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2020.07.06
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地磁気逆転と「チバニアン」

地磁気逆転と「チバニアン」

 一般には知られていませんが、過去200年ほどの間、地磁気の強さは低下し続けています。この傾向がさらに続けば、地磁気逆転に向かう可能性もあるのです。(6ページ)
著者・編者菅沼悠介=著
出版情報講談社
出版年月2020年3月発行

著者は、国立極地研究所で地質年代「チバニアン」の誕生を推進した研究グループの中心メンバー、菅沼悠介さん。地磁気逆転は地学の未解決問題だが、一線の研究者が著した内容だけあって、とても分かりやすく、最新の知見を知ることができる。
地磁気逆転は、現代のスーパーコンピュータを持ってしても完全シミュレーション不可能な地球ダイナモ理論やマントル対流によって起こることや、数学者ガウスが地磁気計測を始めてから 200 年間、地磁気が次第に弱まっていること。そして、地磁気逆転と隕石衝突イベントや、地磁気と気候変動や生物の絶滅・進化との関係を研究するプロジェクトが誕生し、現在進行形で研究が進んでいることなど、今後もチバニアンから目が離せない。

方位磁石の登場は、中国・北宋(960~1127 年)の時代まで遡ることができる。これがどういう経緯でヨーロッパに伝わったかは不明だが、12 世紀には神学者のアレクサンダー・ネッカムが航海用のナビゲーションツールとして方位磁石を紹介しており、その後の大航海時代の重要アイテムとなる。
16 世紀、コペルニクスの地動説を支持しやイギリスのウィリアム・ギルバートは磁石の研究を行い、「地球は一つの大きな磁石である」という言葉を遺し、「磁気学の父」と呼ばれた。
磁極は地軸の北極/南極から外れており、方位磁針に偏角や伏角としてあらわれる。そして、地磁気の形や強さ自体も時間と共に変化する「地磁気永年変化」があることが分かった。伊能忠敬の日本地図が正確だったのは、たまたまこの時代、日本列島の偏角はとても小さく、とくに江戸では 0 度に近い値であったためだった。
1830 年代、数学者のガウスが地磁気の起源についての研究に取り組む。ガウスは地磁気の観測も行い、以来 200 年間、地磁気の強さは低下し続けていることが分かっている。これが一時的なものなのか、地磁気逆転に向かうかはわからない。
20 世紀に入ると、ベノー・グーテンベルクが地震波からグーテンベルク不連続面を発見し、地球中心核の存在をあきらかにした。1946 年、エルサッサーは、地球の流体外核の対流によって誘導される電流によって地磁気が作られていることを示す「地球ダイナモ理論」を提唱する。
1995 年、核融合科学研究所などが、スーパーコンピュータを使って地球ダイナモのシミュレーションに成功した。だが、現実の地球ダイナモの再現はあまりに膨大な計算量を必要とするため、今日のスーパーコンピュータを用いても、すべての要素を忠実に含んだ地球ダイナモの再現は不可能である。

1906 年、ベルナール・ブリュンヌが現在の地磁気の向きとは逆向きに磁化された岩石を発見する。国内外で調査を行いった京都帝国大学の松山基範は、1929 年、地磁気逆転の可能性を示す論文を発表した。それは常識に反する考え方だったため、評判はよくなかった。
1970 年、ノーベル物理学賞を受賞したフランスのルイ・ネールによって、岩石が残留磁化を持つしくみも明らかになった。
1950 年前後に、イギリスのジャン・ホスパースは、地磁気極は長い時間の平均をとれば、自転軸の位置(北極)と一致するという「地心軸双極子仮説」を提唱した。古地磁気学の基本原理の一つである。
1950 年代、7 億年前に遡る残留磁化の解析が行われ、磁極が大きく移動したような結果が得られた。イギリスのケイス・ランコーンの研究グループは、これを極移動ではなく、大陸の移動を示す結果と考え、1912 年、アルフレッド・ウェゲナーが提唱した大陸移動説が検証されることになった。
地磁気逆転の残留磁化記録と海洋底拡大によって海底の地磁気異常を説明するこの画期的なモデルは、今日、「バイン-マシューズ-モーリー仮説」と呼ばれ、地球科学発展の歴史の重要な 1 ページとして記憶されている。

現在、溶岩や海底堆積物、そして海底の地磁気異常から、少なくとも約 1 億 6000 万年前までの地磁気極性年代表が作られている。それによると、過去 80 万年間には地磁気逆転は一度(松山-ブルン境界)しか起きていないが、過去 250 万年間では 11 回以上、おおよそ 100 万年に 5 回程度のペースで地磁気逆転が起きていることがわかった。さらに時間をさかのぼった白亜紀には、4000 万年ほどの間、地磁気逆転が一度も起きず、正磁極の状態がずっと続いた時代がありました。これを地磁気スーパークロンと呼ぶ。
地球システムを支配しているマントル対流に約 2 億年のリズムがあり、その影響で、2 億年弱に 1 度の頻度でスーパークロンが起きると考えられている。
また、地磁気強度も変動しており、過去 80 万年間を見ると、平均値を 100%とすると、大局的には 120%から 20%ぐらいの幅で変動しており、とくに約 7 万年前の地磁気逆転(松山-ブルン境界)には、現在の 3~5%ぐらいまで落ち込んでいるようだ。
また、地磁気逆転に至らずとも、磁極が大きく北極または南極から外れるイベントが起きており、これを地磁気エクスカーションと呼ぶ。
2019 年、アメリカ・フロリダ大学のジェイムズ・チャネルらは、ラシャン・エクスカーションとネアンデルタール人の絶滅が関係していたという仮説を発表した。

数千年から数十万年というスケールの地球の気候変動において、繰り返し訪れる氷期と間氷期の原因が、地球の軌道や自転の特性にあるという仮説「ミランコビッチ理論」が注目された。
その頃、放射年代測定の技術革新によって溶岩の年代測定精度が向上し、松山-ブルン境界などの地磁気逆転年代も以前より正確に決定されるようになった。その結果、地磁気逆転を基準とした海底堆積物の年代決定精度も向上し、ミランコビッチ理論が予測したとおりに気候変動が起きていることが明らかになった。

地磁気逆転は基本的には世界中で同時に起きる現象であるため、地磁気逆転が起きるタイミングはどこで観測しても一致していなくてはならない。ところが、この両者のタイミングが一致しないことが分かり、海底堆積物の古地磁気の記録が、堆積直後ではなく、やや遅れて(地層の少し深くで)獲得されていることがシメされた。
2010 年、菅沼さんらは論文にまとめ、松山-ブルン境界の年代が約 78 万年前ではなく約 77 万年前となる可能性が高いことを示した。

実際にそれを示す地層の探索に着手した菅沼さんは、学部生時代の指導教員だった岡田誠教授に教えられ、房総半島の白尾火山灰を目指した。ここで採取した火山灰の放射年代を 2 年間かけて分析し、77 万 2700 年前という数字をはじき出した。
その結果、松山-ブルン境界の地磁気逆転は 2 千年の間に起きたことが分かった。地磁気極がもっとも早く動いているときには、約 400 年間に 60 度以上も移動した。
これを現在の地磁気の状態に当てはめてみると、地磁気逆転プロセスの中にいるとしても、かなり初期の段階にあることがわかる。もし仮にこのまま地磁気逆転に向かうとしても、地磁気逆転が始まるまでにはまだ最短でも数百年以上はあると考えられる。
最近注目されるのが地磁気と気候変動の関係だ。地磁気強度低下にともなって寒冷化したとの研究報告もある。

最終章では、チバニアン誕生までのプロセスが紹介される。このチャレンジは、30 年にわたり続いていた。2013 年、茨城大学の岡田教授をリーダーとした千葉セクションの GSSP申請タスクチームが結成された。
当初チバニアン申請に協力的だった「団体」が、一転して反対に回った。しかし、市原市の協力もあり、2020 年 1 月 7 日、ついに「チバニアン」が誕生する。
チバニアンは命名されるだけで終わったわけではない。隕石衝突イベントや、地磁気と気候変動や生物の絶滅・進化との関係を研究するプロジェクトが誕生し、現在進行形で研究が進んでいる。






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最終更新日  2020.07.06 12:15:53
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