ぱふぅ家のサイバー小物

2019/06/08(土)12:41

【ハードSFが超古代文明ネタを料理】火星の遺跡

書籍(883)

火星の遺跡 ハミルトン「あの男が言ったことはなにもかも現実になっている! たしかに、わたしには説明できないし、きみにも説明できないし、ここにいるだれにも説明できない。それでも、ときには科学では説明のつかないことが起こるものなんだ」(399ページ)著者・編者ジェイムズ・P・ホーガン=著出版情報東京創元社出版年月2018年12月発行本書は、火星を舞台に、紛争調停人キーラン・セインが活躍する 2部構成の SF だ。著者は、『星を継ぐもの』『創世記機械』などでお馴染みのジェイムズ・ P ・ホーガン。2010 年に亡くなったが、本書は 2001 年に書かれたもので、17 年の時を経て翻訳された。ドローンやパッド、そしてハッキング・テクニックなど、現代でも色褪せない仕掛けは、コンピュータ・セールスマンだったホーガンらしい作品となっている。火星では、ベンチャー宇宙企業体クアントニックスがテレポーテーション技術の人体実験に成功した。ちょうど火星を訪れていたキーランは、テレポーテーション技術を開発し、自らが実験台となった科学者レナード・サルダと接触する。自信満々に実験成果を語るサルダだが、次に会ったときには、銀行に入金された成功報酬が全て無くなってしまったと、自信を喪失してキーランに相談をもちかける。銀行によれば、本人でなければ知り得ないパスワードを使って、正当に出金されたという。はたしてサルダの身の回りに何が起きたのか。そして、人体テレポーテーションは成功したのか。第2部でキーランは、サルダーに関わる重要な情報を提供してくれた考古学者ウォルター・トレヴェイニーの探検活動に医師として参加する。火星の超古代文明をめぐって、大企業の社長ハミルトン・ギルダーと、その一味が、発掘作業の邪魔をする。キーランは火星での人脈をフル活用し、ファラオの呪いや高次元精神といったキラキラ・スピリットに弱いお嬢様=ギルダーの娘マリッサをまんまと騙し、発掘調査隊を窮地から救おうと画策する。最後の一歩というところでキーランたちは捕まってしまうが、火星の遺跡が彼らの救いとなったのだった。本書には、SF ファンやトンデモ・ウォッチーならニヤリとさせられる伏線が張ってある。1 万 2 千年前の事件を追うキーランに対し、ビジネス・パートナーであるジェーン・ホランドが「原因は巨大な彗星でそれが金星になったとか」(121 ページ)と発言するシーンがあるが、これはイマヌエル・ヴェリコフスキー『衝突する宇宙』(通称「ヴェリコフスキーの彗星」)が元ネタだろう。その他、エジプトのピラミッドやファラオの呪い、インカの巨石建造物など、失われた超古代文明「テクノリシクス文明」が存在していることが前提になっている。また、モンティ・ホール問題 https://www.pahoo.org/e-soul/webtech/phpgd/phpgd-23-01.shtm を話題として取り上げている。だが、そこでハード SF の巨匠であり、ウィットましましのイングランド人、ホーガンの筆がうなりを上げる。フラグ回収などどこ吹く風で、キーランはジェーンに「今宵は石油王とディナーというのはどうだい?」と誘って大団円。読んでいるこちらは大爆笑。まるで 2019 年の日本人向けに書かれた小説のようである。また、本書に限っては、UFO現象学者の礒部剛喜氏による解説「テクノリシク文明の呪縛」を先に読むことで、本編を 256 倍ほど愉しむことができるだろう。その全文が公式サイトに掲げられているので、ご一読を http://www.webmysteries.jp/archives/13865100.html

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