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田畑見聞記

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2019.09.11
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イチゴ農家さんは早出しモノの定植が始まった頃かと思いますが、今日からのお天気の週間予報はご覧の通り



 定植後で一番肝心なことは温度と水分ですが、ほぼ全国的に晴天続きで気温も札幌と仙台を除いて30℃以上の真夏日が予想されています。この調子ですと高夜温のために光合成で出来たグルコースが根に下りにくくなり、根の活着が懸念されるとともに水不足も要注意となります。対策として根の活着までの寒冷紗の使用や適切な水遣りが望まれますが、余りに頻繁な水遣りは下がっていく水よりも上からくる水を根先が追って、上根型の根になりやすいので注意が必要です。この時期稲刈りやダイズの消毒など繁忙期になりますが、イチゴの出来不出来を左右する根づくり期だけに心得た対応が大切になります。

 全国各地で異常な天気が続いていますが、そのせいか地床育苗でコオロギがイチゴ苗のクラウンを食害するという初耳の情報がありました。本来コオロギが棲む草むらの雑草も日照り続きや大雨に抗って懸命に生きていると推察されますが、適時水と肥料を人に与えてもらうイチゴ苗とでは「美味しさ」が違うのかも知れません。問題なのは草むらに戻らずに育苗場に居ついてしまい、食害域が広がる傾向にあることで、将来コオロギ駆除の対策が求められるかも。

 題記に話を戻します。人ではなくヒト、苺ではなくイチゴとカタカナでの表示は生物学的で、生物学的に分類するとヒトとイチゴは真核生物という同じドメイン(領界)になります。私らの子供の頃は人は万物の霊長と習い、ピラミッド型の生物層の頂上に置かれていましたが、今の科学による系統樹では



動物と植物は隣り合わせの小枝となっています。キノコやカビなどの菌類も同じドメインで、他のドメインとしてはバクテリア(細菌)とアーキア(古細菌)があり、どちらも原核生物です。バクテリアは私達の病原としても身近ですが、アーキアは想像もつかない環境で生息し、田畑で稀に発見されるのはメタン生成細菌や太陽熱消毒にも平気な高熱細菌くらいです。

  バクテリアとアーキアはどちらが先に生まれたかは決着がついていませんが、私達の遠い祖先に当ることは間違いなく、今の私達に有用なのも有害なのもおり、無関係に生きているのが多数と言われているのは田畑に生息する生き物とも共通するものがあります。ただ田畑で皆さんが困っておられる病害の80%近くは糸状菌と呼ばれるカビ菌で私達と同類ですが、病害性のバクテリアも含めて彼らも増殖しなければ悪さをすることは無いので、彼らの栄養となる窒素を控えることが対策の第一になるはずです。





上は動物の、下は植物の細胞の電子顕微鏡の写真で、素人眼にはよく解りませんが説明されている細胞内の核や小器官はほぼ同じ、植物には液胞(細胞の大半を占めることで動物細胞よりも数倍大きくなる)、葉緑体、細胞壁が備わっているのが違いで、植物の細胞の働きが我々動物と異なるのはこの三つによります。つまり動物は脂質、糖質、タンパク質という三大栄養素を植物が作ったものに頼っていますが、植物は自分の細胞内で水、炭酸ガス、ミネラルを材料に太陽光をエネルギー源としてそれらを生産できることに凄さがあり、更に我々が排出した炭酸ガスCO2を吸収し、私達動物に不可欠な酸素O2を供給します。

 ヒトとイチゴは真核生物というドメインのもと動物界と植物界に今から三十億年以上前に枝分かれしますが、未だに動物でもあり、植物でもあると言われているのが上の系統樹の中にあるミドリムシです。ユーグレナとも呼ばれるこの生物は細胞の特徴もエネルギーの作り方も動物植物両方の仕組みを持って、環境に応じて生きるためにどちらかを働かせています。

 つまるところあらゆる生物は子孫を残すために生きており、大半が命を無くすような逆境に出会っても生き残った一部が耐性を得て、子孫を繋ぐ力を向上させていくことは分子遺伝学の分野でも明らかになっています。病害虫と言えども彼らは子孫を残すために生きており、農業生産者さんに被害を与えたことは結果であり、目的では決してないはずです。地球上で40億年前に生を得て、片や単細胞の菌のまま、片や多細胞の動物や植物と進化した生物であっても共生している以上、お互いの立場を尊重することは重要ではないでしょうか。

 私はお訪ねする農家さんに「2~3%の病虫害は彼らの取り分」とお話しています。100%収穫するために農薬に頼ることは決して長続きするものではありませんし、コストや労力からみても得策とは思えません。数世代にわたって判断をすれば地力の喪失などなお更になるかも知れません。病害虫や病害菌と言われているモノたちも自然循環に一役買っていることも少しずつ明らかになり始めています。

  あと一つお話していることは「自分と同じようにイチゴと付き合いましょう」です。自分がイチゴになったとすれば、もっとも望ましい栽培のあり方が見えてくると思います。ヒトもイチゴも同じ真核生物、良い子孫を残したいという思いに違いは無いはずです。量との共存は確かに難しい問題ではありますが・・・


(図及び写真は青土社、講談社、培風館発行の図書から引用)






Last updated  2019.09.11 23:14:51

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