おきらく主婦のたわごと

2008/11/10(月)09:52

往診

父の肺ガンが判明して半年が過ぎた。 何年も癌と暮らしていたんだなぁとしみじみ思う。 闘うわけでもなく・・・ 日々の生活を淡々と過ごし・・・ 自然の中で・・・ 腫瘍はかなり大きいらしく、もう痛みがあっても不思議ではないとのこと。 癌の痛みはないという。 77年、通院などしたことがない。 たばこを吸いながら咳をしていたっけか・・・ ずっと昔から。 何かしらあるとは思っていた。 頑なに病院には行かないと言っていた。 歳をとって体力が落ち、頑固さも少しなくなり、 帯状疱疹がひきがねになって入院生活。 そこから糖尿病、肺ガンと一気に病人のレッテルをはられた。 父の生活は一変してしまった。 癌に関しては手術もすることなく、観察のみでここまできた。 もう待合いで座って待てなくなってきている父。 往診を頼もうかと思う。 近くの小さな診療所に。 と言っても車で20分くらいのところ。 先日、内科の主治医との会話。   私「先生、そろそろ体力にも限界があるので往診をお願いしようかと思っています。」 主治医「 私は往診はできませんが・・・わかりました。そっちの方向に考えますか。」   私「 寒くなってますます体力がおちてきて・・・」 主治医「・・・この冬、こえられなかもしれませんね・・・」   私「私は夏もこえられないと思っていました・・・」 主治医「僕もですよ!」  え?! そうだったん? 結局、父は採血のあと、そのままベッドで1時間待たせてもらっていた。 わざわざ先生がそちらまで診察にきてくださった。 腕はさておいて、先生には感謝している。 肺ガンの手術を受けないと判断した私に、 「それでいいのか?」 そういう人が多かった。 今までの父の生き様を考えると手術という行為が不自然なような気がしてならなかった。 まして確実に成功するとは言えない。 私には年齢的にも体力的に無理だとしか思えなかった。 でも何もしない行為はありえないんだろうか・・・・?! 手を尽くさないのは冷たいのか?! そういう葛藤もあった。 でも内科のその先生は退院の際に言ってくれた。 「手術しないんですってね。僕もそれでいいと思います。」と・・・ その言葉で私の少し残っていたゆらぎがなくなった。 あれから父はベッドの上で季節を感じている。 雨音や風の音。暑さ、寒さ・・・ 夏が終わり、秋も終わろうとしている。 北陸の冬は厳しい。 元気な人だって冬は気が滅入る。 私に出来ることは私や子ども達が元気な姿をみせてあげることくらいだ。 父にはもうやり残したことはないはず・・・ そう言えば先日、父が母に言ったそうだ。 「お前、長い間、介抱してくれてありがとう・・」 母にはあまり感謝の言葉を言わないのでえっ?!と思ったらしい。 「今までのお礼に、明日、畑を耕してやるぞ。」と父。 いつもならそこで 「そんなこと、できるわけないやろ!」と母も答えそうなのに・・・ 「そりゃ~うれしいわ。ありがとう。」 そう答えたのだと・・・ 母にしてはめずらしい。 記憶力がない父なのに、その次の日に私が行くと言ったのだ。 「靴下をはこうかな・・・」 「なんで?」 「昨日、ばあさんと約束したんや。畑を耕すって・・・」 おぼえてるんだ・・・ そういうことは。 ちょっと泣ける。 ちょっと前のことも憶えてないのに・・・ そのあとで 「婆さんと結婚した・・・」 「そうやね。ずーっと昔やね。何年たったやろ?!」 「・・・・」 「52年かな?」と私。 昔のことはおぼえているものだよね?! 「結婚したとき、初めて婆ちゃんを見てどう思った?」 父と母の時代は顔も知らずに嫁いだというのはめずらしくないという。 今まで父には聞いたこともなかったが 意外な答えがかえってくるのか?! 期待してしまった。 「・・・わすれた。」 そうか・・・ そんなもんか・・・ 母は意外に父が格好良かったと思っていたらしく ケアマネージャーさんなんかに自慢げに写真をみせているのに・・・・ ふふ・・・ なんだか父らしい。 でも今となっては婆さんの居所を気にしている。 何十年経ってなくてはならない存在となったか・・・ 毎日、ケンカをしない日がなかった。 子どもとしてはうんざりだったが・・・ 私が思いっきりネガティブ志向になったのはそのせいだと思う。 今になってケンカできたときが良かったのだと母は気づいたらしい。 エネルギーがないとケンカもできない。 母にそれがわかっただけでもいいのかな・・・ 父がいるときには父の存在のありがたさがわかっていない。 母はそういう人。 これから嫌でもわかるだろう。 さて・・・ いろいろ手続きしなくちゃ。 新居もようやく落ち着いてきた。 あとはローン返済のみ。 33年。 ながい・・・・ その頃、私は今の母の歳となる。 生きていればの話しだが・・・ あっという間かもね。 考えたくない~

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