
中国古典は好きだが、それを威圧的に伝えようとする姿勢はいかがなものか。
著者の北尾吉孝さんは SBI ホールディングスの代表取締役 CE0――ライブドアがフジテレビに買収攻勢をかけたとき、フジテレビ側に味方した「ホワイトナイト」です。けれども、その時のテレビで北尾さんの喋りを見て、好きになれなかった。
あらためて著作を読んでみると、私は、この人の下で働くことはできないと確認できた。
北尾さんは中国古典が好きであるらしいのだが、経営者として、中国古典から良い言葉を引用しながら会社を牽引していくことは否定しない。ただ、その伝え方が威圧的なのである。
たとえば、「一つのことが長続きしないというのは、徳が足りないと言い換えてもいいと思います」(181 ページ)と書いているが、であれば、転職を繰り返している私などは「不徳の致す限り」である。だが、北尾さんの方が私より転職回数が多い。まあ、各々の会社で目標を達成し、別の会社から招かれたから転職したとご本人が言われればそれまでだが。
また、「血というのは恐ろしいもの」(63 ページ)と語り、自分の祖先は江戸後期の著名な儒学者・篠崎小竹の門下であり、そのことが彼の考え方に受け継がれているという。それでは、出自の知れぬ祖先をもつ私などは、行き当たりばったりの考えで生きていかなければならないのだろうが――ま、確かにそういう人生ではあるが(笑)。
ともかく、私は本能的に、こういう社長のいる会社に転職したり一緒に仕事をしたりすることを避ける傾向があるので、それもまた「天命」なのでしょう。
■メーカー/販売元 北尾吉孝/致知出版社/2007年3月
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