ジョン・ウェインさんについて
映画「アラモ」(1961)で、テネシー州から日本人にもよく知られたデイビー・クロケット(ジョン・ウェイン)が仲間を率いてアラモの町にやって来ます。 遠くから望遠鏡で町の様子を観察した坊や(フランキー・アヴァロン)が店の看板に書かれている文字を一文字ずつ読んで、「CANTINA」って何だ?みたいに言う。 それを聞いた仲間たちが「キャンティナ!」と大喜びするのですが、映画を見ている私も「キャンティナ」って何だ?とわからなかったです(わかりそうなものなのに)。「キャンティナ」とはアメリカ南西部で「酒場」のことらしく、西部劇で「SALOON サルーン」はよく目にするけれど「CANTINA」はこれまで見たことも聞いたこともなかったです。 キャンティナとサルーン、時代的に新旧な言葉なのか?、地域による言葉なのか? その映画「アラモ」のなかで、アラモ砦の指揮官トラビス大佐(ローレンス・ハーヴェイ)がキャンティナで飲んで遊んでいるデイビー・クロケットを訪ねて来ます。 彼の仲間たちに「テキサス共和国」と「自由と独立」について演説したいと言うトラビス大佐に、クロケットはテネシーの男たちに演説は必要ないと言い、自分が信じる理念を語り始める。「Republic. I like the sounds of the word. It means people can live free, talk free. come or go, buy or sell ,be drunken or sober however they choose!」「共和国。この響きがいい。自由に暮らし、話せる国だ。人の行き来、物の売り買いも自由だ。酔うも醒めるも選択ひとつだ」 デイビー・クロケットはトラビス大佐に自分の心中にある理念を語る。「共和国。感動的な言葉のひとつだ。共和国と聞くと胸がつまる。自分の息子が歩き出す時と同じだ。息子が初めてヒゲを剃るのを見る時と。胸が熱くなる言葉、それが共和国だ」と。「共和国」とは「国家が国民全体に所有されている、君主が存在しない国家」のこと。 民主主義に基づき、主権が国民に所有され、国民によって直接、間接の選挙で選ばれた代表により統治される国家。 現実には薄汚く赤い共産党の独裁者による名ばかりの共和国が近隣にありますが、本来の共和国とは映画「アラモ」でのデイビー・クロケットが理想とする「自由と独立がある国家」なのでしょう。 そしてデイビー・クロケットの、この台詞こそが最もアメリカ的な俳優ジョン・ウェインのすべてを表しているのではないか、と見ていて感じました。「自由と独立」を守るためには断固と戦う、ということです。この姿勢こそがジョン・ウェインの多くの出演作品のテーマになっているのではないか? 国策映画だとして評判のよくない「グリーンベレー」(1968)もジョン・ウェインさんが監督した作品で、製作は息子のマイケル・ウェインだし、ジョン・ウェイン率いる騎兵隊がベトナム戦争に乗り込んだようなこの映画も「アラモ」同様、ジョン・ウェインさんの理念を最もよく表している作品なのでしょう。 子供っぽいと言えるかもしれないし、単純とも言えるかもしれないけれど、ジョン・ウェインとアメリカ合衆国の理念がこういうことではないかと。