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2018.06.24
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カテゴリ:短編小説
​   (十三)ふたり

 わたくしの考えるところによりますと、ふたりはともに初めてのひとであったわけではありません。むしろお二人には、それぞれにお子さんがあったのではないかと。ぐとくさんはこの越後の地に流罪と決まったとき、泣く泣く妻子を京に残してきた。エイ様の方はどうでしょうか、この地に来ていた地方官と契りを結んでいたとは想像できます。官位などはうかがい知れませぬが、エイ様は都で暮らしたいと思っていたのではないでしょうか。このひとには、こんな田舎暮らしが似つかわしくないように思えてなりません。しかし、不幸にもその夫なるひとが、病気か事故で亡くなられてしまった。こちらも、泣く泣く娘を連れて実家に戻ってこられたということではないでしょうか。

 ぐとくさんから、ふたりの関係を知らされた三善家の当主は、むしろ喜ばしいことだとお思いになった。とはいえ、ぐとくさんは流罪の身、お上の許しがないと住居を変えることができません。また、エイ様がこんなあばら家に住むわけにもいきません。そんなことで、ふたりは通い合うことになるのです。村の人たちは、ふたりの寄り添う姿を、よく見かけることになるのです。はじめはやっかみ半分で悪口を言っていたものも、だんだんにふたりの姿に納得するようになるのです。
 ぐとくさんのうちも少しは手を入れられて、以前より広くなり、法話を聞きに来る人が増えたのです。ただこれは、ぐとくさんの法話をまじめに聞く信心深い人よりも、エイ様の入れてくれるお茶を飲むことを目的として来る人の方が多かったともいえます。





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最終更新日  2018.06.24 14:21:21
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