前回からの続き・・・・

セレーヌの走りには　一切の迷いが無い。

気持ち良いほどの走りっぷりである。　　

刀剣を前方に突き出すだけで　間単に勝敗が決まってしまう・・・

那瑠は思わず　そんな都合の良い妄想に捉われた自分に苦笑いを浮かべた。

セレーヌの能力を見極められぬ以上　先手を取るのは　危険すぎる賭けだった。

唯一　那瑠に残された選択は　　「後の先」　しかないだろう・・・

相手から行動を起こさせ　自らは　その行動を見極めつつ　相手を制するというものである。

（さあ　　どう来る？　　　お穣ちゃん・・・・・）

セレーヌは　もう手が届く位置までに迫っている。　

攻撃を繰り出すならば　この機をおいて他はない。

これ以上　間合い深くに進入したとしても　　威力のある攻撃は繰り出せるはずが無かった。

（早く動きやがれ！　　ここしかねぇだろうが・・・）

セレーヌの疾走は止まらぬどころか　さらに加速した！！

「なにっ！？」

「ちいぃぃぃ！！！！！」　

もう　これ以上　懐（ふところ）に入れる訳にはいかない！

那瑠の黒刀が　最短距離でセレーヌの眉間へ向け奔った！！！


全ての生物における　致死点である。

放たれた突きは　セレーヌの脳漿を撒き散らし　後頭部へと突き抜け絶命する。

勝利を確信する瞬間であった・・・

何かが引っ掛かる。

強烈な違和感が　胸に広がった。

さらに加速を続けるセレーヌ　　




那瑠の　眼前まで迫った　その時


急激に停止し　勢いを殺さぬままに　真横に飛翔する！！！！




グチャリ・・・・

体の限界値を意に介さない動きは　　膝の体組織に強烈な負荷を与え

衝撃に耐え切れなくなった靭帯がことごとく断裂する。

その断ち切れる音は　アイリスの体躯が叫ぶ悲鳴だったのかもしれない・・・・

那瑠の突きは　完全に空を斬り　体が泳いでしまっている。

俗に言う　死に体　である。

「詰みじゃの・・・　　那瑠とやら・・・・　　　ケヒャヒャヒャ・・・・」

死角にあたる位置から　那瑠の喉元目掛け　セレーヌの　尖爪が走った！！！

「くっっ！！！！」

体を引き千切れんばかりに　仰け反らせたものの　

セレーヌの攻撃は　その速度を上回っていた。

喉の柔肌に　５本の薄傷が刻み込まれる！！

あと　僅かでも遅れれば　　喉の肉を　ごっそり持っていかれたはずである。

セレーヌの再度の攻撃が襲う！！！

かわせる体勢ではない事を　瞬時に判断した那瑠は　

セレーヌの尖爪　目掛け右脚を跳ね上げていた！

「甘いわっ！！！！」　　　　セレーヌのしわがれた声が飛ぶ！！！

「どうかな・・・・」

尖爪は　易々と　那瑠の足裏から　足の甲まで貫通する！！！

つま先から血飛沫が噴き上がった。

「せいやっ！！！！！！」　　　　

刺さったままの右脚を支点にし　鮮やかにトンボを切って後方に着地する。

自らの右脚を捨て　窮地を脱する。

那瑠の捨て身の技であった。

仕掛けるには　躊躇う（ためらう）ほどの間合いが開いていた・・・

「ほう・・・　　やりおるのぉ・・・　　　まさか　そう来るとは思わなんだ　ヒャヒャヒャ」

「こっちも　必死でね・・・」　　　　　

表情には出さぬ物の　右足からは絶え間ない激痛が那瑠に届く。

「強がりを申すな・・・　　もう楽になったらどうじゃ　ケヒャヒャヒャ・・・」

「それも　良いかもしれないな・・・」　

那瑠は　握っていた黒刀を大地に突き刺し　両手をブラリと下げる。

いわゆる無手の状態になった・・・

「諦めが良いのぉぉ　お主・・・　　　命までは取らぬて・・・・　　ケヒャヒャ」

饒舌に酔う　セレーヌだが

那瑠の唇が　獰猛に吊り上がる変化を見過ごしていたのである。

続く・・・・・・・・・・

後記・・・・・・・・・・

同日に　２話ＵＰは　きちぃぃぃぃぃ（笑）

はてさて　那瑠のイメージは　忍者であることを言ったと思うっすけど

解説者的な役割を兼務してるっす。　　　


男塾でいう　富樫　　キン肉マンでいう　ロビンマスクかなｗ

読者に　説明するのにとっても重要です。

富樫も　ロビンも　報われないまま終わりましたが　

はてさて　那瑠はどうなりましょうか・・・・