カテゴリ:徒然
通勤電車の扉の上部、路線案内図の下を動く小さな黒い点が、ボーっと外を眺めているOyajiの視界の端に入ってきたのは列車が大きな橋を越えて都内に入り、地下に潜り始めた時だった。
何かな?と思ってよく見ると、そこには一匹の黒い蟻の姿。 ドア内側のオーバーハングした部分から徐々に登りつめ、やがて路線図を留めているアルミ製のアングルの下側へたどり着く。 暫くそこでじっとしていた蟻は再び行動を開始。 アルミ製のアングルと厚紙で出来た路線図の隙間を、細い脚をせわしなく動かして、足掛かりとなる微妙な凹凸を探りながら歩き出す。 全長5mmにも満たない小さな黒い体が、幅1cm程度の隙間に見え隠れ。他に気がついた乗客は今のところ居ない模様。 蟻は路線図の端まで歩いて、盛んに触覚と前肢を動かして宙を掻き、そこで足場が途切れていることを認識するや来た道を折り返し反対側へと移動を始める。 やがて反対側でも同様の状況となり、再び・・・・・ 飽くなき往復運動。 力尽き、息絶えるまで続けるつもりか? 路線図の上を右往左往しながらひたすらに行き来する蟻に自らの姿を投影していてふと気付く。 そうか、彼女は二度と家には帰れないんだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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