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当時のトイレ事情は、いまとだいぶ違う。水洗ウオシュレットなどない。場所もレストランや駅、イベント会場に付属しているのでなく、レストランのように独立した場所となっている。男女の別はなく完全個室である。排出されたものはその場で乾燥分解される。そのシステムはここで、詳しく書けないが今とは違うということである。 ミニニはデータをさぐって、それに気づいた。マリちゃんがいまのトイレで用を足すのは無理だ。このAIは、そういう結論を導き出した。マリちゃんは100年の歳月をまだ生理的に受け入れていない。 ミニニは中央情報センタのコンピュータにアクセスして、マリちゃんが使えそうなトイレを捜す。田舎と博物館にしかない。田舎は遠すぎる。センタに連絡して、博物館に陳列されている古いトイレを使えるようにと連絡を入れた。 不謹慎な言い方になるがマリちゃん自身が博物館に展示されてもいいような存在なのだ。 マリちゃんは博物館で用を足すことができた。それからレストランに向かった。100年前のレストラン、注文んを取る、料理を作る、料理を運ぶ、これらはほぼ人間によってなされていた。レジもそうである。当時になると、これらはすべてAIROBがおこなっている。 ミニニは、マリちゃんは少し戸惑うが、そう問題はないと判断した。ただ料理がマリちゃんの口に合うかは判断できなかった。 レストランが混んでいるのかどうかミニニには判断できなかった。それでもあいている席のなるべく端の方に座ることにした。やっぱり目立たない方がいいという判断であった。テーブルにタブレット状のメニューが並んだ。 「どれがええの」 「これ」 「どれ」 マリちゃんはハンバーグを選んだ。 「これか、パンかライスがつくで」 マリちゃんは少し迷ってライスを選んだ。 マリちゃんは料理待つ間水を飲んだ。ノドが乾いていた。 「そや、ジュースいるか」 マリちゃんは嬉しそうにうなずいた。 ミニニはその表情をカメラ目でとらえ、記憶装置にかきこんだ。 料理が運ばれてくると、マリちゃんの顔は一層輝いた。それを一口、口に入れるとほほが落ちんばかりの顔になった。 「うまいんか」 ミニニもマリちゃんの嬉しそうな顔を学習して、そういう表情をつくってみた。 「おいしいよ」 「よかったの」 「ミニニは食べないの」 ミニニは言葉と表情にとまどった。無機質な表情のまま、首を振った。 マリちゃんは悪いことを聞いてしまったかのように黙ってしまった。 店内は賑やかであった。どのテーブルももうすぐ始まるゲームスポーツ話題で盛り上がっていた。 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.10.27 16:12:41
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