マグロ問題、そして汚染問題、本当の禍は。
マグロの規制問題が取りざたされる中、先日だが、友人の友人?から「日本からの回遊したマグロに(カルフォルニア沖)通常の10倍を超えるセシウムが検出」というアメリカWEBニュースがSNS上で拡散の様相だ。確かに、福島からの汚染は太平洋全体の規模で広がっているでしょうか。大きな問題ですが、メディアで大騒ぎし過ぎるのも如何なものかと思う。この拡散の元は、あるブログにある。そして、その元記事はアメリカのWEB ニュースで、それは現在、殆ど削除されているようです。と云うのは、このニュースの元は、マグロ捕獲に反対なグリーピース主導の意見と思われるのだが、かなり公平性、または信憑性に問題のあるもので、その辺りが良識的な考えから削除されたのだろう。。まず、マグロやカツオの回遊について考えて見ましょう。今回の話で、福島で汚染されたマグロがカルフォルニア沖で漁獲されるというのは、確率で行ったら物凄い低い話で(例えば、捕獲されたマグロが、遥々福島沖から回遊したという根拠)、この場合に福島沖で標識法流したモノであれば、その確証が出来るでしょうが、その個体が福島沖から回遊していったと云うのは、確率的に考えにくいのです(100%ではないですが)。まず、日本近海のカツオ、マグロの回遊ルートは下図を見て頂ければ判ると思います。ミクロネシア海域から、産卵のためも少し南下したとしてもインドネシアからパプアニューギニアあたりが主なのです。 (カツオの回遊域) (マグロの回遊域、同じミクロネシア南まで産卵移動が)但し、これは移動の可能性を否定するのではなく、あくまでもカルフォルニア沖は、中南米の太平洋側から北米太平洋側を回遊するマグロが殆どだと云う事です。ただ、一昨年あたりで、ミクロネシア海域で漁獲されたカツオの放射線量が、高いケースがあります。これは明らかに、福島沖を通過、その海域でエサを捕食していたと考えられます。ただ、安全と言われる放射線量を超え、数倍の量であっても、危険と言われるほどの線量ではない場合も多いので、水産庁としては公式な発表をしないのでしょう。海洋(太平洋)での放射線量を危惧するのであれば、過去には福島以外で多くの拡散した問題があります。それは、アメリカやイギリス主導で行われた核実験です。マーシャル諸島ビキニでの水爆実験を始め8回に及ぶ太平洋の水中核実験を、それも、作戦と云う軍事的な名前で、意図的に行われていたのです。1946年 クロスロード作戦2 46 kt ビキニ環礁1948年 サンドストーン作戦3 104 kt エニウェトク環礁1951年 グリーンハウス作戦4 398.5 kt エニウェトク環礁1952年 アイビー作戦2 10.9 Mt エニウェトク環礁1954年 キャッスル作戦6 48.2 Mt ビキニ環礁1956年 レッドウィング作戦17 20.82 Mt ビキニ環礁、エニウェトク環礁1958年 ハードタックI作戦35 35.6 Mt ビキニ環礁、エニウェトク環礁1962–63年 ドミニク作戦36 38.1 Mt キリスィマスィ島, ジョンストン島、中部太平洋[2]私は、この中で、日本漁船が被ばくしたビキニ環礁、キリスィマスィ(クリスマス)島へ取材に出向いている。今では、核実験が行われたという面影は全く感じられず、その自然の回復力には驚嘆する。しかし、そんな自然に比べ、人間の生活にはいまだにその影を落としている。ビキニでは、その後遺症に悩み、障害を持つ人を数人見た。クリスィマスィ島では、1997年に英オブザーバー紙ジャパンタイムスに「生涯に続くクリスマスプレゼント」と題し、こんな記事が出た。<1262年、イギリスが太平洋でおこなった水爆実験の長期的被害について、衝撃的な新しい証拠が、クリスマス島の援助職員によって暴露される。 イギリス人がやって来る以前のクリスマス島は熱帯の楽園であったが、現在は、発ガン性物質のゴミ捨て場となっている。クリスマス島を領土の一部とするキリバスのティトー・テブルロ大統領は、先月エジンバラで開かれたイギリス連邦首脳会議のさい、個人的にイギリスのロビン・クック外相に問題を提起し、この小国の首都タラワのイギリス大使館には陳情がおこなわれた。 1958年、イギリスはクリスマス島沖合いで核実験をおこない、1964年、何トンにものぼる装備をあとに残して去っていった。島民たちは、これが放射能を帯びていたのではないかと疑っている。オーストラリアの援助職員らは、キリバス政府のために報告を作成し、「過失犯」としてイギリスを告発している。かれらは、毒物および発ガン性の毒物が給水施設に浸透していることを発見した。報告を作成した水道技師のネール・カービィは次のように述べた。「イギリスはあたかも敵から撤退していったかのようだった。かれらにはこの窮状を解決する道義的責任がある。 クリスマス島の人口は3,000人だが、50歳を越える人はほとんどいない。平均余命は55歳である。医療記録は存在しないが、一人しかいない医師は、年のいった住民が、実験のあと「奇妙な病気」を訴えたと言っている。イギリスが補償を払ったことはない。 先月、ヨーロッパ人権裁判所において、イギリス政府を相手取り、実験期間中クリスマス島で役務についていた部隊から訴訟が起こされた。ほとんどが徴集兵からなるおよそ12,000人の軍人が実験を目撃し、そのおよそ60パーセントが放射線にかかわる疾病にかかった。10月末、スコットランドのダンディー大学の研究者たちが発表した研究は、「若年死の率が加速」していることを明らかにしている。兵士の多くは50歳代で死亡しており、その死因にはしばしば白血病や多発性骨髄腫が見受けられる>。上記の事に関してだが、私が言いたいのは、福島の事故はあくまでも偶発的な事故ではあるが、これらの核実験からの海洋汚染は、意図的に行われたものであり、その後に隠蔽まで行われていた事実である。確かに福島の原発事故は悲劇だが、それをあたかも薄い根拠を元にマグロ汚染を語るのは如何なものだろうか。しかも、過去にはこれだけの核実験で、海洋汚染を繰り返してきたのは欧米国家である。勿論、この記事が、直ぐに削除されたことで、メディアでの拡散はなかったが、しかしFace bookやTwitterなど、特に日本の原発再稼働反対を叫ぶ方たち、そんな意見を持つ人の間で拡散する。確かに、「子供たちの将来に禍を残さない」という銘文は判るが、その前に26万人を超える原発事故の避難者。帰宅したくても出来ないその心情を考えると、そんな風評被害の元になるような、根拠の薄い記事からの拡散は抑えるべきだろう。誰でも風評からの恐怖心は持つだろうか。しかし、そういったSNSからの情報発信は、心して掛からなければならない。マグロはオーストラリアで始まった資源管理機関「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」の年次会合で、クロマグロの未成魚の漁獲枠削減が決まる。その中で、多くの意見や考えを持つことを否定しないが、国々や団体の思惑から交錯する情報の中で、より知識を持ち、冷静に判断し発信していかなければならない。