2017/09/25(月)23:27
スタンド・バイ・ミー
木工教室に通い始めて1年経った。
先生はパンダと同年代だが、まだどこか少年のような雰囲気が漂っている。
職人気質の感じの良い先生だ。
そういえばパンダも出会った頃はまだ少年のような青年だった。
いつの間に、こんなおじさんになったんだろう?
ま、あれだ、韓国で嫁姑の間でもまれているうちに
どんどこおじさんになってったんだろうな。
すまん、すまん
教室は市内から少し離れたとこにある。
周りは田畑や牧場というのんびりした環境だ。
バスで通うには不便なので、パンダが送り迎えしてくれている。
始めのうちは、私一人が習っていたのだけど、先生が熱心に
「どうせ習うなら二人で習ったほうが楽しいでしょ?
家具だって二人で作るほうが早いし。
お月謝一人分でいいから!」
と誘ってくれて、パンダも一緒に作業するようになった。
金曜クラスはパンダ夫婦と韓国人奥さんCさんとJさんの4人。
CさんとJさんは中学の時からの仲良しさんだそうだ。
みんな明るくて楽しい奥様方よ。
ほんとは他にも習ってる人がいたのだけど、なんせ先生が熱い。
色んな工具を使うし、気をゆるめると怪我することもあるので
ちょっとでも変なこと、基本にそれたことをやろうものなら
「ちょっと待て~~~!!!!!!」
「止めろ~~~!!!!!」
と、即、先生が大声で叫んで飛んでくる。
それがただでかいだけじゃないのよね、ちょっと怒気を含んでいる。
5%くらい。いや、もうちょっと?
小心者の私なんて、その声でドリル落として怪我しそうなんだけど・・・
Jさん曰く、
「初めての授業でそれだったから、辞めようと思ったんだけど
Cが
『あはは~気にすることないよ、元々だよ、怒ってないよ』
って言うから次の週も通ったんですよ。」
でも先生の大声にびっくりして辞めていった奥様もいらっしゃる。
私は大声で言われようが小声でささやかれようが、
どのみち外国語なので気にしない、気にしない。
それに先生は声がでかいだけで、
正直者で気のいい職人さんだ。
こういう人は韓国では本当に珍しい少数派だ。
多くの木工の工房で
材料費を多めに徴収したり
生徒さんたちに教えるよりも、
工房で製品を作って販売するのに忙しかったり
という先生が多い中、О先生はひたすら教えることだけに集中している。
材料費に至ってはおまけしてくれたり、タダでくれたりする。
何度も言うが、こういう人は韓国では本当に少ない。
私は基本的に来る者拒まず、去る者追わずだけれど
ああ、いい人だな~と思ったら自分からは離れないようにしている。
木工の先生やCさんやJさんとはずっと仲良く付き合っていきたいと思っている。
というわけで、
「パンダ夫婦が木工習い始めて1年経ちました記念BBQパーティー」
が開かれた。
といってもお招きしたわけではなく、場所はО先生のお宅。
市内からちょっと離れただけで、こんなに違うのか?ってくらい空気も美味しい。
お庭も手入れしすぎず、ぼーぼ―過ぎずいい感じだ。
わんこもいる。
ほどよく腹八分目になったところで、次はお寿司。
握るのは私だよ。
でもこの日は子供たちもいたので
「は~い、今から寿司だよ~一緒に作る人~~~~?!」
とО先生、Cさん、Jさんちの息子さんたち全員を強制参加させ
お寿司もたくさん食べて満腹。
ゆれる炎を見てると眠くなってくる。
こんな風に外で火を焚くのなんて何十年ぶりだろう。
「お父さん、アイスクリーム食べたい~」
とО先生の息子さんが言う。
私が寿司桶を包んできた大きな風呂敷をマントにしている息子君。
我が家なら「じゃ、お前が買っておいで」となる場面だけど
О先生が
「じゃ、みんなで買いに行こう~」
私は内心、え~買ってきてちょうだいよ~とマント君に訴えていたのだが
「みんなに歩いてもらいたい道があるから。」
という先生の言葉に心が動かされ、大人も子供も全員、夜の散歩に。
街灯もない1車線の農道。
ずらずらと歩く一行。
「ここ、肝だめしで通る道なんだ。」
先生、参加してるんですかっ?!
「これ全部、梨畑なのよ。」
と先生の奥様。
「あら~いいですね~春になったらお花見ですね~。」
「でもね、農薬も撒くからミツバチが全然いないのよ。
それがちょっとねぇ…」
そうなんですか・・・
私がО先生ご夫妻が好きなのは、
エコエコ生活だからなのよ。
ごめん、しつこいようだけど、韓国じゃ本当に珍しいのだよ。
近所のコンビニでも行くのかと思ったら、全然近くなくて、
コンビニでもなくて、最寄の高速道路のサービスエリアだった。
途中、トンネルやお墓など怖いスポットと通り抜けながら歩くこと30分。
何年か前に出来た下り方面のサービスエリアに到着。
コーヒー飲む人、アイス食べる人、トイレ行く人、たばこ吸う人・・・
それぞれ好き好きに休憩し、
また黙々と帰り道を歩く。
「帰りはこっちからね~、ちょっとだけ近いよ~」
と奥様の声。
真っ暗な中、見上げると星が見える。
私の住んでる町では星なんて見えないと思っていた。
ちゃんと見えるとこもあるんだ!
とウキウキしてたら、ひゅーん☆彡と星が流れていった。
韓国で初めて見る流れ星だった。
「今、流れ星だった!流れ星!!!」
とすぐ後ろでマント君も興奮していた。
「見た!見た!おばちゃんも見た!!!!!」
するとパンダも
「オレも見た。」
「・・・いや、あなた見てないから。」
「・・・」
パンダは見てないと思う。
なんで、見てもないのに、調子よく合わすんだろう。笑
「ちょっと、止まって~」
と、О先生が教室で作業を止める時よりもずっとのんびりした声で叫んだ。
みんなが足を止めた。
「右のほう見てみて~。なんかに見えない~??」
なんだろう、なんだろう・・・
暗くてわかりづらいが、木の影がなにかに見えてくる。
「ティラノサウルスだよ~!!!」
なるほどね~
「ちょっとアゴ出てるけどね~」
時々、携帯のライトに照らされて見え隠れする子供たちの姿を見ながら
スタンド・バイ・ミーみたいだな~
なんて思ったら、遠い昔の夏休みの最後の夜みたいな気分になって
もう夏休みなんて関係ない大人になって久しいのに
うわ~っと泣きたくなった。
たまった宿題も、失くしたラジオ体操カードもないのにね。