数件お問い合わせいただいたイタリアにおける狂犬病の注射について
本日は飼い主の独り言です。イタリアでは狂犬病の注射は義務ではありません。私が大変信頼している獣医も、アルプス付近(北伊)に滞在したりオーストリア・東ヨーロッパ方面に行ったり、猟犬でなければ積極的に進めないというスタンスです。一般的にイタリアでは、北伊ほど狂犬病のリスクが高い事情があります。中部イタリア以南ではレプトスピラ症の脅威が強く、これに対応する混合ワクチンの定期接種が強く推奨されており、Paddyも抗体検査を行いながら、混合ワクチンを定期的に摂取しています。Paddyは秋が狂犬病の注射の時期なのですが、本年は狂犬病リスクのある地域に行く予定がなく、さらに時節柄他の犬と遊ぶ機会も少ない為、ワクチン接種を見送りました。+++EU内を犬連れで移動する際、飼い主には犬用のパスポートの携帯義務があります。これと合わせて、検便など様々な検査の結果や狂犬病以外の予防接種の記録がされるいわゆる「犬の手帳」も携帯するのが普通です。我々は犬連れであちこち出歩いている方だと思いますが、陸続きの欧州内移動において、例えばスイス国境などで見た目そのままアジア人な(笑)飼い主がパスポートの提示を求められたことはあるものの、今まで犬用パスポートの提示を求められたことはありません。これは、訪問予定地で犬の感染症や伝染病が発生していなかった事、訪問先で何らかの理由でPaddyが獣医にかかる必要が無かったことなどが主な理由だと思いますが、だからといって我々がパスポートを携帯しない理由にはなりません。飼い主の義務である以上、万が一提出を求められたときの為に必ず携帯します。このため、犬用パスポートを携帯する必要がある旅が計画されている場合は、獣医に相談の上狂犬病の注射を摂取させるようにしてきました。獣医の判断で今回の摂取は止めようという場合は、旅自体をキャンセルする前提なのは言うまでもありません。犬用のパスポートには、マイクロチップ番号など犬の情報の他に狂犬病摂取の記録などが記載され、そもそも狂犬病摂取記録が無いとパスポートとして機能しません。感染リスクも高い地域があるし、それゆえに、私が信頼している獣医も「そちらの方に行く用事があるなら摂取しましょう」というスタンスなのです。よって、コロナの影響で移動が厳しく制限されている本年は、獣医と相談の上で摂取をする必要はない、と判断しました。+++イタリアにも色々な人がいるので、犬用パスポートの存在を知らなかったり、日常的に獣医にすら連れて行かない飼い主もいます。このような飼い主を持った犬には、少なくとも幸せに一生を終えて欲しいと願うばかりですが、私はこのような人たちと同じ土俵でお話をしようとは思いません。私も相当無知ですが、命を「飼う」以上、最低限の知識と命に対する敬意は持っていたい。その中で、犬について最も信頼が出来るのは、ネット上に散見される出典不明な文章ではありません。一般的には文責のある文章や研究結果、犬種については犬のお里(Paddyの場合はブリーダー)、健康については信頼できる獣医だと思っています。このようにイタリアにおける狂犬病予防接種は、日本と異なり飼い主の義務でないので、飼い主が摂取させる/させないを決定できます。この決定に際し、飼い主が犬の健康を考え、さらには公衆衛生を考えるのか。飼い主たちの資質が問われているのだと思います。+++以上、イタリアにおける(私が思うに非常に一般的な)狂犬病の注射に対する認識ですが、日本のそれとは比較してはいけない事だと思っています。そもそも論でいうならば、他国と陸続きのイタリアにおいて、飼い犬を巡る正確な情報の把握は困難です。色々残念なイタリアというイメージが日本にはありますが、特に行政に関しては実際にその通りなところもあるし、倫理観が相当残念な飼い主に向けて、主に東欧から小さい車にぎゅうぎゅう詰めで陸路で運ばれてくる(陸送中に何割かは死んでしまいます)2か月未満の人気犬種のパピーなど明らかにイリーガルな犬の「販売」について、国がすべてを取り締まるのが大変難しい状況もあります。さらに田舎の農村部では犬はまだまだ家畜として扱われ、勝手に生まれて勝手に増える犬たちもいます。バカンス前には「いらなくなった犬」は普通に遺棄され、保護施設がいっぱいの地域では野犬化しています。万年財政難な地方行政は保護施設の維持で精いっぱいですから、このような野犬を保護する余力もありません。このような犬たちが恵まれているか不幸なのかは別として、色々残念な状況が重なると最終的に全体像の把握が難しいのです。この為、犬が好きで正しい情報を得ている人ほど、正しい情報を得るというのも一つのスキルだとは思いますが、ともあれ正しい情報を当たっている人ほど、獣医としっかりとコミュニケーションを取り、狂犬病摂取をする/しないを決定している、というのがイタリアの現状だと思います。私個人は、獣医と相談の上、犬に必要な状況であれば摂取させるスタンスです。この為、昨今のイタリアは移動が厳しく制限されていることもあり、イタリアで犬を飼い始めて7年目にして初めて狂犬病未接種となりました。これは、私が狂犬病の脅威がほぼ無いと言われる地域に住み、信頼できる獣医(複数人います)のアドバイスを得られる環境で、さらに狂犬病摂取が義務ではない国にいるからできる判断であって、繰り返しになりますがイタリアの状況を以て日本での摂取拒否の理由にする事には強い違和感を覚えます。イタリアからは以上です。国産のオヤツがPaddy用日本土産定番。特にエゾ鹿の角、大好物。