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2012.01.13
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カテゴリ:書籍



一億総ガキ社会

一億総ガキ社会


 彼らの多くは、現実の自分を受け入れられないでいる。「こうありたい」という自己愛的なイメージ上の自分と、現実の自分との間のギャップが大きすぎるためである。「自分は何でもできる存在である」といった幼児的な万能感をひきずっており、実際には「それほどでもない」等身大の自分をなかなか受け止められないのである。(5ページより)

著者・編者片田珠美=著
出版情報光文社
出版年月2010年07月発行

過激なタイトルであるが、精神科医の片田珠美さんが精神分析手法に基づいて現代日本人の病理を冷静に分析する内容となっている。
前半では、片田さんが最近の臨床現場で感じている 3 つの特徴的な傾向――1.ひきこもりの増加にみる打たれ弱さ、2.何でも他人のせいにして切り抜けようとする他責的傾向(モンスター・ペアレンツ、モンスター・ペイシェンツ)、3.覚醒剤や合成麻薬などにすがる依存症の増加――について紹介する。
後半では、これらの精神病理の背景には万能感を失いたくないという対象喪失の恐怖が根底にあるのではないかと論じる。

片田さんはスイス生まれの精神科医エリザベス・キューブラー・ロスが提唱した「死の五段階」――否認、怒り、取引、抑うつ、受容――を引き合いに出し、ひきこもりは否認の段階でで、モンスターペアレンツやモンスターペイシェンツは怒りの段階で、依存症は抑うつの段階でとどまっていると分析する。この論点はユニークである。
さらに、男性が女性に比べて打たれやすい実情を、フロイトの説にしたがい、「去勢不安」や「エディプス・コンプレックス」にあるのではないかと分析する。

こうした問題を解決するには「断念」が大切だと説く。
「『断念』を受け入れられない若者が、ものすごく増えているように筆者には感じられる。これはとりもなおさず、大人になることの拒否、つまり『成熟拒否」である』(46 ページ)とも述べている。
片田さんは「なぜ対象喪失を受け入れられなくなったのか?」(212 ページ)と疑問を提示し、「何よりも、人生における最大の対象喪失である『死』に遭遇する機会が減ったことが挙げられよう」と答えを記している。このことは、子どもを育てていく際にヒントとなるだろう。

片田さんは、「『あきらめない』のであれば、当然、そのために重ねるべき努力も、あがくことに伴う苦悩も、失敗したときに味わう絶望も、引き受ける覚悟がなければならない」(239 ページ)と手厳しい。この覚悟を引き受けられるのは、本当に強い人間である。ちょうど並行して読んでいた『生き残る技術』(小西浩文=著)を実践できる人間だけだと思う。
そうでない、普通の人は、やはり「断念」することが肝要だろう。

最後に片田さんは、「経済面での対象喪失の危機に直面して、どう対処していいかわからず、戸惑っているのが、現在の日本」(230 ページ)と述べている。そして、「『勝ち組路線』から一度でもはずれてしまうと、そこに戻るのがきわめて困難に見えるような現在のシステムを根本的に見直し、敗者復活の容易な社会を築いていく努力が必要」(248 ページ)と締めくくっている。難しい問題である。










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最終更新日  2012.01.13 15:36:58
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