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カテゴリ:書籍
「Team 医療3.0」共同発起人の畑中洋亮さん(神戸大学特任教授、帝京大学客員教授)は、医療技術や機器が進歩した時代を「医療1.0」と呼ぶ。ここで細分化・ピラミッド化された状況を打開するために、新臨床研修制度をはじめとする「医療2.0」が行われたが、それがかえって医療崩壊したと説明。次のステップとして、ICT 技術を利用した「医療3.0」が必要だと説く。 iPhone の医療アプリとして代表的な「OsiriX」の開発者の一人である杉本真樹さん(神戸大医学部消化器内科特命講師)は、これまでの医療サービスのセグメント主義を「医領鎖国」と呼び、これをオープンにする「医領解放」が必要だと説く。患者の CT から 3D プリンタを使って臓器の立体モデルを作り、手術の再現をするというアイデアは素晴らしい。 金井伸行さん(医療法入社団淀さんせん会金井病院理事長)は、地域密着型病院を経営している経験から、「医師という職種は絶えず動き回りながら高度な決断を迫られる、実はモバイルワーカー」(64 ページ)と見直すことで、モバイルアプリとクラウドを使った研修医支援システムを提供している。そこには「知識」「技術」「成功・失敗体験」をシェアするという思想が流れている。 綱木学さん(済生会栗橋病院外科医長)は、絶滅危惧種の外科医を効率よく育てるために、iPad で動画を使った教育に熱を入れる。 狭間研至さん(ファルメディコ代表取締役社長・医師・一般社団法人在宅療養支援薬局研究会理事長)は、昔の町の薬局を「薬局 1.0」、現在の調剤薬局を「薬局 2.0」と定義し、開業医より多い薬剤師というリソースを活用した医療サービスの提供形態を「薬局 3.0」と定義する。 遠矢純一郎さん(医療法人社団プラタナス桜新町アーバンクリニック院長)は在宅医療を行っている経験から、クラウド型の地域連携電子カルテを iPhone で共有できるようにしている。もちろんセキュリティにも配慮したサービスだ。 宮川一郎さん(習志野台整形外科内科院長)は、iPad を使って問診票や患者説明スライドを作っている。わかりやすい医療動画が患者に好評だという。病診連携をさらに進めた病患連携――「診療所の先生だけでなく、入院している患者さんやその家族が、家でパソコンや iPad を使って、カルテだけではなく、手術の記録、画像、血液検査の結果、入院中の生体情報、つまり血圧や体温といった今日の状態というのを見られるように」(134 ページ)なっているのだという。 高尾洋之さん(東京慈恵会医科大学脳神経外科学講座助教授)は、iPhone を用いた遠隔画像診断治療補助システムを開発し、脳卒中の症例に活用している。「時間軸で、今どんな検査をやっているのかということが一目でわかるようになって」(151 ページ)いる「タイムバー&ツイート機能」はツイッターのタイムラインのようなユニークな機能だ。この考えを推し進めてゆけば、金井さんが提唱する「施設単位、部署単位ではなく、患者単位で考えるべき」(162 ページ)と組み合わせることで、患者や医療スタッフがノードとなり、クラウドで連携している医療情報システムが構築できるだろう。 最終章は、ソフトバンクの孫正義社長の発言が中心だ。 最後に、「Team 医療3.0」の皆さんのプロフィールが掲載されている。素晴らしい経歴・肩書きが並ぶが、よく読んでいくと、IT を積極的に導入している医療機関に勤務されていた経験があるご様子。「Team 医療3.0」は、そういう先端医療機関が生み出した IT 医療の第二世代であるように感じた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.01.24 15:49:02
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