読書の部屋からこんにちは!

2007/06/18(月)16:44

「リカ」 五十嵐貴久

小説(215)

前々からいろんなHPで、怖いぞ怖いぞと評判を聞いておりました。 みんなが怖いと言ってるなんて、どんなふうに怖いのか・・・ものすごーく期待して読みましたよ。 確かに怖かったです。 40代のサラリーマン、本間たかおは、初めての出会い系サイトで知り合った、リカという女性に擬似恋愛めいたメール通をするようになります。 それはもちろん、半分遊び。恋愛ごっこから、ひょっとしたらいい目を見られるかもしれないという、バカな男の軽い気持ち。 ところが、リカはストーカーとなり、自宅も会社もつきとめて家族にまで害を及ぼすようになるのです。 もちろんものすごく怖いお話で、ドキドキしながらも楽しんで読んだのですが、もう一つ乗り切れないまま終わってしまいました。どことなく座りが悪いというか、物足りなさを感じながら。 主人公の後輩のように、出会い系サイトを活用していい目にあってる男の話。インターネットは魑魅魍魎のうごめく悪の巣窟だと断言する、私立探偵の話。ここらへんは、現代のネットに頼っている社会の軽薄さや危なっかしさが表現されていて、とても興味深かった。もっと掘り下げて教えて欲しかった。そして、インターネットを使う私たち一人一人にも、そういう危険が及ぶ可能性があるということを示唆されているようで、怖さを感じました。 ところが、リカの正体が明らかになってくるとともに、どこか科学で割り切れないオカルト的な要素が増えてきます。リカの瞳は白目がなくて眼窩が暗い闇のようだとか、腐った卵に酢を混ぜたようなひどい口臭がするとか。また、女性なのに、身長180センチもある大の男に暴力を振るったり、胸と腹を撃たれていながら男性二人を殺して逃亡するなど、生身の人間のすることではありません。これはもう、怪物です。 そしてクライマックスでは、経験豊かな刑事が「臭いがはっきりと私に向かって敵意を持っていた。」「建物全体に、得体の知れない空気が漂っていた。」「あの部屋は純粋な憎悪で満ちていた。穢れのない完全な憎悪でした。」と、リカの持つ妖気のようなものに怯えているのです。リカの心理的な部分に触れるなら、リカの今までの生い立ちや強い憎悪を持つに至った経緯なども説明して欲しかったと思いました。 というわけで、怖かったわりには消化不良。一気に読んだわりには物足りないと感じています。 結論。出会い系サイトなんて得体の知れないものでいい目にあおうなんて、考えるのはやめましょう。自分の目で、自分の足元をよく見て、生きなきゃだめよ。          

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