わたしのブログ by アンチオーバーロード

2024/08/15(木)07:18

「ヲコ幻想」物語23

物語(120)

㉓ (kaeru)  ああおどりつかれたな、親友のkamekou、ちょっと一休みだ。 (kamekou)  なにが親友ですか、あんさん公房の友達ではないですか。 (kaeru)  その公房の友達てなんのことだ。 (kamekou)  招かざる客のくせに友達面しているやつのことだす。 (kaeru)  お前さんは陸でも海でも住めるから知識が広いね。おいらは智恵がある。やっぱりおいらたちは友達さ、仲良くしようぜ。  このへぼヘビ野郎にもう主役は務まらない。これからはおいらたちが主役だ。この実で乾杯だ。おいsnakeお前も新しい主役に乾杯しろ。この実を顔に投げてやるから、舐めていろ。 (kamekou)  主役と言われてもだすな、わしは海に帰らなければならない身、こんなストーリーにはついていけません。陸での仕事の成果もなく、まして甲羅までなくしたとなると、とても海に帰れませんだす。 (kaeru)  親友そうしょげるなよ、ことわざの通りおいらは海のことは知らないが海は広いのだろな、深いのか。  おいsnakeお前が一番悪いのだぞ、独禁法違反だ。kamekouが海に帰れるよう何か考えてやれ。 (snake)  意味が違うが、確かに首を突っ込んでだ俺が悪い。しかしな、kamekou、ウミガメのお前がなんで川なんかにいたんだ。しかもリクガメの甲羅を着けて。 (kamekou)  わしの話しですか、わしは東の方にあった竜宮村の生まれだす。 ・・・kamekouは青黒い顔を酒で紫色にして、ぽつぽつと語り始めた。舌は酒のせいでなめらかになっている。・・・ (kamekou)  鶴は千年亀は万年と言いまして、長生きするものだからわしの歳がいくつかはわかりませんだす。そのころ竜宮村は陸から離れて海に浮かぶ小さな島でした。そこには長者の娘で音姫とい方がいました。この方は笛の名手で、また声も涼やかで村のものはみんなこの笛と声に癒されてよく働いたのだす。夕餉の後に音姫様の笛を聞くのが楽しみでした。わしもそうだす。  島と言えば魚を獲ることが盛んと思われるでしょうが、この島は岩でできている島で浜というのはほとんどないのだす。村の生活の糧というのは狩猟採集だす。わしらkameだけが魚を獲って、代物替えで生活していたのだす。小さな浜で生活していたのはわしらkameぐらい。まあ横歩きするkaniもいましたが。  こんな島ですし、波も荒い、陸から離れているから船も来ません、誰も近づきません。そんなある日、わしは岩陰に木の板につかまって波に浮かんでいるhitokataを見つけたのだす。漁に出た船が難破したのでしょう。わしはその男を助けてやりました。そうです背中に乗せて陸まで運んでやったのです。 (助けたカメに乗せられて)という歌がありますが、これは私が助けたカメに乗せられて、ではなく私を助けたカメに乗せられてが正しいのだす。と言いましてもわしの話しは浦島伝説とは別ですから。  わしが助けたhitokataは村で歓迎されました。とくに長者様は下にも置かぬもてなしようだす。といいますのは、この島は外との行き来がないので、どうしても血が濃くなってしまいます。それで外から来たhitokataの男は大歓迎なのだす。  浦島伝説の話しですがね。あれは昔わしの仲間が陸の若いhitokataを拉致したときの話しなのだす。ですからねやっぱり(助けたカメに乗せられて)は無理やり乗せられての意味なんです。もちろんtarouさんは竜宮村では大歓迎されました。でも精根使い果たすとポイ捨てのように帰されましたよ。玉手箱のけむり、あれはここであったことは忘れなさいというサイン、あのけむりで白髪のおじいさんになったわけではないのだす。精根使い果たした抜け殻パジャマになっていたのです。  わしの助けたhitokataも朝昼晩と上げ膳据え膳です。夕闇のころになると音姫様の美しい笛の音を聞き、ふたりで優しく語りあい。そして夜になるといたわりある睦み合い。わしが言うのもなんですが、ふたりは愛し合っていたのだす。  やがて音姫様にも新しい命が宿るのも自然の流れだす。  そんな幸せそうなふたりでしたが、音姫様には悩みがありました。乙姫様の悩みというよりも竜宮村の問題だす。具体的に言いますと、少しずつ島が西南に流され沈んでいってるのです。最初に気づいたのはわしらの長老。長老は甲羅の模様に当たる陽や星の光で時間や季節を知り、天気予報もします。そんな長老が島の位置が少しづつ変わっているというのです。そういわれてみると浜辺が少しずつ狭くなっていっている。ほかの生きものは最初はそんなこと信じなかったが、いよいよ浜辺がなくなるころ、それは本当だと大騒ぎになったのだす。長老が言うには大陸プレートというのが移動していて、その上に乗っているこの島も移動するのだと。もうどうにも止まらない。

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