「商会設立、そして代表就任」
この世界には、ある一定の条件を満たすと「商会」を設立できるようになる。「商会」とは、世界の中で知り合った仲間、目的を同じくする仲間の集まりだ。他の世界では、ギルドと呼ばれていたり、クランと呼ばれていたり、騎士団と呼ばれていたりする。呼び名は違うがすべて同じようなものである。では、この世界において「商会」はどのようなことができるか。一つは、商会専用の会話できる部屋を持てることだ。大航海時代の世界においては、他の冒険者とのコミュニケーション手段は、沢山用意されている。近くの冒険者すべてに聞こえるように話す「Say」、艦隊のメンバーだけに話をする「Party」、特定の冒険者に対して話をする「Tell」、広い範囲の冒険者に対して話をする「Shout」、「ルーム」と言われる会話専用部屋が3つ、そして、商会員同士で会話ができる「Company」がある。商会が無い場合は、「ルーム」で代用できるのだが、これはいちいち「ルームリーダー」が一人ずつ招待して、加入させていかなければならない。そう、仲間がこの世界に来るたびに一人一人招待手続きをしなければならないのだ。これが数人ならそんな手間でもないだろう、しかし、私の友人は20人は越えるのだ。手作業でやるには、もう限界だ。そのため、私にとって「Company」といわれるコミュニケーション手段が使えるようになるのは、大きなメリットだ。「商会」設立で、もう一つできるのは、ある一定以上の商会員数と名声があれば、商館を購入できることだ。商館では、商会秘書に商会員の所持品・交易品を委託販売してもらえるそうだ。あまり所持品を持たない私にとっては、あまりメリットは無いが、私の仲間には、商人や冒険者も多い。彼らが手に入れた珍しいものや交易品などを売りさばく場所としてもぜひとも手に入れたいものだ。今日は、世界の創造主から知らされていた「商会設立」が可能になる日だ。私は、商会設立を最後の最後まで、迷っていたが、仲間のためにも、立ち上げることに決めた。もちろん、設立する場所はポルトガルの本拠地「リスボン」だ。昨日、冒険仲間の由起とともに、アレクサンドリアやカイロ方面に行っていたので、そこから、急いでリスボンに帰ることになった。なぜなら、リスボンで商会を設立しようと思うなら、リスボンに行かなければならないからだ。また、一つの都市に商会は100個しか作れないという制限もあるようだ。そのため、急いで設立しなければ、商会枠が埋まってしまう。それでは、あとあと厄介なことになるだろう。いつもなら喜んで戦っている海賊との戦闘も出来るだけ避け、一目散にリスボンに戻った私は、設立資金の100万ドゥカートを銀行からおろす。また、戦闘装備のジレから、正装度をあげるため、タブレットに着替える。もちろん武器は、木槍からフレーレに持ち帰るのも忘れない。リスボンの商館エリアは、港にから北に行って銀行を超えたところを左に曲がったところだ。その商館エリアのさらに北に、商会事務所がある。ここで、商会の設立や商会の加入、脱退など各種の事務手続きを行う。「こんにちは。私は准士官のランド・フォックス。商館を設立したいんですけど」私は、商会事務所の職員にそう伝えた。「ランド・フォックスさんですね。少々お待ちください。」商会事務所の職員は、笑顔で対応してくれる。私の正装度と名声が高いためだ。正装度と名声が低い場合は、いくらお金を持っていても相手にしてもらえないそうだ。「あと58個の空きがありますから、大丈夫ですよ。では、この登録用紙に希望の商会名をお書きください。」職員はそういうと、私に1枚の紙を渡した。商会名と簡単なコメント、そして私の署名を書くだけの簡単なものだった。「では、これでお願いします。」私は、そういうと記入した申請用紙と、設立資金の100万ドゥカートを職員に手渡した。「はい、ではこれで商会設立です。」やけにあっけない。私ランド・フォックスは、【アルカディア商会】を設立し、代表に就任した。【アルカディア商会】これが、私がこの世界で背負う看板だ。以前いた世界の名前をそのまま流用しただけと思われるかもしれないが、その通りだから文句は言えない。しかし、【アルカディア】の名前に流れる理念は、この世界にも通用する。 -------------------------------------------------------------- 「アルカディア商会社訓」 Ask Reason,Cause All Destiny Inside Arcadia. (真実を求めろ。全ての運命はArcadiaに在り。) 理想郷を追い求める、すなわち、時代の真実を追い求める そして追い求めるものは、理想郷、すなわちアルカディア そこにたどり着くのは運命の仕業 すべてがそこに収束し、そこに絶える 冒険者よ、アルカディアを求めよ、己が真の存在理由はそこに在り --------------------------------------------------------------私は、以前つかっていた「騎士団憲章」を少し書き直し、新たに「アルカディア商会」家訓として、掲げることにした。いまさら商会としての規約を細かく決める必要はないのだ。各々が自分のモラルに従い、仲間との冒険を楽しむ。それだけでいい。あとは、心のどこかに、「アルカディア商会家訓」をもってくれれば。あとは、仲間を集めるだけだ。商会に入会するためには、リスボンの商会事務所に来なければならない。場所は、商会エリアの上のほうだ。そこで、商会リストを選び、【アルカディア商会】を選び、私宛に入会依頼のメールを出せばいい。しばらくすると、私の元にメールが届き、私がリスボンの商会事務所に行って、入会承認をすると、正式な会員になれる。私が遠出してると、なかなか正会員になれないので、ここしばらくはリスボン近辺で依頼を受けることにしよう。最初の一人は、ボンちゃんこと、海賊のボンクレーが入会してくれた。仲間同士の集まりを作るときに一番心配なのは、「はいってくれるのだろうか」ということだ、ボンクレーが入会してくれたことで、その不安は拭い去れた。あとは、いつもの仲間がリスボンに戻ってくるたびに入会承認をする。あっという間に、総勢12名もの中堅商会になった。商会の最大人数は、20名だそうだ。あと6名、仲間を募集しなければ・・・