韓国同居暮らしと日本語教師

2004/11/15(月)22:55

雛人形のたたり

日本の家族・日本時代(48)

 うちの母親はあんまり要領がいい方ではない。よって私も嫁ぎ先では「とろい」と思われている。  前にちらっと触れたが、食事をするとお尻に根が生えてしまい、後片付けをしないで、居間でそのまま寝てしまう。だから食卓には食べ物が出しっぱなし、台所も汚いまま。嫁ぎ先とはあまりにも対照的だ。  戦前生まれのせいか、物も捨てられない。  うちの実家はここ韓国の嫁ぎ先に比べればかなり広い。  居室、父の書斎、応接室、四畳半の畳の部屋、三畳のリブレ、十六畳の大部屋、クローゼットそして、その床面積に相当する地下室や屋上まである。    父母二人と犬猫だけで暮らしているのだが、そうは思えないくらい物が所狭しと並んでいる。つい最近までは、そんな広い家の地下室で寝てたのだが、居住スペースは物がたくさんありすぎて眠る場所が確保出来なかったからかと思うくらいだった。  よって、実家に帰るたびに私はごみ出しに専念する。私は物を捨てるのが得意だ。だって、故郷や人間関係を捨てて、異国の地に嫁に来るくらいだから。 「なんで物捨てないの?もっと片付けてよ」 とか言うと 「なんでもそんなにきちっとしていないと気がすまないタイプは、早くガンとかになって死ぬんだ」 とか言って、自分の行動を正当化する。  昨日はひな祭りであった。日本から「お人形さん(といっても雛人形ではなくガラスケースに入った人形)飾ってお菓子を具えたよ」と電話があった。 (昨日飾ったの?いつしまうんだ?)  幼い頃は何段飾りかの雛人形があった。それは現在一番上の姉が持っている。  その人形は毎年三月三日に飾られ、五月五日くらいにしまわれていた。    「早くしまわないと嫁にいけなくなる」といわれる雛人形であるが、一番上の姉は三十五で結婚した。二番目は二十四。三番目である私は二十八。そして現在三十になった妹は未婚である。  私が結婚するまでも母は「結婚しろ」攻撃を激しくしてきたのだが、その攻撃は現在妹に向けられている。妹は一人で暮らしているが、実家に帰ることをためらっているし、母が日帰りで説教しに来ると嘆きのメールが時々送られてくる。  妹は私の産後、ここ韓国に一週間ほど遊びに来たのだが、その時も電話で「せっかく大金をかけて韓国まで行くんだから、そのお礼に『早く結婚しなよ』って説得してあげて。」とわかったようなわからないような話をしてきた。  せっかく大金かけて来て「結婚しろ」なんてうるさく説教されたら迷惑だろーに。  その前に声を大にして言いたい。 「妹が早く結婚しないのは、お雛様をさっさと片付けなかったお母さんにも責任がある」と。

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