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2014.10.08
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カテゴリ:書籍



千年、働いてきました

千年、働いてきました


 「こういう十年とか二十年とか、あるいは三十年とか、それだけの期聞をかけないとできない研究って、山ほどあるわけですよ。そして、大企業にはこれができないんです」(200ページより)

著者・編者野村進=著
出版情報角川書店
出版年月2006年11月発行

著者は、アジア・太平洋地域、先端医療、メディア、事件、人物論などの分野で取材と執筆を続ける野村進さん。

冒頭で、世界一古い会社として、西暦 578 年から続いている金剛組を紹介。598 年に難波に四天王寺を完成させたのが最初の仕事という超老舗企業である。
これ以外にも、創業 100 年を超える老舗企業は、わが国に 10 万以上あるという。そして「およそ 4 万 5 千軒が製造部門」(29 ページ)なのだ。
野村さんは、「製造業のアジア」と「商人のアジア」があり、わが国は紛れもなく「職人のアジア」だとしたうえで、「『職人のアジア』には“王”すなわち権力者への根強い信頼感が根底にある。それはしばしば、国家や政府への信頼感につながる」(33 ページ)と指摘する。
「老舗の土台を築くのは、三代目あたりの養子」と言われるが、本書の取材でもそういう老舗企業を多く取り上げている。「商人のアジア」代表の中国には「有能な他人より無能な血族を信頼せよ」という格言があるが、大阪には「息子は選べないが、婿は選べる」という言い習わしがある。野村さんは、これこそ日本のプラグマティズムだとする。

第2章以降では、携帯電話の部品で活躍する老舗企業を紹介する。バイブレーションの部品を作る田中貴金属――金を扱う技術を金極細線の製造にも応用している。福田金属は金箔・銀箔の老舗で、11 代目社長は「身の程をわきまえる」(50 ページ)ことを続けてきたという。
小坂製錬を傘下に置く DOWA ホールディングスは、小坂銅山での製錬技術を活かし、都市鉱山の発掘や土壌汚染の浄化を行っている。そして、かつての鉱山を最終処分場としている。長年の仕事場であり地域の理解を得てきたことから、最終処分場建設に対する大きな反対はなかったという。

末期肺がんから奇跡的に生還したセラリカ NODA社長・野田泰三さんは、農林業者から害虫として嫌われているカイガラムシが分泌するロウが安定した化学物質であることに目を付け、「殺す発想」から「生かす発想」に転換する必要があると指摘する。
筆ペンでお馴染みの呉竹創業者の綿谷奈良吉さんは、カーボンや微粒子分散技術の強みを活かし、「うちは、あくまでもアナログの世界に特化してゆこうと思っています。アナログ・反デジタルへのこだわりは、ずっと持ちつづけてゆこう」(129 ページ)という。徹底している。
1899 年(明治 32 年)創業のカタニ産業は金箔づくりの老舗だが、現社長の蚊谷八郎さんの座右の銘は、「伝統は、革新の連続」(143 ページ)というものだ。台湾向けのアルミ箔や、箔転写で使うスタンピング・フォイルも生産する。
1871 年(明治 4 年)創業の鋳物工場・永瀬留十郎工場の永瀬社長は「ある条件を入れたら、こういう答えが出ますよというのが、コンピューターだよね。でも、その条件を入れるのは、あくまでも人間でしょ? 鋳物の場合、図面を描いてくれたユーザーさんの意図があるんだけれど、その意固までコンピューターは読み取ってくれないんだよね。この部分は最後まで絶対残っちゃう。ここは、たぶん永久になくならないと思う」(168 ページ)と語る。たしかに、システム要件定義も人間でなければできない。
水飴屋から研究所に転身した林原の三橋常務取締役は「うちの社長はわれわれに、なんぼでできるかという質問はしないんですよ。できあがったとき、どれだけ役に立っかという質問だけです」(198 ページ)と語る。老舗の社長は格好いい。

エピローグとして、金剛組倒産の顛末が語られる。2006 年(平成 18 年)、大阪の同業者が奇策を用いて金剛組を破産から救ったという。老舗企業は、単なる同族会社ではなく、みんなに支えられている/みんなが支える価値のある会社と信じているのである。











最終更新日  2014.10.08 20:34:57
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