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2013/07/30(火)03:38

「女の絶望」 伊藤比呂美

エッセイ(34)

伊藤比呂美さんは、本業は詩人だそうです。けど、私は、申し訳ないけど彼女の詩は読んだことがなくて、もっぱら人生相談の回答者としての彼女しか知らず、その人生相談の隠れファンだったりします。 彼女の回答がなぜ好きかというと、誰も口に出してうまく言えないけど誰もが常識として認識していることを、簡潔に易しく教えてくれるからです。 この本は、数ある相談の中から「女の悩み」に的を絞り、それらをテーマにしたエッセイです。 「夫婦のセックス」「女の絶望」「子育て」「不倫」「嫉妬」「閉経」「介護」まで、これを読めば女の一生がわかる、というくらい、さまざまな女の悩みが渦巻いています。いえ、さまざまなと書いたけれど、実際のところ、女の悩みってほとんどみんな同じなんだなと、驚かされます。似たような悩みを抱えながら、似たような人生を(もちろん本人は、他人と似てるなんて思ってなくて、それぞれに深刻なんですけど)送るものなんですね。 というような感想を持ったのは、きっとわたしが、そのたいていの「女の悩み」を通り抜けようとしている世代だからかもしれません。だから、わたしはこの本を、若くて美しい娘ざかり、恋愛盛りの人たちに読んでほしいなと思いました。 あなたの歩いていく道のりには、こんなことが待っているんだよ。それは辛いときもあるけど、これが生きるってことなんだよって。 しかし、たいていの娘盛り恋愛ざかりの女性たちは、(もちろんわたしもそうでしたが)そんなこと気づきもしませんね。今の美しさや楽しさや何もかもが、変わることなく続いていくんだって、何の根拠もなく信じています。そのノーテンキさも、若さの特権なんでしょうけど。 「女の絶望」というタイトルの元になっている相談が、いちばん心に残りました。 「男女平等というようなこと、社会でもだんだんそうなっているということは聞き及んでおりますが、どうしたら家の中でそれができるのか教えていただきたいのです。休日など2人でどこかへ出かけて、疲れて帰ってきたときに、自分が立ち上がってお茶を入れる奴隷根性に絶望しています。それをごくあたりまえのことのようにのほほんとしている夫のことも憎らしくてたまりません。」 60代の主婦の方です。わかるわかる。その気持ち。 自分に絶望するその気持ち。 悩み、不満、不安、それらをまとめて表現したことば、それが「女の絶望」です。 光文社文庫 い48-1【全品送料無料】女の絶望/伊藤比呂美

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