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カテゴリ:書評
「象徴性」の解像、『万葉集』秀歌詠み上げる奈良の時代・社会 阿部猛著『万葉びとの生活』 その2
文献史学者が『万葉集』に 注目した。 そこには「我が国の文学史上に屹立=きつりつ する民族の歌集」(397p)とするから。
そのもつ意味を「飛鳥・奈良時代の社会の様相を探ろうとするとき、欠くベからざる文献」と評価する(同)。 阿部猛著『万葉びとの生活』(東京堂書店 1995年)の「あとがき」に記載。 「(『万葉集』は)重要歴史的資料」にして、「歌という形で示された人びとの意思や感情を、私どもは貴重な財産として読み取る」が、「必要」と提起する。 戦後の歴史学の世界で、文献史学者には『万葉集』に「特別な感覚を持っているかもしれない」。そう書き出している。 実際の記載は、「(著者は昭和2年生まれ)私どもの世代は・・・」と書き始めておられる。 そうなのだが、若き日に講義を承った身には、「私どもの世代= 戦後の歴史学の世界で学んだ文献史学者」と読めるのだ。 その著者が永年、「特別な感覚」を寄せたとする『万葉集』の一首。それは。 「今日よりは 顧みなくて 大君の 醜の御楯と 出で立つわれは」 火長今奉部与曾布 (きょうよりは かえりみなくて おおきみの しこのみたてと いでたつわれは)=かちょういままつりべのよそふ 『万葉集・4373』)。 著書には詠歌の示す飛鳥・奈良の時代と社会が示す貴族・官人、そして防人など無名の民。 その生きた時代と社会を反映する象徴性を、解像・可視化する試みと読める。 通常、以下に解釈されるようだ。 「今日からは家をも身をも顧みすることなく、大君の強い御楯となって、私は出立するのである」。 背景に「防人の歌、大友家持に兵役の心構えを聞かれて詠んだ」と注釈が一般的。「この歌の思想は、長くわが国の軍国主義精神、愛国心として国により推奨された」とする、詠歌の機能も示される。https://ameblo.jp/sakuramitih32/entry-12572130212.html そこに、昭和戦前期世代に<思い入れさせた>点が込められていよう。 1989年には父親の阿部萬蔵との共編による『枕詞辞典』(高階書店)を出版する。 父君の生涯学習講座に精勤した成果の一でもある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年07月03日 09時29分13秒
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