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著者は、「科学は文化」をモットーに、国立天文台を中心に世界中を飛び回っている縣秀彦さん。「宇宙のことを知ると、自分の存在理由や、立ち位置が垣間見える瞬間に遭遇することがあります」(41 ページ)と記しているが、同世代の天文少年(?)として、同感である。いま、自分が、数億光年というスケールの時空間を見ていると思うと、いかに「自分たちのルールにのみ固執して、お互いの共通性を見いだせず」(46 ページ)にいるか、そして、自分がいかに小さな存在かということに気づかされる。 縣さんは、「中学校卒業までに身につけてほしい自然観として、天文教材が特に役立つ科学概念は時間スケールと空間スケールの認識に関して」(181 ページ)と指摘する。 縣さんは、「天文学は音楽や算術・幾何と並んで 5 千年以上の歴史を持つ最も古い学問の一つ」(36 ページ)という。科学史は、天文学を中心に整理するとわかりやすい。さらに、グレゴリオ暦の制定やコロンブスやクック船長の探検の背景に天文学があったことを考えると、世界史に対する見方も変わってくるだろう。 縣さんがかつて教鞭を執った高校では、「不思議なことに生徒たちは、暗闇の中、星空を眺めながら、必ず自分の悩みを打ち明け始めます」(40 ページ)。これはよくわかる。「宇宙のことを知ると、自分の存在理由や、立ち位置が垣間見える瞬間に遭遇すること」(41 ページ)がある。 縣さんは、アポロ 11 号の月着陸を原体験にしており、「現在の科学技術の発展や世界平和を願う気持ちの原点の一つが、アポロ計画」(68 ページ)という。 縣さんは、国立天文台に着任すると、アウトリーチ活動として国立天文台三鷹キャンパスの一般公開をはじめた。2000 年 7 月 3 日のことである。わが家のすぐ近くである。2005 年から、三鷹駅近くでアストロノミー・パブを開いたことも知っている。また、縣さんが着任する以前の三鷹キャンパスの情報公開発動は、『天文台の電話番』(長沢工=著,2001 年 1 月)に詳しい。 縣さんは、サイエンス・コミュニケーション(SC)を、「サイエンスというものの文化や知識が、より大きいコミュニティの文化の中に吸収され、変質し、その結果が科学にも跳ね返ることで、社会全体や個人に影響を与えていく過程」(167 ページ)と定義づける。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.06.03 12:24:33
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