カテゴリ:フュージョン、AOR、ワールドMusic
マンハッタン・トランスファー、Fried Prideなど、すっかり秋めいた今の季節にぴったりの、この秋までに発売されたジャズCDをご紹介します。
ある方には、1年中いつでもジャズを聴いているので、「秋にはジャズ」というステレオタイプの言葉はいけません、と、おしかりをうけているんですが、 でもなぜか、秋が深まるほど、ジャズを聴きたくなるのは、なぜでしょうか。 今日ご紹介するジャズCDは6枚 最近、ぼくがよく聴いているCDです。基本的に、自分の耳で聴いて、「いい!」と思ったものしかご紹介しませんので、参考にしてみてください。 1. オスカー・ピーターソン「A Night In Viena」 2.マンハッタン・ジャズ・クインテッド「A列車で行こう」 3.マンハッタン・トランスファー「Vibrate」 4.フライド・プライド「That’s My Way」 5.Peter Nordahl Trio 「The Night We called It A Day」 6.The Silent Jazz Trio 「The Silent Jazz Trio」 1. オスカー・ピーターソン「A Night In Viena」 これは、ぼくが10月5日の日記「オスカー・ピーターソンと上原ひとみ」で、 来日コンサートの様子を詳しく書いたように(トラックバック参照) 79歳のオスカー・ピーターソンのカルテットのウィーン2003年21日の でのライブ盤。10月の来日コンサートで演奏した曲とも、だいぶ重なっていて、とてもいい演奏です。 来日コンサートにいけなかった方も、このCDを聴いて雰囲気を味わって欲しいと思います。 イントロに続く1曲目から、美しいメロディが奏でられ、オスカーの可憐なタッチのピアノが聞こえてきます。 ぼくが好きなスウェーデンのギタリスト、ウルフ・ヴァケニウス の透明感があり小気味のいいギターも入ってきて、とっても気持ちがいいです。 全9曲のうち(イントロをいれて10曲)のうち7曲が、オスカーの書いた曲で、どれも美しく可憐です。ウルフ・ヴァケニウスのギターが大活躍する曲や、 長年オスカーの相棒をつとめるニールス・ペデルセンのベース・ソロの聴きどころなど、魅力いっぱいの演奏です。 オリジナル以外の曲は、 デューク・エリントンの「サテンドール」。来日ライブでは、アンコールで演奏していたと思いますが、ウィーンでも、この曲が始まると、わーっという歓声があがります。 もう1曲は、「Sweet Georgia Brown」 オスカーのピアノの単音ソロと、ウルフ・ヴァケニウスのシングル・トーンの早弾きソロが対決というか、おっかけっこをする曲。ウルフ・ヴァケニウスは本当に凄いギタリストだと思います。 これも来日ライブで演奏していました。 来日コンサートの感動をもう一度、というひとも、来日コンサートに残念ながらいかなかったひとも、ぜひこのCDで楽しんでください。 2. マンハッタン・ジャズ・クインテッド「A列車で行こう」 マンハッタン・ジャズ・クインテッドは、確かもともと、日本のレコード会社の企画で、日本のプロデューサーとデビッド・マシューズが立ち上げたクインテットだった。 その頃、MJQと言えば、モダン・ジャズ・カルテット のことで、 ミルト・ジャクソン(vib)らのいた有名なカルテットのことだった。 一方、マンハッタン・ジャズ・クインテッドは、当時大人気のフュージョン・シーンのミュージシャンが、ジャズをやるということで、スティーブ・ガッドがドラムスをたたくなど、それまでのジャズとは違って、正統派を称するジャズ・ファンからは、 「スウィングしないジャズ」とまでいわれた。 その後、スティーブ・ガッドの朋友、エディ・ゴメス(b)、 もとウェザー・リポートのピーター・アースキン(ds)、 チック・コリアのエレクトリック・バンドに参加する デイヴ・ウィックル(ds)、 ジョン・パティトゥッチ(b) などのメンバーが出入りして、 たしかに新感覚のジャズではあるが、従来の意味で言えば「スィングしない」かもしれないジャズをやっていたと思う(それはそれで新鮮だったのだが)。 ところが、誰も予測しなかったと思うほど長続きし、今や結成20周年をむかえた。 当初からのルー・ソロフ(トランペット)、 ベースによくスウィングするチャーネット・モフェット というメンバーで定着しいつのまにか、その音を聴けば、今、もっとも勢いのある「スィングする」クインテッットになったと思う。 今や、MJQの名前は、モダン・ジャズ・カルテットではなく、マンハッタン・ジャズ・クインテッド 演奏曲目も、 ソニー・クラークの「Blue Minor」 デューク・エリントンで有名な「A列車で行こう」 ビートルズの「ア・ハードデイズ・ナイト」 ルイ・アームストロング(サッチモ)で有名な「What A Wonderful World」 ガーシュインの「Summertime」 そのほか、アールクルー(g)の曲や「ベサメ・ムーチョ」など たいへん、わかりやすく親しみやすい曲が多い。 20周年記念として、リスナーに親しみやすい曲を、すばらしい勢いとスィング感で演奏してくれている。 ジャズをずっと聴いてきた人も、ジャズをこれから聴きたいなあ、というひとにも、 ジャズのもっている楽しさや勢いを感じさせてくれて、とってもいいCDだと思う。 3. マンハッタン・トランスファー「Vibrate」 マンハッタン・トランスファーは、時代の息吹を感じ取るのにたけた男女2名ずつのボーカル・ユニットで、AORが盛上がっていた頃、 「エクステンションズ」というアルバムを、AORの金字塔をうちたてた「Airplay」に参加していたジェイ・グレイドン にプロデュースをしてもらい、大ヒット。 特に、「トワイライト・ゾーン~トワイライト・トーン」という曲の間奏での、 ジェイ・グレイドンの鋭角的なギター・ソロは、ロック・ファンには超有名である。(当然、私も大好き) このように、当初からマンハッタン・トランスファーは、ボーカル・グループでありながら、コーラスを綺麗に聴かせる、ということだけではなく、全体のサウンド・クリエーションに非常にこだわっている質の高いグループである。 「Vibrate」でも、 1曲目にブレンダ・ラッセルの「Walkin’ in N.Y.」をとりあげたり(ベースは、ウィル・リー)、 タイトル曲「Vibrate」では、ヴァイオリンやバンドネオンが活躍して、とても優しい気持ちにしてくれるなど、 たんなるボーカル・グループを超えた音楽性を志向している。 特に、ぼくがこのCDで、ビックリして、「やられた~」と思ったのは、 4曲目の「The New Juju Man (Tutu)」 これは、1986年、晩年の マイルス・デイビス (tp)が、マーカス・ミラー (b)とともに作り上げた素晴しいアルバム「Tutu」の代表曲を取り上げたもの。 キーボードのブレイク・サウンドの後の、マイルスの印象的なトランペットの音を、女性ボーカルでやっている。 この発想に完全にノックアウト。ウイル・リーがフレットレス・ベースを弾いている。 マンハッタン・トランスファーのこのCDは、フュージョンや、マイルスの晩年のサウンドが好きな人には、ぜひ聴いてもらいたい。 4.フライド・プライド「That’s My Way」 日本人の女性ボーカリストのShiho 日本人男性ギタリストの横田明紀男 のふたりによるユニット。 今回、紹介するCDの中で、ある意味、一番とんがっているかもしれません。 そのふたりが今回はじめて、NYおよびLAで、腕利きのミュージシャンとの録音曲をまじえたCDを発表。 4つ折りにされたジャケットを開くと、NYのどこかのアパートメントの屋上にいるふたりが写っている。 NYでの録音曲は、2曲目の「Ribbon in the Sky」など3曲。 スティービー・ワンダーの曲。 ぼくの大好きなマイク・マイニエリが美しくビブラフォンを叩いている。 LAでの録音は、10曲目「Blackout」 NYのブルックリン出身のマーカス・ミラー(b)が、なぜかLAで録音。 その他の曲は、東京録音。 サックスやハーモニカの音を加え、 NYやLAのミュージシャンとの共演で、フライド・プライドの演奏スタイルが変わるかと思えば、ふたりのユニットの音楽の個性はきちっと守っている。 自分達のスタイルの基本は変えないところが素晴しい。 横田がアコースティック・ギターを、リズミックに、時にパーカッシブに、時にハーモニクスで高音を奏でて、Shihoのボーカルを支えるスタイルは、そのままなのだ。 女性ボーカルとスーパーギタリストの組み合わせは、タック&パティに似ていなくもないが、もう少し今っぽい気もする。 とにかく、カッコいいのだ。 Shihoの歌は、全部、英語の歌詞だが違和感はない。とってもうまいボーカルだと思う。 最後の曲「Imagine」が、じんわりと心に迫る。 5. Peter Nordahl Trio 「The Night We called It A Day」 前に、今、ジャズ界はちょっとした、ヨーロピアン・ジャズ・ブームだと書いたが、このCDもそのひとつ。ノルウェイのペーター・ノダールというピアニストのトリオの演奏。 彼の繊細なピアノ・タッチが、静かに夜をジャズと過ごしたい時に、最適なサウンド。 曲も、「The Days of Wine and Roses(酒とバラの日々)」 や、「Moon River」のようなスタンダード曲と、 チャーリー・ミンガスの曲が交互に配されていて、ジャズにちょっとうるさいひとも、ジャズ初心者にも心地よく響くサウンド。 ジャズに興味はあるが、何から聴いたらいいか、わからない、というひとや、 ジャズのうるさい演奏はちょっと苦手、というひとにもぴったりの、 静かに落ち着いて、夜を過ごしたり、お酒を楽しんだり、本を読みながら聴いたりするのに最適な1枚。 とっても、繊細で美しく、心落ち着くと思う。 6. The Silent Jazz Trio 「The Silent Jazz Trio」 昔、JTのタバコのCFで、アコースティック・ギターを弾いていて有名になった天野清継は、はじめて結成したジャズ・トリオ。 ちょっと、ジャズをずっとやってきた人のギター・トリオとちょっとしたニュアンスが違う。そこが新鮮。 とても繊細で、透明感があって聴きやすい。 結果的に、5のPeter Nordahl Trio 「The Night We called It A Day」 とおなじような雰囲気もするが、ギター・トリオで、やはり天野清継のギター・プレイが心地よく、ピアノとはまたちょっと違った趣。 取り上げた曲も、コールポーターの「You’d be so nice to come home to」や「Night and Day」や、 「ステラ・バイ・ステラ」 「ミスティ」 などの、ジャズの超スタンダード曲や、 「セサミ・ストリートのテーマ」曲や「パフ」などのpopsの有名曲、 ジョニー・ミッチェルの「Both Sides, Now」まで。 「Both Sides, Now」は、初期のパット・メセニー のようなギターの弾き方で気持ちがとってもいい。 天野清継のオリジナル曲「coo blues」では、彼のギターの早弾きも楽しめる。 このCDも、ジャズをこれからいろいろ聴きたいなというひとにも、フュージョン・ファンにも楽しんでもらえると思う。 月並みな言い方だが、秋の夜長にジャズを楽しみたい方、気になるCDがあったら、チェックしてみてくださいね☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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