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カテゴリ:書籍
著者は、山梨大学大学院物質・生命工学専攻修士課程を修了し、メーカー勤務のエンジニアをしながら、2019年8月に「オーラリメイカー」が第7回ハヤカワSFコンテストで〈優秀賞〉を受賞し、作家デビューした春暮康一さん。本作は、2024年の第45回日本SF大賞の最終候補作となった。 遠未来の世界では、多種族が結びついた巨大な共同体が存在し、その礎を築いた伝説的人物「大始祖」の最期――ブラックホールへの飛び込み――が語り継がれている。しかし、その真偽は不明であり、合理精神を重んじる後世の知性体たちは、神話と歴史の境界に疑問を抱いている。彼らは過去の観測記録や理論的推測を積み重ね、大始祖の行動の意味を解き明かそうとする。 鮎沢望は、高校天文部の友人の千塚新、大学の研究者仲間の八代縁と、太陽系規模の電波望遠鏡による掃天観測計画を夢想してサークル活動を始める。それは、後に人類が銀河文明の繁栄に貢献する道へと繋がる第一歩だった。超長期的な観測装置「テレスコープ」計画は、1億年単位で未来へ情報を送り、宇宙規模の知的連鎖を成立させる壮大な試みである。 物語が進むにつれ、遠未来の伝説と遠過去の人類の選択が密接に結びついていくことが明らかになる。大始祖の行動は単なる奇矯な自己犠牲ではなく、時間を超えてコミュニティを成立させるための合理的計画の一部であった可能性が浮上する。ブラックホールへの突入もまた、情報伝達と観測の極限を追求した結果として再解釈される。 本書の主人公3人が、いつまでも学生気分が抜けないのはジュブナイル的であり、肉体を捨ててアップローディになるのはサイバーパンク的であり、人類と全く異なる進化を遂げた知的生命体に出会うシーンはスペースオペラのノリであり、ブラックホールをめぐる〈客人〉のテクノロジーはハードSFである。1冊で、さまざまなジャンルのSFを楽しめる作品である。 VLBI(超長基線電波干渉計)の存在を知ったのは、天文少年を卒業しようとしていたときに完成した野辺山宇宙電波観測所だった。本書の序盤に登場する32メートルの電波望遠鏡は、2001年にKDDIの衛星通信用アンテナを天文向けに転用した山口32メートル電波望遠鏡だろう。国内外の電波望遠鏡と共同で行うVLBI観測に参加しているからだ。 登場人物のセリフを中心に進んでいくという点でラノベ的な側面もあるのだが、「外挿ってあんまり当てにならない」「早まった一般化」「ハンロンの剃刀」など、技術屋ならニヤリとするセリフが並ぶ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2026.04.02 12:21:41
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