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2024.12.12
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カテゴリ:書籍
最新図解 鉄道の科学 車両・線路・運用のメカニズム

最新図解 鉄道の科学 車両・線路・運用のメカニズム

 鉄道の安全性や利便性が今後も向上し、他の輸送機関と足並みをそろえながら交通全般の発展に貢献するという技術的な方向性は、変わることはないでしょう。(282ページ)
著者・編者川辺謙一=著
出版情報講談社
出版年月2024年7月発行

本書は、ブルーバックスにおける3冊目の『鉄道の科学』だ。著者は、鉄道関係の執筆も多い交通技術ライター、川辺謙一さん。2024年時点の最新情報を交えながら、多くの図や写真を使って鉄道技術を解説する。そして、現在鉄道が抱える課題と、その技術的解決策を提示する。

第1章は鉄道の基礎知識。
鉄道は陸上輸送での大量高速輸送に優れ、エネルギー効率が高く、CO2排出量が少ない。人による操舵が不要で、16世紀にはドイツやイギリスで木製レールが使用されていた。鉄道車輪は車軸と一体化した輪軸 (りんじく) で、デファレンシャルギアを持たず、円錐形の踏面 (とうめん) によりカーブでの内輪差・外輪差を吸収する。内側のフランジは脱線防止機能を果たし、粘着駆動による加減速が可能だが、空転しやすい点が弱点である。

第2章は車両のメカニズム。
2024年4月時点で、日本の鉄道車両の81.2%が電車である。戦前、石炭消費量を抑えるため電化が進み、戦後はフランスの影響で交流電化も導入され、現在は保守性に優れる交流モーターが主流だ。日本の鉄道車両は台車で支えられるボギー車が一般的で、建築限界内で運行される。VVVFインバーターによる交流モーターの採用で省エネ化が進み、カルダン駆動が主流となった。保守では TBM(時間基準保全:Time Based Mentenance)から CBM(状態基準保全:Condition Based Maintenance)へと進化し、車両状態を監視・予測する技術が導入されている。

第3章は線路のメカニズム。
軌道にはバラスト軌道と、維持管理が容易なスラブ軌道がある。レールは通常25メートル(定尺レール)で、長さに応じて短尺、長尺、ロングレールに分類される。ロングレールは継ぎ目が少なく、振動や騒音が減り、負荷も軽減される。レール間隔(軌間)は標準的に1435mmである。単線の運転本数上限は1日約80本、複線では1時間片道最大30本まで運行可能である。

第4章は運用のメカニズム。
輸送計画は需要予測に基づき、列車ダイヤを中心に進行する。ダイヤ決定後に乗務員や車両の行程表が作成され、信号や標識とともにATSやATCが導入される。近年は無線制御の ATACS (アタックス) が導入され、無人運転の GoA4 を実現するATOも普及している。東海道新幹線ではCTCやCOMTRAC (コムトラック) が導入され、運行管理が効率化された。鉄道はバリアフリーやユニバーサルデザインにも配慮している。

第5章は新幹線と高速鉄道。
新幹線は1970年に施行された「全国新幹線鉄道整備法」に基づき定義され、戦前の「弾丸列車計画」で取得した用地により、東海道新幹線の建設が短期間で完了した。新幹線の技術は、スピード、安全、確実性を重視した。1992年に登場した 300系は、騒音基準の壁を克服し、最高速度を220km/hから270km/hに引き上げ、「のぞみ」として営業運転を開始した。新幹線の影響で、フランスTGV、ドイツICE、アメリカAcela Express、中国の高速鉄道網などが発展した。
1960年代には鉄輪走行の限界があり、超伝導磁気浮上式鉄道(超電導リニア)の開発が始まった。現在、超電導リニアは日本と中国で開発中で、常伝導リニアも運行されている。さらに、イーロン・マスク氏はハイパーループを提案し、1000km/h以上の速度を目指している。

第6章は街を走る都市鉄道として、地下鉄やモノレール、新交通システムなどを紹介する。
世界初の都市鉄道は1832年のニューヨーク・アンド・ハーレム鉄道で、1863年にロンドンで世界初の地下鉄「メトロポリタン鉄道」が開業した。ニューヨーク地下鉄は1904年、東京は1903年に山手線と中央線を開設した。AGT(自動案内軌条式旅客輸送システム)は1981年に神戸で無人運転を実現した。多くの都市が地下鉄整備後に路面電車を廃止したが、近年は再び路面電車が注目され、ストラスブールや富山、宇都宮でLRTが導入されている。

第7章は山岳鉄道というニッチな話題。
鉄道は粘着駆動という物理現象に依存しているがゆえ、山岳地帯の勾配対策は避けて通れない。まずは、軌道を工夫するスイッチバックやループ線。大井川鐵道に残るラック式(アプト式)。
粘着駆動を諦めたケーブルカー(鋼索鉄道)やロープウェイ、リフト。日本におけるケーブルカーの最急勾配は、高尾登山電鉄の608パーミル(斜度31度18分)だ。

第8章は進化する鉄道として、川辺さんは現在鉄道に求められている課題として、
 ?環境対策
 ?モビリティ革命への対応
 ?人口減少への対応
の3つを挙げる。
?は気動車がかかえる課題だ。蓄電池電車や水素電車の試験運用がはじまっている。
?のモビリティ革命は、自動車において、自動運転や電気自動車といった革新的な車両が実用化されていることを指し、自動車が電車に近づいてきたと指摘する。そして、これは?人口減少への対応にもつながる。
現在、鉄道各社が展開している MaaS (マース) (Mobility as a Service)――国土交通省は「地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス」と説明――が繋がり、キャッシュレス・チケットレスになることで、利便性が向上する。鉄道の維持や運営に関わる業務の省力化も必要だ。

川辺さんは最後に、鉄道を取り巻く技術には、さまざまな輸送機関との「競争」から「協調」へシフトすることが求められている一方で、鉄道の安全性や利便性が今後も向上し、交通全般の発展に貢献するという技術的な方向性は変わることはないだろうと締めくくる。

わが家には自家用車がない。私は運転免許をもっていない。必然的に公共交通機関に頼らざるを得ない――というわけで、ぱふぅ家のホームページには、わが家が利用した様々な公共交通機関の写真を掲載している。全国津々浦々まで公共交通機関が伸びている日本だからこそ、安心して楽しい旅ができるというものだ。
そんななか、地域の人口減少や相次ぐ自然災害で、廃線になる鉄道路線が増えている。ビジネスとしては致し方のない決断であろうが、これから歳をとり、いよいよもって、公共交通機関がないと旅ができなくなる私にとっては、どんな姿形になってもいいので、全国比に広がる公共交通網を維持してほしいと願う。
その解決策の幾つかが、本書の第8章に提示されている。

私はIT技術者でもあるので、MaaS(国鉄時代の MARS (マルス)  に発音が似ており懐かしい響きだ)が事業会社を超えて連携し――インフラ周りはGoogleのような海外資本に占拠されてはいけない――スマホでもマイナンバーカードでも何でもいいので、窓口は券売機に並んでチケットを買うことなくスマートに旅行が続けられるといいと願う。毎度の家族旅行では大量の切符を持たされるのだが、歳をとると、たぶん、忘れたり紛失したりする。若い駅員さんに迷惑を掛けたくはないので、どうか早くチケットレスに移行してほしい。
そして、鉄道が大改革を遂げ、生きているうちに、ブルーバックスから4冊目の『鉄道の科学』が発刊されることを願ってやまない?






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最終更新日  2024.12.12 12:13:03
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