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虚弱(だった人の)日記

虚弱(だった人の)日記

盛岡病院化学物質過敏症外来便り07.12

国立病院機構盛岡病院化学物質過敏症外来便り 2007年12月号(Vol.5 No.4)からのコピペです。。。


第57回日本アレルギー学会秋季学術大会報告

 2007年11月1日~11月3日まで横浜市立大学大学院 環境免疫病態皮膚科学 池澤善郎教授を会長として横浜で第57回日本アレルギー学会秋季学術大会が開催されました。少し遅くなりましたが、大会の報告を致します。

以前にもご紹介してきたように、ここ数年、化学物質過敏症関連の一般演題のセッションやシンポジウム、講演が毎回設けられるようになって、この疾患に対する関心の高まりを実感しています。
今回は盛岡病院からは、『化学物質過敏症診断における客観的指標の検討(第2報)』を発表してきました。
当院で行っている診断の取り組みについては、盛岡病院HPの2007年6月号に掲載してますので、参照して下さい。

これらの検査を組み合わせてより正確な診断を可能にし、しかも特殊な検査機器や設備がなくても施行できて、検査を受けるみなさま方にできるだけ負担がかからない検査法を追及しようというものです。
専門外来を持っておられる施設の先生方を中心に会場からの質問が多数ありました。まだ開発段階ですので、みなさま方のご協力なしにはできない研究です。今後ともよろしくご協力のほどお願い致します。


 次に、シンポジウム『環境化学物質とアレルギー』の中から、トピックスをご紹介します。北里大学の坂部貢先生が講演された『シックハウス症候群と免疫応答』では、揮発性有機化合物によるシックハウス症候群と免疫応答に注目して、シックハウス症候群に共通して変動する遺伝子をマイクロアレイという解析方法を用いて、健常者では変動しないのに、シックハウス症候群の患者さんの半数以上で共通して変動する遺伝子をリストアップしたところ28遺伝子を見出すことができたというものです。


さらにこれらの検討を進め特異性の高い遺伝子が現在のところ10遺伝子が抽出されてきています。この中には酸化ストレス状態で働くと言われているグルタチオン抱合に関連する遺伝子も含まれていて、シックハウス症候群では酸化ストレス状態に曝された時の抗酸化能が低下している可能性が示唆されます。


まだ研究段階ですが、このような遺伝子レベルの解析からなぜシックハウス症候群/化学物質過敏症で微量の化学物質の曝露でも種々の症状が起こってくるのか、症状が起こらない人との違いはどこにあるのかなど、今まで不明だったメカニズムが解明されてくる可能性があり、今後の研究成果が期待されます。


 三重大学の加藤琢磨先生は環境化学物質がグルタチオン低下作用(酸化ストレス作用)を介して免疫反応を攪乱することによって、アレルギー炎症を引き起こすサイトカインの産生を増強させることより、アレルギー疾患を起こしやすい体質にしているのではないかと指摘しています。


 以前は化学物質過敏症という病気自体が存在するのかという議論がなされていた時期もありましたが、最近は今学会の報告のように、環境ホルモンや環境化学物質が化学物質過敏症や喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患を引き起こしたり、増悪させるメカニズムが徐々に解明されてきています。


環境破壊という人類が直面している問題にメスを入れる研究は、このような地道な努力により行われています。
今後さらに解明が進んでいくと思われますが、それらの成果を踏まえて、私たちが将来を見据えてどのように行動していったら良いかが問われているのだということをつくづく考えさせられます。




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