカールームが変わるのだ・・ひどいときは事務所になったりもする。「それじゃ、着替えたらまたここに来るから。」そう言って外に出て行く禊ちゃんとクルはなにやら話しているから俺は、華恋のほうに行って。「今日はオレ瑠璃に言おうと思うんだ。」「あらまそれまた急な決断で・・どうして?」「最近クルやら禊ちゃんやらいろいろあって流石にやるべきことやらないといけないなぁと思ってな優柔不断は好きじゃないんだ。」「んじゃわかったよそれなりに、武弘にも言っておく。あの二人は私が面倒見るから。」「ありがとう良き協力者よ。」そうオレが瑠璃の事を好きなのを知っているのは、武弘と華恋だけなのだ。相談相手にするのにはこの二人が一番適していたから・・。あぁもうすぐ運命のときってやつが来る。