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過激なタイトルであるが、精神科医の片田珠美さんが精神分析手法に基づいて現代日本人の病理を冷静に分析する内容となっている。 片田さんはスイス生まれの精神科医エリザベス・キューブラー・ロスが提唱した「死の五段階」――否認、怒り、取引、抑うつ、受容――を引き合いに出し、ひきこもりは否認の段階でで、モンスターペアレンツやモンスターペイシェンツは怒りの段階で、依存症は抑うつの段階でとどまっていると分析する。この論点はユニークである。 こうした問題を解決するには「断念」が大切だと説く。 片田さんは、「『あきらめない』のであれば、当然、そのために重ねるべき努力も、あがくことに伴う苦悩も、失敗したときに味わう絶望も、引き受ける覚悟がなければならない」(239 ページ)と手厳しい。この覚悟を引き受けられるのは、本当に強い人間である。ちょうど並行して読んでいた『生き残る技術』(小西浩文=著)を実践できる人間だけだと思う。 最後に片田さんは、「経済面での対象喪失の危機に直面して、どう対処していいかわからず、戸惑っているのが、現在の日本」(230 ページ)と述べている。そして、「『勝ち組路線』から一度でもはずれてしまうと、そこに戻るのがきわめて困難に見えるような現在のシステムを根本的に見直し、敗者復活の容易な社会を築いていく努力が必要」(248 ページ)と締めくくっている。難しい問題である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.01.13 15:36:58
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