948329 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

田畑見聞記

田畑見聞記

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Calendar

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

パルアップ

パルアップ

Favorite Blog

まだ登録されていません

Comments

コメントに書き込みはありません。
2021.01.26
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
​​一年ほど前にタモリの司会によるNHKの「人体」というシリーズ番組で、京都大学の山中教授が「エピジェネティクス」という言葉を口にされていました。エピジェネティクスという言葉自体は80年近く前に提唱されてはいますが、注目を浴び始めたのは今世紀になって、つまりヒト(動物)とシロイヌナズナ(植物)のDNAの全容が明らかになり、以来コンピューターの発展の寄与もあって魚類、昆虫、バクテリアなどあらゆる生物のDNA解析から生物に共通の遺伝子が多く発見されました。そこから現在は生命の祖先探しや進化の裏付けが急ピッチで進んでいます。
 
 生命の進化には遺伝子の突然変異を伴うとされていますが、突然変異はDNAの変化を伴い、良いほうに転ぶとは限らず、むしろ統計的には悪いほうに変わることが多く、ただ「生き延びた」「絶滅した」という事実だけが捉えられます。エピジェネティクスはDNAの変化は無く、生き延びやすい方に変わり、子孫に遺伝することで一躍注目の的になりました。DNAはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4つの塩基が並ぶことでアミノ酸の生産を経て生命の主役たるタンパク質を作り出す設計図となります。ヒトのDNAが解明され30億のA.T.G.Cによる22,000個の遺伝子と公表されたとき、シロイヌナズナの26,000個、イネの32,000個の遺伝子よりも少なくてヒトの生命学的な優位性が揺らいだものでした。さらに22,000個のうち90%ほどは働いておらず、なぜ無駄な遺伝子を伴っているのかと科学者たちは疑問を募らせました。

 ヒトは60兆個の細胞で成り、一つ一つの細胞の平均的な大きさは100分の1ミリ、その細胞の核の中にしまわれているDNAの長さは1.8mと信じがたいアンバランスですが、DNAの構造を解かりやすく例えると、A,T,G,Cが作る小さな螺旋状のバネが集まって一回り大きなバネとなり、それがまた集まってもう一回り大きなバネを作っている状況で、バネが伸びているところが遺伝子として働いている部分。バネが詰まっている部分は働いていない90%に相当します。

 エピジェネティクスは環境の変化に応じて生き延び易いように遺伝子の働く部分(バネの伸びている部分)を変えて、子孫へ伝えていきます。植物の遺伝子の数が動物のそれよりも多いのは、動物と違い地に根を下ろして動けない植物は、エピジェネティクスで環境の変化に応じて生きていけるように適応した結果なのかも知れません。

 更にはバクテリアやウィルスなどのDNAまでも詳細に把握できるようになったことで、これまで不明のことが多かった微生物と植物の関係が少しずつ解かってきました。また近年の地球温暖化による極端な気候の変動に対応するにはエピジェネティクスが植物には最善なのかも知れません。九州では亜熱帯化が進み、イネの生育や品質に問題を生じ、高温対策米としていくつかの新しい品種がシェアを伸ばしています。カントリー納入米であれば、モミや苗を販売するJAさんにとっても生産者さんの足並みを揃える方が得策と思われますが、私の知るコメを直売なさっている農家さんは前年のモミで苗を育て従来種の栽培を続けられておられます。一時期のご苦労のあと、従来品種で問題なく生産が行われているのは温度抵抗性を高めるSi22Si25の効果か,エピジェネティクスの寄与なのかと考えています。​​

 エピジェネティクスの詳細はまだ不明なところがありますが、生物が環境に順応して生き延びるシステムとして備わったと考えると、その仕組みの活用は望まれるところです。但しエピジェネティクスが発現するには動植物とも環境を察知する感性が必要とされ、健康体であることが望まれるはずです。いち早くリスクを捕らえて、それに対応できる遺伝子を働くように子孫へも伝えていく生き延びる生命の姿のように感じられます。この先語られることの増える言葉と思われます。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2021.01.26 12:54:36



© Rakuten Group, Inc.