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2011/05/31(火)05:55

「ふがいない僕は空を見た」 窪美澄

小説(215)

「女による女のためのR-18文学賞」という賞があるそうですね。この本はその大賞をとった短編を元に、続辺を書き足したものだそうです。 「R-18」という言葉も、実ははじめて知りました。 暴力的であったり、反社会的であったりする内容のものを、つまりほとんどエッチなものという意味みたいですが、18歳以下の子どもたちに見せてはいけないってこと。(何を今さら。18禁という言葉なら知ってました) それで、この文学賞は、多くの実力派の女性作家を輩出しているそうなんですが、この本もまさにそのとおりだと思いました。 R-18に相当するのは最初の一編だけで、後半はその18歳以下の高校生の行き方をさぐり、さらに最後には人間が生を受けることに力強く迫っていく物語です。 だから、この熱くて生々しくて、それなのにさわやかな感じのする物語を、わたしは18歳以下の人たちにも読んでほしいという、矛盾した感想を持ちました。 不妊のあんずさん、高校生の卓巳くんと良太くん、勉強を教えてくれる田岡さん、助産婦のお母さんとみっちゃん、松永さんの家族たち、あんずさんの強力な姑さん、みんな生きてるんだなあと素直に共感してしまう、まっすぐさがとてもいい気持ちです。 「ふがいない僕」って誰だろうと思いながら読みましたけど、結局最後まで誰かわかりませんでしたけど、これはきっと私たち生きている人みんなのことなんでしょうね。 ところで、この本は普通に書店や図書館に置いてありますから、別にR-18というわけじゃないんですよね。誰でも読めるんですよね。 ということは、この文学賞の名前は「R-18文学賞」と言っているけれど、ほんとうにそうなんじゃなくて、それくらいいやらしいよという例えなんですね。 もしR-18にひかれてこの本を読もうと思う18歳以下の人がいたら(いっぱいいると思いますが)、この本は18歳以下の人にもとてもいい本ですから、どうぞどうぞお読みください。そして、ちゃんと最後まで読んでくださいね。きっと、この本が好きになりますよ。  【書籍】ふがいない僕は空を見た

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